見出し画像

4 初体験ばかりの幼稚園

私が幼稚園へ通っていた頃の話を母に聞く。母はいつもこれを話す。

「まだ小さい妹をいつも連れて私を幼稚園へ通わせた」と。

まだ小さいのに、雨の中、風の中、一緒に連れて行かなければならない妹に、母は可哀想で仕方がなかったようだ。

私のことを可哀想だの心配だの話してもらったことはない。
やんちゃでとても困ったとしか聞いたことがない。

初めての女の子のお友達

あの意地悪な女の子や、ちょっと控えめな女の子。他人をいじめたり、嫌がらせをすることもなく、それなりに仲良くやれていたと思う。

男の子ともバランスよく遊べていた。

ただ、やっぱり男の子というのは、何かと変なことをしてくる。

【こぶた】と変なあだ名をつけてきたり、変顔をしてきて「お前もやれ」と強要してきたり、上り棒で遊んでいると、私の体操着の半ズボンを下ろして面白可笑しく。嫌がらせとか、いじめとか、たぶんお互いよく知らない。
よくからかわれていた。

やめて!とは言うのだが、そんなに嫌な気持ちはしなかった。
その頃は、まだ遊んでもらってる感覚だったのかもしれない。
"これが男の子だ"と教えてくれた、えいちゃんのおかげかもしれない。

ただただ、同世代の子と一緒にいて遊べて楽しかったという記憶しかない。


プールともちつき

プール遊びもここが初めてだった。おうちでプールなどしたこともないし、海へ行ったこともない。お水が怖いというより、顔をつけてもぐることすらどうしていいかわからなかった。
そういうことで、幼稚園でのプールの思い出写真は、水から顔を出した時のブハァー!という大きな口の、みっともない顔だ。

もちつきも初めて。当時は杵と臼で本格的な行事だった。
杵でお餅をつくときはもちろん、持つ杵を先生が支えてくれたのだが、その思い出写真はよく笑っている。初めての喜びと、トントンとお餅をつく動作が楽しかった様子で写っている。
お餅をついた後は、きな粉をつけていただいたけど、感想は口に粉がまとわりついて、《初きな粉ダメだ》

ニンジンといい、きな粉といい、私の味覚はどう教育されたのだろうか。
大人になってからはこんなに美味しくいただいているのに。


初めての園でのお祭り行事

お店屋さんごっこ。

いくつかあったお店の中からなりたいお店屋さんになって、子どもや先生、保護者がお客さんとなって、お店役の子どもが接客をするというもの。
私は病院の看護師さんを選んだ。当時はの呼び方は看護婦さん。
まずは、画用紙やビニールで、小物と服を作った。

問題発生。

私は、ナースキャップに赤十字を書きたかったのだが、書けなかった。
赤マジックで十字を書いてから太く塗りつぶせばよかったのだろうが、
太い十字の形で覚えていたため、何とか形を描こうとしてしまい失敗。
わけのわからない形の病院マーク。
この写真を見返すと、知能発達の無さがうかがえる。

しかし、先生に褒められる時がやってきた。

準備や作製後のおかたづけだ。
ほかの子たちは、作ったら終わりーって感じで、広場へ遊びに行ってしまった。いつもなら私も外へ出てしまうはずが、なんと整理整頓をやり始めたのだ。ゴミを捨てて、小物を並べて。自分のみならず、みんなの道具もすぐ使えるように、それぞれ名前が書いているロッカーの上に置く。

うれしいことに、それを先生は見ていたのです。
みんなを集めて見習うように言ってくださいました。


先生のほめことば

「これを見なさい。みんなの分まできれいに片づけてくれたよ。
ここまでがお店屋さんごっこだね。
散らかっているより、きれいに並んでるほうが気持ちがいいね。
みんなでお礼を言いましょう」

うれしかったなぁ。褒められるということがほとんど無かったので、
もちろん褒められたこともうれしいけど、

《自分がやろう・してあげよう・みんなのために》

思って自分がしたことを認められたことの方がもっとうれしかった。
《え?、こんないい子なんじゃん?わたし》

家での悪さ加減と全く違う自分にもびっくりだった。


チポリーノの冒険

そして、初めての劇あそび。

「チポリーノの冒険」

ここは野菜とくだものたちの暮らす国。玉ねぎ一家の長男坊チポリーノが、無実の罪で牢屋に入れられてしまった父チポローネを救いだそうと大活躍。仲間たちと力をあわせて、国をおさめているわがままなレモン大公やトマト騎士とたたかいます。痛快な冒険物語。

作:ジャンニ・ロダーリ 訳:関口英子 出版社:岩波書店


確かレモン大公かトマト騎士の悪役でした。
自分の役を全うしようと偉ぶってやっていたと思う。
本当は、主人公のたまねぎ坊やがよかったけど、かわいい女の子に配役。
やっぱりわかっていらっしゃいますよね、先生。

♪おいらの生まれはたまねぎ畑 陽気で元気で 友達いっぱい♪
♪かぶこさん いちごさん さくらんぼ坊や ぶどう親方 にらやまにら吉どん♪

YouTubeで何十年かぶりに聞いてみた。
曲と歌詞を覚えていたし懐かしい。あの頃が記憶の中でよみがえってくる。

歌というのは、本当にその当時のことを思い出させてくれる。
歌は素晴らしい。

そんなこんなで、初体験ばかりの園生活だったが、たった1年で終わりを迎えた。5歳の私は、家の狭い世界から、少し広がった新しい世界に刺激的な毎日だったに違いない。

これから、まだまだ知らない世界を、善と悪で戦いながら体験していく。「チポリーノの冒険」のように。

この記事が参加している募集

ノンフィクションが好き

サポートよろしくお願いいたします!いただいたサポートはいつか本にするという大きな夢、HSPを支える活動費にお役立てしたいと思っております!