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『しびれ』の捉え方と治療ポイント

1. はじめに

臨床において、“しびれ”は非常によく遭遇する患者様の主訴です。

しかし、「しびれ」は主観的な表現であるため、医学的に「しびれ」そのものを治療するという概念は、実は”ない”です。

治療目的には「しびれ」は含まれていないのです。

そのため、「しびれ」を治療すると言うと否定的な意見も多いです。

そのため、私は理学療法(士)という枠にとらわれず、理学療法士の免許を持った一人の治療家として対応・介入することにしています。

臨床で向き合っていると、患者様の訴える「しびれ」に対応できたほうが絶対によいからです。

自分や自分の家族が「しびれ」で悩む際に、「私はしびれは専門外ですから・・・」という治療家にはなりたくなかったからです。

そう思い立って、「しびれ」を調べまくり、まとめ、当時勤務していた整形外科で発表したことがあります。

これが当時のスライドの表紙です(^^)

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↑ <懐かしい>

“しびれ”の内容を注意深く聴取すると、患者様一人一人の訴えが異なるのがわかります。

<しびれの特徴>
・非常によく遭遇する患者の主訴である。
・患者によって、表現方法が様々である。
・客観的には表せない。
・定義がきちんと決まっていない。
・原因疾患が多くの診療科目にわたる。
 ・「しびれ」の発現機序が不明である。
・手術をしても、「しびれ」は残存することが多い。
「しびれ」を捉える際、多くの失敗をしている。

しびれの表現方法

それもそのはずで、“しびれ”は“痛み”同様にsymptom(主観的徴候)であるため、客観的には表せないからです。

そのため、臨床において、どのように“しびれ”を捉え、対処していけばよいのかが治療家にとっての課題になります。

患者の訴えるしびれとは?

一般用語としてのいわゆる「しびれ」と、医学用語としての「しびれ」は全く異なります。

「しびれ」という言葉が何を表現するのか、ということを明らかにする必要があります。

感覚についての表現ということは間違いないのですが、この「感覚」を、主観的な「感じ方」の問題なのか、客観的に検査できる神経系の問題なのか、に分けて考える必要があります。

「感じ方」の問題であれば、文化論や民俗学、言語学の領域になります。

ちなみに、以前勤めていた地域では「はばったい」という言葉が「しびれ」とはまた違う意味で使われていました…

いろいろな方言があると思うので、言語・文化系の文献を調べると面白いかもしれないですね。

「しびれ」が主観的に何を表現しているか国語辞典等で調べた上で、それを客観的な問題として捉えるならば、「paresthesia」「anesthesia」 「dysesthesia」の3つがヒットします。

ここからが医学。

臨床的には、「しびれ」を訴える患者に対し、それが、pare-なのか、an-なのか、dys-なのか検査をして鑑別し、それぞれを引き起こしている原因をさらに検査して確定していくという流れになります。

その結果、保存的に治療可能かを鑑別していくことになります。

しびれは感覚であり、symptom(主観的徴候)に分類されます。(ちなみに、客観的徴候は”sign”)

一般用語で訴えてくる患者様の表現は、医療用語を使う医療者の受け取り方で異なってきます。

感覚は本人の感受性によっていくらでも量も質も変わるため、定義づけしにくいのです。

したがって、それを聴取する側の聞き方・受け取り方によっていくらでも変化しうるということを肝に銘じておかなくてはいけません。

(聴取する側と言うのは、つまり、医療従事者)

また、“しびれ”の原因疾患が一般内科はもとより、神経内科、循環器内科、血液内科、整形外科、呼吸器内科、内分泌内科、皮膚科、小児科などいわゆる内科系診療科のみではなく、脳神経外科、整形外科、血管外科、胸部外科、産婦人科などの外科系診療科、さらには精神科、心療内科とも関連するため1)、“しびれ”を捉えることをより一層困難なものにしているのです。

そこで、今回、治療家が“しびれ”を捉えるために必要な知識をまとめ、臨床において、どのように検査・鑑別・治療を行っていけばよいかを書きました。

※注意※
今回の「しびれ」noteでは、
疾患の説明や病態生理、画像所見の見かた、など、
医師の診断に関わる項目は記載しておりません。
そのあたりを勉強したい方は、note末の「参考文献」を参照してください。
※今回のnoteの目的※
① しびれの捉え方に対するパラダイムシフトを起こすこと

② しびれの鑑別の方法をチャート式で理解して頂くこと

③しびれの治療を実施する上で効果的な指標を知っていただくこと

このように、「技術」よりも「捉え方」の一助を目指しています。
(例として、私の臨床を少し紹介しています)

<読んだ方の感想>


一般的な教科書的なしびれに関する「まとめ」を行ないますが、それでは「しびれ」を訴える患者様の治療はできません。

教科書的な「まとめ」をおさえつつ、「臨床的な捉え方&治療ポイント」を理解・実践できたほうが医師を含めた医療従事者と関わるうえで重要です。

今回のnoteを読んだ後、しびれに対する苦手意識は全くなくなるはずであるし、患者様や医療従事者にもしびれとは何なのか?を、的確に説明できるようになるはずです。

いつものnoteは、めちゃくちゃ臨床的な書き方で、エビデンスを重視する方からお叱りを頂くこともありました(泣)

今回のnoteは、しびれの教科書的なところもおさえたかったので、少しアカデミックに書きました。

note末に、引用文献・参考文献もございます。

それでは、しびれの世界へどうぞ(^^)

2.「しびれ」の定義

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