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東急本店閉店でついに渋谷から大型書店がなくなってしまった


こんにちは、パブリックグッド代表の菅原です。

渋谷の東急本店が23年1月31日をもって閉店しました。百貨店の苦境や渋谷再開発の象徴的な報道が多く見受けられましたが、ここで、取り上げるのは、「ついに渋谷から大型書店がなくなってしまった」ということです。

かつて渋谷には、大盛堂書店、東急文化会館(現ヒカリエ)に三省堂書店、渋谷東急プラザ(渋谷FUKURAS)に紀伊国屋書店、旭屋書店(みずほ銀行の地下。現ヴィレヴァン)、ブックファースト渋谷店(いまのH&Mあたりだったかな)など、蔵書数数十万冊以上の大型書店がたくさんありました。

しかし、05年に大盛堂書店が規模を大幅に縮小、同じ05年に旭屋書店が閉店、07年にブックファースト渋谷店が閉店(ブックファーストは07年に旭屋書店跡地に渋谷文化村店と移転するも17年に閉店)、12年にできたヒカリエに本屋はなく三省堂は撤退、紀伊国屋は西武に移ったものの大幅なフロア縮小を余儀なくされています。

東急本店の7階には、蔵書数100万冊を超える、渋谷エリアで唯一となってしまった大型書店丸善&ジュンク堂書店が入っていましたが、今回の閉店で悲しいことに渋谷には大型書店がなくなってしまいました。

正直、本屋を「本を買う場所」として捉えると、ECが充実した現代ではさして困りません。他方で、アイデアの宝庫、もっと厳密に言うと、組み合わせの宝庫という点でECは本屋に絶対に敵わないのです。

今から80年以上に著された「アイデアの作り方」という薄い本で著者のJ.W.ヤングは、「アイデアとは既存のものと既存のものの組み合わせに他ならない」と断言しています。この何と何を組み合わせるかの妙技が、創造性や独創性につながると指摘しています。

例えば、缶コーヒーの企画を考えているとき、「喫茶店」「リラックス」「タバコ」などと組み合わせても、ありきたりのプランしか出てきません。「ネコ」「端材」「電柱」といった、全然違ったところからもってきたものと缶コーヒーを組み合わせることに独創性が生まれるのです。

一方で、人間の脳みそは似たようなものをストックしておくことは得意ですが、「缶コーヒー」と聞いて、「端材」を組み合わせることはなかなかできません。ネットで関連書籍を検索しても「喫茶店」「リラックス」などはもしかしたら出てくるかもしれませんが、「電柱」のレコメンドは出てこないでしょう。

本屋はこのように、自分が抱えているテーマと、自分が思いもよらなかった、もうひとつの組み合わせに出会う最高の場所なのです。そのためには、売れ筋だけを置いている蔵書数数万冊程度の小型店では全然足りないのです。

わたしは企画やプランニングが行き詰まると、頻繁に東急本店の丸善&ジュンク堂に足を運んでいました。ここに来れば何とかなるという漠然とした救済感と、大量の本に囲まれた空間というある種の多幸感は、本を買う場所という以上の価値がありました。一体これからどうしたら良いのか。

東急本店跡地には27年に複合施設が開業するそうです。ぜひとも丸善&ジュンク堂の再出店をお願いしたい。是が非でも。何としても。東急様、どうぞよろしく。


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