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【P+Bインタビュー】生理用ナプキンでジェンダーギャップ軽減を目指す「オイテル(OiTr)」の可能性(後編)

商業施設や学校の女性トイレで生理用ナプキンを無料で配布しているサービス「OiTr(オイテル)」が今、大きな注目を集めています。ショッピングモールなどのトイレで見たことがあるという女性も多いのではないでしょうか? 

女性トイレの個室に設置された専用のディスペンサーに生理用ナプキンが入っており、スマートフォンのアプリで操作することでナプキンを受け取ることができるというもので、ナプキン代はディスペンサーに付属するデジタルサイネージに表示される動画広告の出稿費で賄われています。2023年2月末現在179ヶ所の施設に2500台のOiTr(ディスペンサー)が設置されていて、アプリのダウンロード数は50万ダウンロードを突破。毎月生理と付き合わなければならない世代から高い支持を得ているサービスです。

トイレに当たり前にトイレットペーパーがあるように、生理用品の設置も当たり前のインフラにしたい―。後編の今回は、ディスペンサーを設置することで見えてくる、トイレのデータ活用の可能性についてお話を伺います。

▼前編はこちら

飯﨑俊彦さん/オイテル株式会社専務取締役 事業本部長 COO。“あなたによくて、社会にいいこと”をビジョンに掲げ、オイテル株式会社をCEOの小村と共同創業。誰もが生きやすい社会の一助となることを自分の終活として長年勤めていた一部上場企業を55歳で早期退職。社会課題をビジネスで解決するをミッションに、“トイレットペーパー同様に個室トイレに生理用品が行き届く社会”の創出のために「OiTr(オイテル)」の企画立案、ブランディングを担当。創業以前はデジタルハリウッド株式会社、株式会社アスキー、エイベックス・プラニング&デベロップメント株式会社(avex group)等の様々な業種で事業プロデュースに従事し新規事業を手掛ける。

無料で提供する仕組みをどう実現させるか

―生理用ナプキンをトイレットペーパー同様当たり前のインフラにするために、まずなにを考えましたか?

飯﨑:この事業のために絶対に実現しないといけないミッションは3つありました。1つは生理用品を個室で受け取ること。2つ目は無料で受け取ること。3つ目はトイレットペーパーと同じように、持続可能であること、です。そのために、生理用品を提供するディスペンサーに動画広告を放映するサイネージを付けて、その広告費によって無料提供が可能になっています。OiTrのサービスは専用のアプリをダウンロードして操作をすれば、簡単にナプキンが受け取れます。

―ちなみにナプキンは月にどれくらいユーザーの手に渡っているのですか?

飯﨑:全国で月に約16万枚受け取られています。

―それは広告のプラットフォームとしても大きいですね。ディスペンサーの広告に出稿しているクライアントはどのようなところが多いですか?

飯﨑:やはり女性の健康に関するものが多いです。例を挙げるとオンラインクリニックや生理に関するサプリメントなどですね。

―ディスペンサーにサイネージをつけて動画広告を配信し、その広告費でナプキンの無料提供ができているとのことで、かつてないサービスですが、思いついたきっかけを教えてください。

飯﨑:タクシーに設置されている動画広告がヒントになりました。タクシーという個室空間で画面に目が向きやすいため認知率が非常に高いメディアであること。また、タクシーを利用している多くは会社員なので広告のターゲティングがしやすいこと。これらの特徴は、トイレという個室空間でかつ女性にターゲティングすることができるという環境に近いと感じました。それで、ディスペンサーにサイネージを取り付けて広告を流したら良いのではないかと考えたんです。

―動画広告はナプキンを取る人だけではなく、トイレの個室に入った人すべてに流す仕組みなのですよね。

飯﨑:はい。個室に入るとセンサーが人を感知して、広告が自動的に流れます。タクシーの動画広告は基本的に乗車中流しっぱなしですが、女性トイレはただでさえ混雑するので、さらに広告によって混雑を助長するようなことにならないよう配慮し、広告は最大2分で終わるようにしています。これは女性が小水を足すのは1~3分といわれていることから、間を取って2分間の広告。1枠15秒の広告を8本120秒流しています。3番目までは固定の広告で、4枠目からはランダムに流すという広告メニューになっています。しかも施設によってターゲティングできるようにもしています。

―個室に入った人数=広告のインプレッション数になると思うのですが、人が入ってきた時に感知するセンサーで人数のカウントもできるということですか。

飯﨑:入室してディスペンサーに最初に流れる広告が固定枠なのでこの再生回数が、、トイレに入った人数ということになります。ちなみに、大型の商業施設では、トイレの1個室1日200人を超える人が入っています。

