会社が社内旅行の費用負担をしたら税金はどうなる?
最近は従業員の採用がどんどん難しくなっており、働き方改革を含め、会社としても従業員に対する満足度をいかに上げるかが課題になっています。
そうした中で、社内旅行に行く会社もあると思いますが、では社内旅行の費用を会社が全額負担した場合、税金はどうなるのでしょうか。
■従業員に対する経済的利益には課税
社内旅行の課税関係を説明する前に、原則となる考え方を解説します。
会社は従業員に給与を支払うと、所得税を源泉徴収する義務があります。
さらに、会社が従業員に対して、実質的に金銭を支給したのと同じと認められるケースには、
給与の上乗せとして計算することになります。
これを「経済的利益」と呼びます。
例えば、給与が30万円の従業員に対して、会社が借上げたマンション(家賃10万円)を無償で住ませている場合、この従業員に対する所得税は30万円のみならず、10万円を含めた40万円を額面給与として所得税が課されることになります(一部従業員から家賃を徴収している場合は、このような課税がなされないのですが、それは別のコラムで解説します)。
■社内旅行の費用はどうなるのか?
この「経済的利益」の考え方は、社内旅行にも当てはまります。
社内旅行の費用を会社が負担するということは、従業員各自に対して旅行代をプレゼントしているのと同じですから、本来であれば、各従業員に旅行代金を給与額に上乗せして、所得税を支払うことになります(会社側はあくまでも経費になります)。
従業員からすれば、会社の企画で社内旅行に行ったばかりに、税金を多く払うことになりますから、手取り額が少なくなります。
ここで、社内旅行に課税しない(経済的利益がなかったものとする)基準が国税庁から公表されています。
No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2603.htm
ここに明記されているように、社内旅行の費用を従業員に対して課税しないためには、原則として、下記2つの要件を満たす必要があります。
①旅行の期間が4泊5日以内であること。
②旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。
少なくとも、この2つの要件を満たしていないと、給与に上乗せして所得税を支払うことになります(会社が源泉徴収漏れとして課税されます)ので、注意が必要です。
■高額な旅行費用は否認される
また、国税庁のサイトには明記されていませんが、高額な社内旅行の負担も、課税されることになるので注意が必要です。
「高額とはいくらか?」という話になるのですが、これは非常に難しい問題です。
なぜなら、法律などに「いくらならOK」とは書かれていないからです。
上記の国税庁サイトを見ると、認められる(非課税になる)金額として、「旅行費用25万円(内使用者負担10万円)とありますから、会社負担額が15万円であれば大丈夫(高額ではない)ことはわかります。
過去の裁判などを参考にすると、会社負担額が従業員1人あたり20万円程度であれば課税されていませんが、それを超えると課税されるケースが多いようです。
■社内旅行費用に課税されないために
このように、社内旅行の費用に課税されないためには、「旅行の期間」「従業員の参加割合」「1人当たりの費用負担額」に配慮しなければ、税務調査において否認・課税されてしまうので注意が必要になります。
「会社が社内旅行代を全額負担して何が悪いのか?」
「年に1回くらい豪華な旅行に行ってもいいだろう」
と考える方も多いとは思いますが、
思わぬ課税を受けないためには、上記の要件を守る、もしくは、高額になる場合は従業員に一部費用を負担してもらうなど、配慮が必要ということになります。
ぜひ、注意してください。
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