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100年前からバエたかった女達

写真は下手したら子や孫の代まで残る。

だからいつも以上に、メイクに気合を入れたい。髪のセットもしっかりして、カメラを向けられたら最高のキメ顔で。自分が綺麗に見える立ち位置で、ポーズで、【盛りたい。】

なんて女性も多いのではないでしょうか?

私もその1人です。

親しい相手だと、写真撮ってもらったあとに撮れ高を見せてもらいます。そして、あ。この表情案外いい…?とかそんな研究に勤しむ日々です。

正直、メッッチャ羨ましい。

存在自体が映え!!みたいな

自分の魅せ方を知っている美女!!

なんて言ってると

「最近の若い女はすぐにバエバエバエバエ!人目を気にしすぎだ!自然体が一番だろう。大体昔はピースサインくらいで、【盛る】だの【バエ】だのの考えは…」


なんていう方もいらっしゃるかもしれません。

もしいらっしゃいましたら…

ちょっと待った。

どうみてもカメラ意識しまくりの、こちらの美女2人の写真をご覧ください。


撮影されたのは、大正9年。

明治〜昭和の挿絵・美人画好きの私はこの写真に3つの【バエ】ポイントを発見しました。

①トレンド感ばっちりのヘアスタイル

「二百三高地髷」というこの2人のヘアスタイル。

従来の日本髪文化に、洋髪の文化が加わった日本独自のヘアスタイル。まさに「和洋折衷の時代、大正」の文化を象徴するかのようです。

写真からわかる通り、モリッモリに前髪が突出しています。 おそらくこの形が名前の由来の一つかと思われます。

歴史好きの方であればピンとくるであろう、「二◯三高地」。日露戦争の激戦地だった場所ですね。一応勝利をおさめた地…ということになるので、ゲン担ぎ的なネーミングですかね。正露丸みたいなね。

早起きして、トレンドを意識しながら丁寧に髪を結い、ウキウキのお出かけ。

今みたいに、毎日のように写真を撮る・撮られるわけではなかった時代。この一日・一枚にかける気合は計り知れなかったでしょうね。

②アンニュイ顔で【盛り】

 今の時代を生きる私たちは、なんで微笑まないの?少し笑ったほうが【盛れる】のに。なんて思ってしまいます。

しかし当時は、「美人」の概念も違いました。

みなさんは大正から現代にまで根強いファンを持つ画家、竹久夢二さんをご存知でしょうか?

彼の、美しい女性に対する異様なまでの愛と執着とこだわりは、彼の筆を通して絶世の美女を世に生み出しました。

テレビのない時代、当時の女性たちが憧れたのは夢二の絵の中の女性でした。


石原さとみになりたい!明日花キララの顔に憧れる〜!橋本環奈ちゃんのメイク真似する!みたいな感覚ですね。 

いや、彼がデザインした着物が実際に店頭で販売されていて、当時の若い女性たちがこぞって買った…と考えるとコスプレの感覚にも近いような気もします。


そして

夢二式美人

という言葉がうまれました。 

白い肌に線の細い瓜実顔。どこか虚ろな三白眼。細長い首。

そして最大の特徴が、

アンニュイな表情・雰囲気

です。

写真の2人がそうしているように、

少し俯き加減の角度が、当時最高に【盛れる】角度の一つだったんです!

上から撮る・レンズを見上げるように視線を送るほうが【盛れる】のを発見してくれたのは…もしかしたら当時の若い女性たちかもしれませんね。私たちもお世話になることがあります。

うつむき加減、または弱々しく何かに寄りかかるポーズの絵を、竹久夢二は多く描きました。儚げ・悲しげにも見える表情。少し陰がありそうで、血色も病的な感じのする女性たち。

それが最高に美しいとされていました。 

大正浪漫=退廃美 とでもいうのでしょうか。

今とは全然違います。

オレンジチークで健康美★や 血色メイク★えくぼは恋の落とし穴★なんてもってのほかだったんですね。

それにしても、絵の中の女性が現実の女性たちの姿や佇まいを変えてしまうって、すごいことです。


③100年変わらぬ、手指の魅せ方

頬に両手をあてる左の女性。頬杖をつくような形の右の女性。どちらも、カメラにあえて手指を強調して写しこんでいるように思えます。

「女性らしいしなやかな手指」を強調し、【バエ】を意識しているのではないでしょうか。

竹久夢二は女性を描く際、手を少し大きめに強調することで女性らしいしなやかで繊細な手指を魅せました。

指輪の映える美しい手指、憧れますね。

私も毎日ハンドクリームやネイルオイルでケアを欠かしません。

骨ばって大きな男性のそれはちがう、しなやかで繊細な女性の手指は 「女性らしい美しさ」を表現する最強のパーツ。この認識は、昔も今も変わらないんですね。


さて、こんな風に語りましたが、ざっくりまとめます。私が言いたいことは

美の概念は変化しても

女性が美しい姿を残したい!盛りたい!映えたい!という気持ちは

100年前から変わらない。


ということです。

いや、もっと昔から変わらないのかもしれません。 

今の時代はSNSが普及して、誰でも気軽に写真を公開できる。自分の写真にいいね!がつけば、承認欲求が満たされる…。

それも手伝って、バエ、盛り、のために他人に迷惑をかけるているような人も少なからず存在してます。もちろん私は、それは絶対に間違っていると思う。

人が人を美しい!と褒めるときは、外見・内面・所作全て含めて褒めていると思うんです。

だから内面や所作でおブスになったら台無し。

でも、

美しく盛りたい・映えたい!

というその気持ち自体はとても自然なことで、何も間違ってはいない。と私は思っています。

むしろ私の好きな、挿絵も美人画も、そしてそこからつづく今の雑誌やファッションも、メイクも、世の女性たちのこの気持ちが発展させてきた分野だし、これからの時代もそうなのだ。と信じています。


さいごに。

実は写真の美女2人の正体は、

私の曽祖母と、その妹。


私が産まれる直前に亡くなってしまったので、写真やビデオでしか見たことはないけれど、2人ともおばあさんになっても、上品なオーラが漂っていて、若い頃綺麗だったんだろうな、ということがよくわかる雰囲気でした。親族みんなが美人だ。と評していたそうです。

大正9年、写真の2人は25歳、27歳。

私は今年の誕生日を迎えると27歳になります。

そう、自分と同い年の曽祖母の写真だったんです。なんだか不思議な気持ちになる…。

2人のように、大人っぽく美しい女性を目指したい。


おてんばな自分の現状と比べ、とっても複雑な気持ちでこの写真をしばらく眺めていたのでした…笑


ちなみに、夢二式美人の時代は、面長にぱっちりお目目が美しいとされてましたが、時代とともに目の面積が大きい童顔の女性が美しいとされるようになってきているそうです。橋本環奈ちゃんは典型的。
江戸時代以前は、目を細く見せる化粧!なんて本も流行ったらしい。今では信じられないですね。

個人的に、美人画や挿絵を通して、こういう女性のメイクやファッションの文化にも興味津々なので、いつか学んで、改めて文章にできたらなあと考えています。

それでは。












 













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