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1 この世に誕生。ここからすべては始まった

第一子、長女として生まれた私

今では健康に生んでくれた母にとても感謝している。

だけど、なんで母の元に誕生したのが私だったのかと思う時が幾度となく訪れてくる。

私は元々、活発な女の子だったらしい。
物心がついた頃の記憶から辿っていく。

M町

私達家族は、これまで三ヵ所の土地に移り住んで暮らしてきた。

一か所目。
砂埃のにおいが懐かしいM町。

まだ私にきょうだいはおらず、
少なくとも私の父と母は 、この時が一番幸せだったに違いない。

その頃の写真の一枚に、
お買い物先の駐車場で母と私が写っているものがある。

母が優しい顔をしている。
この写真を見ていると、わけあってザワザワ複雑な気持ちになる。

2歳、3歳ぐらいだっただろうか。
母と歩いてお買い物に出かけ、家へ帰る時のこと。

私は鍵を無理やり母から奪い走り、
家の中へ入って内鍵をかけた。

「ドアを開けなさい!!」

母の叱る大きな声が聞こえるが、
私は楽しそうに笑っている。

楽しそうに笑っていたのは、
母が困っている姿を私は面白がっていたのだ。どうしてそれが面白かったのだろう。

よく見る光景で、他の親子と同じように、
“母と手を繋いで仲良く一緒に帰る”

という親子ではなかった。
母とはやっぱり昔から合わなかった。

合わないと思うのは、
お互い話すことが足りなくて、母との絆はなかったのだろうと感じるからだ。

かまってほしくて、私を見てほしくて、
人を困らせることを遊びだと思い込んでいた私と、危険信号だと気づかずに、愛情不足だと感じずに、ヤンチャな子だと決めつけてしまった母。

そんな二人に絆ができるはずがない。

えいちゃん

これを今の見解としているが、この私の行動の原因の一つに思い当たる人物がいる。

《えいちゃん》だ。

近所に住んでいる二人の男の子がいて、よくその子たちと一緒に遊んでいた。

そのうちの一人がえいちゃん。えいちゃんもヤンチャな男の子で、もう一人は、えいちゃんとは真逆のおとなしい男の子だった。

えいちゃんのことは、強烈に覚えているが、おとなしい男の子のほうは、やさしかったという以外、あまり印象がなく思い出せないほどだ。

―えいちゃんの話に戻ると、色々いたずらをして、おかあちゃんや、近所のおっちゃんに叱られてしまうような悪さをする子でした。

でも、私には、やさしくておとなしい男の子よりも、えいちゃんといることの方がずっと居心地がよかったのです。

きっとそこにもし、女の子がいたとしても、私はえいちゃんと仲良く遊んでいたでしょう。女の子らしい女の子ではなかった。

いつも笑わせてくれて。フェンスに頑丈にまとわりついた山ブドウを私のために引きちぎってくれて。

とっても面白くて楽しくて、時にやさしくて。私のいたずら心とやさしい心を刺激されていた感覚でした。

それが、母に対しても同じように遊びの延長線上でいたずらをしていたのではないか。
ということが、私が母に悪さをした原因かもしれない。

代わって、父というと、
毎晩仕事の帰りが遅く、日曜日以外は一緒に食事をしたことがなかった。

ある夜、父が帰ってくると、父にだけ夕飯にお刺身が出る。どうして父にだけお刺身が出るのか子どもにはわからない。

子どもながらに食べたいという気持ちが湧く。私が父に「ほしい!」と言ったのだろう。一緒に食べることが嬉しいかのように、父は私に分け与えてくれた。

お刺身をもらって何とも言えないこの私の心の温かさ。父の優しさを感じている証拠だ。

そう、父はとっても愛情深い人だ。
休日には、三人でスーパーへ出掛ける。母が買い物をしている間、私は父と店内にある大きなテレビで、ルパン三世を見るのが定番だった。

遊園地や動物園などといった、家族らしい休日の遊びがなくても、父の側にいられるだけで嬉しかった。

遊びと言えば、父とじゃれ合うことだった。お父さん!と抱きついて、抱っこやおんぶをしてもらって。よっぽどのことでない限り父に叱られたことはなかった。むしろ、いつも笑って私を受け入れてくれていた。

残る傷あと

しかし、父と過ごす楽しい時間は、いつも一緒にいる母とは全くなかった。
けれど、ある日、母が公園へ連れて行ってくれたことがある。でも、私は公園にあった滑り台から落ちておでこに怪我を負ってしまう。

注意をはらうのは私だけのはずなのに、転落してしまった。なぜだろうか。

母は私を見ていなかったのだと思う。
一瞬、目を離しただけなのかもしれないが。

このおでこの傷は、今でも残っていて、シャッーっと擦れた傷を見るたびに思い出す。母に対して、悲しくて、愛されていない、イヤな気持ちを。

決定的にわかったよ

― 十数年後に父と母から聞いたことがある。私が高熱を出した時のこと。

母は病院へ連れていくか判断に迷い、そのままずっと家にいた。それを帰宅後に聞いた父が、「なぜすぐ病院へ連れて行かなかった!」と激怒し、急いで私を連れ出し病院へ行ったという。

母は、「車の免許がないから行けなかった」と言い訳すると、「タクシーで行けただろ!」と父。するとまた母が「お金がいるから」という。

はぁ。。
これを聞いた父も私も呆れ顔。

そうなのです。
母は私に対して愛情が薄いこと、責められると言い訳ばかりする自分を守る人間だったのです。なぜ、母からの愛情を感じていないのか、やっとわかったよ。おかあさん。

父、母、私。三人の生活もそろそろ終わる。
そののち、母が妹を妊娠・出産した。
ここからまた母は大きく変わります。

妹は未熟児で生まれました。
股関節にも異常があって、下半身は、ギブスのようなものを巻いている状態で家に帰ってきました。

母は当時を振り返り、妹が可哀想だったから一生懸命だったと言います。何でも妹が優先になってしまいました。

そのことに関しては、私は何も気にせずに過ごしていました。というのは表向きで、妹に嫉妬して母とぶつかりたくないから、私は妹をいじめてしまうことになるのです。

そしてその妹もまた、大人になるにつれ、この先とんでもない人間に変化していく。




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