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【残念怪談】二人乗り

ヘッダーはいつものように怖い話風に作ってはいるが、今回も実体験だが怖くない話になってしまう。


これは私が中学生の時の話だ。

当時の私は所謂田舎のヤンキーを気取った、健全な思春期男子だった。

毎日夜中まで友人宅で何故か煙る紫煙の中で、馬鹿話に花を咲かせる。
一頻り話したら帰宅。
チャリ(自転車)に乗り、真っ暗な田舎道をゆっくりと自宅へ漕ぎ進めるのだ。

現在は横浜の中心部に住んでいるため夜でも道路は明るいが、駅も無い田舎町は街灯が無い所が多い。
あっても街灯同士の光が絶対に届かない距離毎に設置されており、暗闇を潜り抜けながら走る。

自宅はメイン道路に面しているため、わりかし街灯の間隔が近い。

暗闇の中から、一際明るい道路に出ると安心感を感じたものだ。


その日も明るい道路に出て安心したのも束の間。

自転車の荷台に衝撃が走った。

漕ぐペダルも重くなる。

仲の良い先輩の家も近かったため、先輩の悪戯だろう・・・とその時は考えた。
呆れながらゆっくり振り返る。

「全く、こんな時間に何やって・・・」



先輩じゃない。


そこには軍服のような服を着た人間のような形はしているが、顔と思われる部分は全てがツルリとしており、目と口に当たる部分は大きな穴が空いたものがいた。

イメージ画を描いてみた。

背中を走る恐怖感。

一瞬で吹き出る脂汗。

得体の知れないものが私の自転車の荷台に乗っている。

思考が上手く回らない。


心の中で「消えてくれ!」と念じるが、それは未だにそこにいる。


その間もペダルは重い。

怖い思いをしながら自転車を漕いでいるのに、勝手に荷台に乗ってきたそれに苛立ちを覚え始めた。


私は咄嗟にウィリーをしたが、それは離れる素振りも見せない。

思春期の男の子は怖い。

ついに怒りの頂点を超えた私は自転車を投げ捨てた。


そしてそれに向かって、フルパワーで正拳突きを放つ。

もちろん手応えは無い。

だが、一瞬首を傾げたような仕草をしてそれは消えた。


あれはなんだったのか。

その後投げ捨てた自転車を起こし、口から煙を吐きながら自宅へ帰った。

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