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だから彼と話していると、僕は自分がとても面白い人間でとても面白い人生を送っているような気になったものだった

彼には場の空気をその瞬間瞬間で見きわめてそれにうまく対応していける能力があった。またそれに加えて、たいして面白くもない相手の話から面白い部分をいくつもみつけていくことができるというちょっと得がたい才能を持っていた。だから彼と話していると、僕は自分がとても面白い人間でとても面白い人生を送っているような気になったものだった。
ーノルウェイの森(村上春樹)

「ノルウェイの森」は村上春樹の小説の中で抜群に好き、というわけではないのだけれど、それでも何度もふとしたときに読み返したくなるほどには好きな小説だ。

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このnoteは、ほとんど冒頭の引用を引用したかったがためのものです。なんか良いと思うんだよね。

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喪失。

この小説では、直子を失いながら(もともと得られてすらいないのだけれど)、レイコさんと弔い、そして緑を得る。でも冒頭の現代の場面では明らかに緑はいなくなっているように思える。つまり主人公は緑をも結局は失っている(と思う)。

しかし、主人公が失った、直子や緑以上に重要なものはキズキだ。主人公にとって、キズキのような親友は、おそらく、一生を通じて2度と得られない。キズキというフィルタを通して外の世界とつながっていた主人公は、以降多くのものに無関心になっているように思える(それが本来の主人公の姿なのだけれど)。そして、言うまでもなく、この小説のあらゆる喪失は、キズキを失ったことから始まる。

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大人になると、「タイプが違うし、意見も違うのに、なぜか言いたいことを言いあえる親友」を得るのは途端に難しくなるように思う。

多くのコミュニティ(例えば会社)には比較的似通ったプロフィールの、似通ったパーソナリティの人間が集まり、当然ながら、似通った考え方を持つ人たちが出世していく。パーソナリティは偏っていく。

この小説の描く喪失は、そこから端を発しているようにも思える。

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話は変わるのだけど、個人的には、同性でそういう親友が得づらくなる一方で、パートナーであれば「タイプが違うけれど何でも言える」相手を得られるようにも思う。そういうパートナーを得られる人は多くないし、幸せなほうなのだと思うけれど。

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