見出し画像

【P+Bインタビュー】生理用ナプキンでジェンダーギャップ軽減を目指す「オイテル(OiTr)」の可能性

商業施設や学校の女性トイレで生理用ナプキンを無料で配布しているサービス「OiTr(オイテル)」が今、大きな注目を集めています。ショッピングモールなどのトイレで見たことがあるという女性も多いのではないでしょうか? 

女性トイレの個室に設置された専用のディスペンサーに生理用ナプキンが入っており、スマートフォンのアプリで操作することでナプキンを受け取ることができるというもので、ナプキン代はディスペンサーに付属するデジタルサイネージに表示される動画広告の出稿費で賄われています。2023年2月現在176か所の施設に2420台のOiTrディスペンサーが設置されていて、アプリのダウンロード数は50万ダウンロードを突破。毎月生理と付き合わなければならない世代の女性から高い支持を得ているサービスです。

そこで今回は、OiTrの立ち上げメンバーの飯﨑俊彦さんに、生理用ナプキンを無料で設置する事業を興したきっかけや広告の観点から見たOiTrの可能性などについてお話を伺いました。

飯﨑俊彦さん/オイテル株式会社専務取締役 事業本部長 COO。“あなたによくて、社会にいいこと”をビジョンに掲げ、オイテル株式会社をCEOの小村と共同創業。誰もが生きやすい社会の一助となることを自分の終活として長年勤めていた一部上場企業を55歳で早期退職。社会課題をビジネスで解決するをミッションに、“トイレットペーパー同様に個室トイレに生理用品が行き届く社会”の創出のために「OiTr(オイテル)」の企画立案、ブランディングを担当。創業以前はデジタルハリウッド株式会社、株式会社アスキー、エイベックス・プラニング&デベロップメント株式会社(avex group)等の様々な業種で事業プロデュースに従事し新規事業を手掛ける。

健康分野でジェンダーギャップを軽減させたい、という情熱

―まずは、このサービスを始めようと思われたきっかけを教えてください。

飯﨑: OiTrは、社会課題の解決というミッションがまずあり2021年8月にローンチしたサービスです。今やインターネットの普及によって、日本の良いところも悪いところもリアルタイムで見えてしまう時代。悪くなっていく日本を黙って見ているわけにはいかないと思ったのですが、同じ価値観を持った人が集まって真剣に社会を変えていこうと努力したら実現できる時代でもあると思ったのです。解決できていない社会課題がたくさんある中で、主要先進国で最下位である日本のジェンダーギャップ指数に着目しました。ジェンダーギャップと一口にいってもいろいろありますが、健康分野におけるジェンダーギャップの軽減のために何ができるだろうと考えたのです。

―広告配信のテクノロジーやアイデアも事前にお持ちだったのですか?

飯﨑:いいえ、、誰もが生きやすい社会にしたいという思いだけでした。「ほかにない技術」「素晴らしいアイデア」「情熱」のいずれか1つでもあれば起業する価値があるといわれていますが、私たちの場合は仲間にハードウェアやソフトウェア開発に携わった人は1人もいなかったですし、本当に思いや情熱からのスタートでした。

―なるほど。飯﨑さんの情熱に技術やアイデアを持つ協力者が付いてきたのですね。では、健康分野におけるジェンダーギャップの軽減について詳しくお聞かせください。

飯﨑:ここ5年間で女性の正規職員への雇用は倍増しているというデータがあるものの、かならずしも女性にとって働く環境が良くなっているというわけではありません。女性の社会進出が増え、男性と同じように働くことで女性のライフスタイルも大きく変化し、そのことで弊害が起こっているということを知りました。生理をはじめとする女性特有の健康問題です。さらに心や体の面だけではなく、PMSや生理痛で仕事のパフォーマンスに支障が出れば、社内での評価が下がったりチャンスを失ったりすることもあることを知り、男性が作った社会がこのようなジェンダー格差を作ったのであれば、これはもう女性だけの問題だけではなく、社会全体で考えていかないといけない問題だと思ったのです。