―なるほど。現在全国で179ヶ所2,500台が設置されていて、1日で200人入る個室もある、となると、配信先はかなりの数になりますね。

飯﨑:あくまでも大型の商業施設の一例です。首都圏でデジタルサイネージを導入している首都圏のタクシー会社は1万5,000 台くらい保有しているので、それに比べるとまだまだですが、タクシーの乗車者に比べトイレの利用者が非常に高いことはOiTrのデジタルサイネージの強みだと思っています。また設置台数も着実に増えてきています。

トイレ×広告でできること

―ちなみに広告のセグメントの出し分け方はどのようになっているのですか?

飯﨑:全台(全国)に配信するだけでなく、施設(業種)ごとにターゲティングして配信できます。極端にいうと1台ごとに配信も可能です。

―すごいですね。そうすると、赤ちゃん用の椅子がある個室には赤ちゃん関連の広告を多めに出す、などということも可能になるのですね。

飯﨑:やろうと思えばできます。それと、OiTrでナプキンを取るためのアプリはユーザー登録が必要で、今は詳細の個人情報などを取得はしていないのですが、今後アプリ内で他のサービスを展開すると、それなりの情報を得られるようになるでしょう。そうすると、ディスペンサーとアプリでスマホと融合した広告メニューができるようになります。

さらに、ユーザーへのスマホへのプッシュ通知もできるので施設のトイレに入ったあと、その施設の利用した方の属性に合った広告を配信することも将来的には実現したいと考えています。

OiTrはより良い社会のためのインフラに

―使い方は無限大ですね。おそらく現在配信データなどを貯めていらっしゃると思うのですが、そういったものを今後活用したり、新たにサービスを展開されていく予定がありましたら教えてください。

飯﨑:OiTrアプリの利用者数を増やしてくことです。特にアクティブユーザーを増やすことが目標のひとつです。 現在すでに50万ダウンロードされているのですが、正直なところ今はナプキンを取り出すための機能しかないんです。そのためアプリ事業の拡大についてはずっと考えています。女性がこのナプキンを使うとポイントが貯まるとか。

OiTrの事業は社会のインフラを整備するためのひとつのプラットフォームを作りだと思っています。日本にあるトイレの数は計り知れませんが、多くのトイレにOiTrが設置されれば、広告事業だけに限らず、コンテンツ事業、アプリ事業、データビジネスの可能性があります。このことによりさまざまな企業がこのプラットフォームを活用する可能性も高くなります。このことにより、企業と協業することでOiTrのインフラが持続可能になり、生理のある人たちに優しい、生きやすい社会の実現につながることになると思っています。

―確かにトイレを通して得られるデータがどんどん集約されていくのですね。

飯﨑:はい。あとOiTrのWeb管理システムを施設に提供しています。これにより、「どこの個室のナプキンがそろそろ在庫が切れる」とかもPCやスマホで把握することができます。―まんべんなく補充に行く必要はなくて不足しているトイレだけに行けば良いので、無駄な動きをせず効率化も図れます。これは清掃作業やトイレットペーパーの交換作業にも活かせるのではないかと思います。

―可能性の塊のようなサービスなので、同じようなサービスを展開する他社も出てくるかもしれませんね。

飯﨑:ユーザーにとってみれば、OiTrのようなサービスはたくさんあったほうが良いですよね。トイレットペーパー同様に生理用品は行き届く社会に作るのに、弊社だけでしたら数百年かかるとすれば、競合他社よって、その社会がもっと早くに実現できることはとっても喜ばしいことです。ただし、ビジネスである以上、OiTrはトップシェアでありたいです。そのためには、商品、サービスの良さはもとより、企業文化というものを大切にして、みなさまに愛される企業を目指していきたいと思っています。


健康分野におけるジェンダーギャップという社会課題を解決させるためのアイデアから生まれたOiTrは、ナプキンを求める方だけではなく、設置する施設や広告主にとっても未来のあるサービスということができるでしょう。トイレならではのデータは今後、さらにユーザーや企業のさまざまなところに生かせそうです。

OiTrの広告革命

① 動画広告の再生数からトイレの個室の利用人口のデータを取得
② OiTr(ディスペンサーとアプリ)のプラットフォームのインフラを活用することで、ユーザー、広告主、施設に価値を提供
③ セグメントごとに配信する広告内容を変えられる
④ トイレのマネタイズ化により施設のトイレの清掃維持費の軽減

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