見出し画像

『みなみけ』は親戚

2004年からヤングマガジンで連載されている漫画『みなみけ』が、20周年を迎えたそうです。

南家に住むハルカ、カナ、チアキの3姉妹が、姉妹ゲンカをしたり、それぞれの友人たちと遊びに行ったり、屁理屈を言い合ったりする漫画です。

自分はこの漫画の連載が始まった当初から読んでいたのですが、走り屋やヤンキーや反社がひしめくヤンマガ誌上に於いて、小中高校生の女子たちが日常を淡々と送るこの漫画はかなり異彩を放っていました。

というか、今でもかなり異端です。おっさんの休日を描いた『1日外出録ハンチョウ』と、酒クズヤニカス獣人による下ネタだらけの『ヤニねこ』と同じ雑誌に載っているのが信じられん。

なおかつ、えなこさんのエッチなコスプレ姿が巻頭グラビアを飾るヤンマガでありながら、『みなみけ』にはお色気シーンはほとんどありません。

というか、そういう場面はあんまりつくってほしくないと思わせる何かがある。その何かがなんなのかわかりませんが、かつて同人誌即売会で彼女らのそういう類いのイラストを見た時、なんだか見てはいけないものを見たような気分になった。

だいたいそういうのは、当時ジャンプで連載されていた『To LOVEる』が補完してくれていたので間に合っていたのです。というか『To LOVEる』に関してはそういう目的でしか読んでいなかったため、物語の内容をほとんど覚えていない。

激エロ宇宙人たちが飛び交うあちらと違って、こちらの南姉妹はあくまで純粋である。いちおう次女のカナに片想いしている藤岡という男子はいるが、永遠に友達以上恋人未満から発展しない。    

昔はこの、カナと藤岡のやりとりを読むのが好きだったのですが、最近はどちらかというと、三女のチアキの話のほうが楽しく読めるようになってきました。

何が楽しいって、チアキもトウマという仲良しの男子がいるのですが、まだ小学生で、姉たちに過激な恋愛ドラマの視聴を制限されているせいでその手の知識に疎く、本当に友達から全く動いていないのがなんかこう、愛おしいというか。

こいつらよくケンカするのですが、その理由はいつも実にしょうもなく、大抵はすぐに仲直りしていて、実の姉妹たちよりも関係性が兄弟っぽいのが微笑ましい……。なんだこの感覚。昔はなかった。というか、小学生キャラクターがメインのチアキ回は、むしろ飛ばして読んでいたくらいなのだが。

これは……。自分には絶対に存在しないと思っていた「父性」なのではないか。

2018年に初めて姪っ子に会った時から薄々と感づいてはいたが、あくまでそれは血縁関係のある相手だからということでその感覚を処理していた。

実際に、他人のお子さんのエピソードを聞いても、全くなんとも思わず、申し訳ないながら左耳から右耳へと流している。街中でベビーカーに乗る赤子を見て、きゃあかわゆい、となることもない。

そもそも結婚願望も家庭を持ちたいという感情もなく、自分のDNAが混在した人間などはもはや生きる兵器なので世に放たれてはいけない、とまで真面目に考えている(もし将来的に考えが変わって我が子が生まれてうっかりこれを読んだらどうしよう……)。

しかしながら、別に血縁関係もない、それどころか架空上の存在であるチアキやトウマが愛おしい。我ながら、書いていてなかなかにきもちわるい。とはいえ、断続的ではあるものの、20年間も見てきた子供たちなので、知らぬ間に謎の愛着ができてしまっていたようで。

実のところ、私はかなり飽きっぽいタイプです。noteにはなぜかいつの間にか10年もいますが、最初の頃から現在に至るまで続けているものはこのテキストのようなエッセイのようなテキストだけで、かつてはいちおうちょっとだけやっていた音声録音とか大喜利みたいなやつとかはいつの間にかやらなくなりました。今はコミカルエッセイ野郎みたいになっているが、昔は自分でも何がしたいのかよくわかんないユーザーであった。何をしてもすぐに飽きてしまうので、結果的に最もシンプルなテキスト更新だけが残ったというか。

それは能動的なことだけではなく受動的なことにしても顕著で、1期の頃にはドハマりしていた『東京リベンジャーズ』も、うっかり○○が○ぬというネタバレを食らってからなんか萎えて2期を視ていないし、昔は本麒麟が生涯の相棒だったのに、今では角ハイボールが生涯の相棒である。

思えば、ドラえもん以外で自分が20年以上も追いかけ続けた作品が他にあっただろうか。しかも、ドラえもんに関しては、自分から姿を探さなくても必ずどこかにいる。向かいのホーム、路地裏の窓、旅先の店、新聞の隅、本当に至るところにいるので、山崎まさよし氏もOne more time,One more chanceなどと嘆かなくて済む。

ただし、3姉妹には、ヤンマガwebを開かないと会えない。テレビ画面で会えた時代もあったが、それももうだいぶ前である。わざわざ会いに行っている。もうこれは親戚なのかもしれない。

なんか全体的にきもちわるいですが、つまり自分は『みなみけ』が大好きです。20周年おめでとうございます。本当は保坂先輩とマキちゃんに対するきもちわるい感情も書きたかったのだが……。

この記事が参加している募集

サウナはたのしい。