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自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)

 幼少期から主に認知や行動面で、発達の遅れが見られることを発達障害という。
 18歳頃までに現れる中枢神経系の高次な機能障害である。
 親の養育態度とは無関係であり、脳の機能障害と考えられている。
 発達障害は、IQ70以下の知的障害(精神遅滞)、自閉症スペクトラム障害、 特異的発達障害の3つに分類される。
 自閉症スペクトラム障害は、DSM-IV-TRまでは広汎性発達障害 (porvasive developmental disorder)とよばれ、さらに下位分類が存在した。

広汎性発達障害

①自閉性障害(autistic disorder)
 3歳頃までに社会的あるいは情緒的な結びつきが乏しい、言語の遅れや情動的な言葉、常同的で反復する型にはまった動作などが明確に認められる障害。
 知的障害(IQ70以下)を伴う場合が多く、 伴わない場合は高機能自閉症とよび、区別されることもある。

②アスペルガー障害(Asperger's disorder)
 コミュニケーションの障害が少なく、知的障害・言語障害を伴わない者。

③レット障害(Rett's syndrome)
 主に女児に発症する。
 それまでに獲得した手の技能を喪失し、その後常同的な手の動きが発現する障害。
 5ヶ月頃までは正常発達をたどるが、4歳頃までに頭部の成長が減速し、重度の精神遅滞と自閉性傾向をもつ。

④小児期崩壊性障害(childhood disintegrative disorder)
 2歳頃まで正常発達をたどるが、3歳以降正常発達が停止し、退行してゆく。

 広汎性発達障害のこれら下位分類は、3歳以前に3つの行動特徴をもつ。
(1) 社会的相互作用の障害(impairment of social interaction)
 他者と目を合わせられない。
 対人関係の形成・維持の困難さ。
 情緒的相互性の欠如。
(2)コミュニケーションの障害(impairment of communication)
 話し言葉の遅れ、会話を開始し継続することの困難さ。
 言葉を覚えるのが困難で、会話がかみ合わない。
(3)想像力の障害(impairment of imagination)
 限局された興味対象への過度な集中。
 習慣へのこだわりや常同行動。
 思考と行動の柔軟性の発達不全。

 広汎性発達障害は、程度の差はあれ同じ特徴をもった連続体(スペクトラム)であるというウィング(Wing,L.)の考えに基づいてカテゴリー分類が廃止された。
 カテゴリー分類により診断名だけで障害を判断し、子どもの個々の姿を見失う危険があった。

援助

 自閉症スペクトラム障害は、脳の機能障害が予測されるため、根底から改善することが難しく、薬物療法は有効ではない。
 自閉症児にとって暮らしやすい環境をつくり、適応力を育てることで困難を軽減していく療法が基本。
 行動療法的アプローチなどがとられる。またTEACCH (Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped Children)という、言語ではなく絵で見せて視覚で理解させるといった自閉症児を支援するための個別教育プログラムが行われることがある。
 自閉症児は、その行動特徴から偏見やいじめにあうことがあり、不安障害・気分障害・睡眠障害など二次的な問題が発生することがある。
 心理療法は主に二次的な問題に対して行われる。
 養育者は自身の養育を責めることが多く、不適切な養育で起こる障害ではないことを説明するなど、家族への心理教育が重要である。

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