研究員挨拶:甲斐 万里子(音楽教育研究室)
簡単な履歴
このたび、ピティナ音楽研究所の研究員に就任いたしました甲斐万里子(かい まりこ)です。
もともと音楽教育への関心が高く,音楽の先生になろうと地元近くの奈良教育大学に進学しました。授業を受けるうちに研究者になりたい気持ちの方が強まってしまい,思いきって1年で退学し,東京藝術大学音楽学部楽理科に進学し直しました。教育大学での授業を受ける中で抱いた,「音楽そのものの勉強がもっとしたい」「学校に限らず,様々な音楽教育のベースにある価値観や枠組みそのものに自分の関心はあるかもしれない…」などといった関心や疑問にじっくり向き合って学べそうな場所が藝大だと考えての決断でした。
芸大に入ってからは,多方面から音楽について学ばせていただき,音楽表現のオリジナリティにだんだんと関心が焦点化されていき,ピアノを対象に絞って,継続して研究させていただきました。
これまでの主な学歴と職歴,研究テーマをまとめると,次のようになります。楽理科卒業後,同大学院音楽研究科音楽文化学専攻(音楽教育)修士課程を経て,2017年3月に音楽専攻(音楽文化学領域)博士課程を修了しました(博士(音楽学))。2017年4月からは上野学園大学音楽学部グローバル教養コース(音楽教育)で,2018年9月からは和洋女子大学人文学部こども発達学科で音楽教育を専門に教員養成に携わっています。
専門はレッスン研究,博士論文はピアニストの熟達化をテーマにまとめました。最近では,子どもから大人,趣味の方からプロフェッショナルまで,ご縁もあって対象がずいぶん広がりました。一人ひとりが、どのようにして独自の音楽表現を生みだせるようになるのかを、周囲の人やモノ、環境との関わりから明らかにしようと研究を進めています。
ピティナ音楽研究所で予定している取り組み
最近は,音楽家を対象に,熟達化に必須とされる「よく考えられた練習(deliberate practice )」が,いかにして実現,促進するのかをレッスンでのやりとりを切り口に研究しています。ピティナ音楽研究所では,ピアニストに対象を絞って,表現を生み出す思考の過程や練習内容,指導者の役割等とそれらの変化の分析を通して,ピアニストが適切な練習方法をどのように編み出していくのかをモデル化したいと思っています。
ピアノ指導者・学習者へのメッセージ
プロのピアニストへのインタビューを続けていると、課題に思うことや、演奏家として成長できたと感じた瞬間、その際の学習内容などについて、それらは人それぞれのように思えて、年代や、いわゆる系譜のようなコミュニティなどに特徴的な傾向と見えることがあります。
なかなかヨソの事情が見えにくく、不安に思われる姿に触れて、レッスンや研鑽過程の実態にさまざまな切り口から迫り、個人差や共通する部分などを概観し、示してみたいと考えました。ピアニストの皆様それぞれが、ご自身の立ち位置の確認や、より良いと思えるレッスンや練習、表現を生み出すための資料になれば光栄に思います。
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