そう思っていた時、トイレにトイレットペーパーは常備されているのに生理用ナプキンはなぜ常備されていないのか、というある女性の声にネットで出会いました。トイレットペーパーがなかったらものすごく困るのと同じように、生理が毎月来る女性にとってナプキンは必要不可欠で、なければ困るものでしょう。 たしかに同じ排泄物なのに、ナプキンはなぜ女性が自ら用意しなければいけないことになっているのだろうと何の疑いもなく感じました。そこで、同じように生理用品が行き届く環境をつくることで、ジェンダーギャップが軽減されるのではと思い立ちました。ナプキンは一部の女性だけが必要な嗜好品ではなく、生理のある人たちだったら必ず必要なものだからこれは絶対に解決すべき問題だ、そう思いました。

OiTrの使用イメージ

―素晴らしい情熱と実行力ですね。しかし、ナプキンをトイレの個室に無料で設置するというのは前代未聞のサービスです。苦労されたことも多いのではないでしょうか?

飯﨑:最初から苦労の連続でした。まず、コロナ禍でOiTrの開発を進めるべきか悩みました。OiTrは外出先の施設で利用することが前提なのに施設が休業したり、企業の多くがテレワークになったりしました。しかもただでさえ前例のないサービスなので、提案書を持って営業に回っても話を聞いていただけなかったです。

―経験のない中でのモノ作りですしね。どう乗り越えましたか。

飯﨑:そこは「ピンチはチャンス」。今コロナで企業が停滞している時に前例のないサービスの最初の一歩を踏み出すことは、小さな企業でも社会的インパクトがあることだから、頑張ってやっていこうと私たちは思いました。

トイレにおけるナプキンの無料提供が当たり前の社会になるように


―近年「生理の貧困」が問題になっていますが、OiTrもその解決に貢献するのでは。

飯﨑:実際その言葉がいわれるようになってOiTrへの注目は高まりました。生理の貧困が問題になり、自治体などがナプキンを配布するようになりましたよね。そうした経緯でOiTrも行政の目にも留まり、地域の図書館などにも多く設置されるようになりました。また、学生さんが大学など学校側にOiTrを提案して大学のトイレへの設置が実現したり、ゼミなどで学生がジェンダーギャップや社会課題に対して考えて行動を起こす機会を与える一環として設置されたりした例もあります。トイレに当たり前にトイレットペーパーがあるように、ナプキンがあることも当たり前のインフラにしていく。それが私たちの願いです。

―なるほど。利用する側としては、アプリのMAPでディスペンサーの設置場所やナプキンの残数が一目でわかるようになっているなど、UXも素晴らしいので今後いろいろなところにどんどん普及してほしいです。

飯﨑:OiTrは個室に人が入ってくるとディスペンサーのセンサーが反応することで、時間別のトイレの利用率や滞在時間などがすべてデータでとれるようになっていますし、広告の再生回数も計測できます。そのデータがわかれば、たとえば施設のスタッフがトイレ掃除に入るタイミングの効率化などにつながります。そのため設置先の施設や広告を配信する企業にも大きなメリットがあるのですよ。

―ナプキンを無料で設置するだけではなく、導入企業はOiTrを通してデータドリブンな施設運営や広告配信が期待できるのですね。後編の記事では、OiTrを導入する企業のメリットなどについてお話を伺いたいと思います。

OiTrの、ここが革新的!

✔生理用ナプキン×アプリの連動で生理の貧困やジェンダーギャップを軽減
✔ ディスペンサーの設置×広告配信で生理用ナプキンの無料提供を可能に
✔ トイレ×データドリブンで企業の課題解決

電通プロモーションプラスでは、Z世代をターゲットとしたプロモーションの企画・実施やZ世代との共創のサポートをおこなっております。お気軽にお問い合わせください。
お問合せ先はこちら


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!