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本当に好きな食べ物

好きな食べ物はなんですか?という問いに対する正しい答えは難しいです。

いや、別に、カレーは好きなので、「カレー」と答えても間違いではないし、ラーメンも好きなので、「ラーメン」と答えても間違いではありません。

でも、すべての食物の中で特別にカレーやラーメンに思い入れがあるのかというと、そういうわけでもないし、思い入れなら、15年くらい前に食べた名古屋の名店のひつまぶしに対してのほうが強い。

普段の食べる回数の多さはダントツで白米で、たぶん半生で消費した量も最も多いはずなので、本当に好きな食べ物は、カレーでもラーメンでもなく、白米なのではないかという気もします。

これだけ食べているのに、未だに飽きていないこと。基本的にどんな食べ物にも合うので、どんな食事のときも、食卓になんとなく置けること。そのまま食べても、ふりかけや魚の切り身や豚肉をかけても、お茶をまぶしても美味しいこと。メリットしかない。

カレーやラーメンは、禁止されても余裕で我慢できますが、白米を禁止されたら、正直かなりきつい。もう牛丼やチャーハンが食べられなくなるということだし、味噌汁のお供も、お好み焼きのお供もなくなる。

余談ですが、お好み焼きとごはんをセットで食べることはありますが、たこ焼きとごはんを同時に食べる人は存在しません。

いたらそれはエセ関西人です。本物の関西人は、たこ焼きはおやつと認識しているので。

そういうわけで白米はすごいのですが、「好きな食べ物は?」「うーん、白米かな」という会話は、内容は成立していますが、どこか違和感があります。

英語の教科書では、ケンくんがペンを手に持って「This is a pen.」と言いますが、現実にはそんな人はいません。

それがペンであることは、あんさんに言われんでも見たらわかるがな、という、いちいち言う必要のない事柄だからです。

日本人なら白米を好む、ということは共通の認識なのではないか……という感覚があるので、「白米が好きです」とわざわざ言うのはおかしなことではないか、と思ってしまいます。

まあ、知り合いにひとり、白米が嫌いで、うまい棒を粉々に砕いたものをふりかけにしないと食べられないという人がいるので、一概に言うべきではないのですが……。

その知り合いはお菓子が大好きなのですが、特にじゃがりこが好きで、1本ずつちまちまと食べるのはじゃがりこに対して失礼であるという、独自のこだわりを持っているらしく、5〜6本を一気にまとめて口に放り込んでバリバリ食すのが快楽なのだそうです。

個人的には、あんまり真似しない方がいい食べ方だとは思いますが……。少なくとも、Lサイズのじゃがりこではやめておきましょうね。芋けんぴもやめておいた方がいい。ポテロングでは絶対にしてはいけない。

しかし、好きな食べ物に対してそのような矜持があるというのは、素晴らしいことだと思います。自分はいつも、白米に対して中途半端なアティチュードで挑んでいたのだと気付かされる。

じゃがりこを一気にバリボリ行くのとは反対に、白米をひと粒ひと粒……というのを一瞬かんがえましたが、あまりに果てしなさそう。

そんなことをしていたら白米のことを嫌いになりそうなので、やめておきます。

長く良い関係を保つには、適度な距離を置くことも大切なのです。

なので、本当は白米がいちばん好きかもしれませんが、好きな食べ物は?と訊かれたら、カレーかラーメンと答えるでしょう。カレーにもラーメンにも、そこまで思い入れはないけど。


サウナはたのしい。