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【P+Bインタビュー】株式会社ウテナ(後編)若手の提案を生かす社風がヒット商品を生み出す

InstagramをはじめとするSNSでZ世代の間でバズったヘアアイテム「マトメージュ 前髪グルー」「ミーアンドハー あざと毛スティック」をご存知でしょうか? 前者は、カンペキにつくった前髪が崩れないようおでこに前髪をのり(グルー)で貼り付けるというアイテムで、後者は、顔まわりの前髪や横髪をトレンド感のある繊細な毛束にスタイリングする整髪剤です。どちらも斬新な発想とネーミングが決め手となり2022年3月の発売以来大ヒットを記録しました。

これらを企画・販売したのは、スキンケアやヘアケアの老舗・株式会社ウテナ。そこで今回「あざと毛スティック」を開発し、自身もZ世代にあたる小西すみれさん(開発統括部マーケティング部マーケティング2課ミーアンドハーブランド担当)、「前髪グルー」の開発に携わった中島恵司さん(開発統括部マーケティング部マーケティング2課課長)、広報担当の則包裕美さん(経営統括部総務部広報室)に、前編・後編にわたってお話を伺いました。

前編はコチラ↓


若い世代ならではの感性を摘まない社風

―現在社員は何名ほどいらっしゃるのですか。

中島:全部で約140人です。営業も含めて全体的に40~50代が多い傾向にあるのですが、開発部門やマーケティング部は比較的20代が多いです。マーケティングの場合、やはり若い世代の感性は必要です。年長者だけではどうしても「昔はこうだった、ああだった」と経験論から考え始めてしまうので。私自身も、 SNS全般を見るようにしてはいますが 、どうしても読み取り切れない ところがあります。実際、私が若い人向けの商品のアイデアを考えようとしても限界があります 。若い世代ならではのニーズをとらえるには、若い開発メンバー自身の感覚を取り入れる必要がありますし、今までのアイデアと若い感覚のアイデアを繋ぎ合わせたほうがより良いものになると思っています。そこは、むしろ任せたい部分です。

(左)「あざと毛スティック」を企画・開発した小西すみれさん(開発統括部マーケティング部マーケティング2課ミーアンドハーブランド担当)と、「前髪グルー」の開発に携わった中島恵司さん(開発統括部マーケティング部マーケティング2課課長)

―2020年に新卒で入社した小西さんは、社内でジェネレーションギャップを感じたり、そのことで企画を通すのが難しいと感じたりすることはありますか。

小西:実はあまりありません。企画を出す時も「面白いね、どんなものなの?」と言っていただけることが多いです。それで理解してもらえなくても、もう一度ちゃんと資料を整理して持っていけばちゃんと見てくださるので、そこまで苦労はないですね。

―新しいものを柔軟に受け入れるというような社風なのでしょうか。

中島:そうですね。前回の記事でお話したように、弊社はニッチな視点を重視することを基本の考え方としているので、社員からの提案はまず受け取るようにしています。とはいえ、面白ければなんでもOKを出すわけではありませんが。

―「あざと毛スティック」などのように通る企画と、通らない企画の違いとは?

中島:年代問わず、「今これが売れているので、こういうものはどうでしょうか」という提案がすごく多いです。それだとターゲットがなぜそれを求めているのかとか、それに対して他社はどのようなアプローチをしているのか、といったポイントがごそっと抜け落ちていて説得力に欠けます。小西さんの提案した「あざと毛スティック」は、そういったポイントもトレンドもしっかり押さえて、「あざと毛」という新たなキーワードまで見つけてきたことには感心しました。


また、最終的にターゲットとなるZ世代の女性にとってどんなメリットがあるのか納得のいく説明があったので企画が通りました。さらに 「他よりもどう良いのか」というポイントが明確だったことが決め手となりましたね。

―若手の社員の提案を伸ばすために意識していることなどはありますか。

中島:社員が出してきた提案を、「それはどういう人が求めている?  どんな悩みがある? その悩みを抱えている人は今ほかにどんなものを使っている?」と、ある程度フレームに沿って整えていく作業をするのが上司である私の 役割だと思っています。「いや、あざと毛とかよくわかんないよ」とか「前にも似たようなものあったけど売れなかったんだよね」と批評だけして片付けてしまうのではなく、なぜそう考えたのか、なぜそう思うのかを理解していき、ちゃんとロジックが揃えば通します。若い女性向けの商品なのに、そこを理解ししていない上の世代が、「ちょっと違う」とか「デザインがいけてないよね」「そんなのじゃ売れないよ」と言うのはおかしいですよね(笑)。私も若手だった頃言われ続けてきたのですが、若い人にしかない感性を理解しようとすることは大事です。

任せてもらえることで、自分で考えてアイデアも生まれる

―そういった社風や先輩に囲まれて、小西さんはどう思いますか。新入社員の発想や新しいものに対して理解がない会社も日本にはまだたくさんあると思いますが。

小西:たしかに、同時期に他社に就職した同世代の子の話を聞くと、「入社して配属されたとたんに”自分の仕事”がある」というのは稀なのだなと思いました。普通は1年ほど先輩についてやっと実務をやらせてもらえるというケースが多いようですが、私は最初から実務を任されていたのです。しかも輩が全部教えてくれたりするのではなく、いったん自分で考える時間をくれて、それを先輩と一緒にるというやり方でした。だから私は今までやったどの仕事にも、自分の意志が入っていると感じることができます。そこが大きな違いなのかもしれません。なのかもしれません。ある程度任せてもらえたというのが、いろいろなアイデアを発想できたポイントなのではないかと思います。

―任せられると責任も伴ってくると思いますが、不安はありませんでしたか?

小西:責任は重いなと思います。でも、商品が発売されると達成感があるのですよね。それが化粧品メーカーの良いところです。うれしいことに、私が任されているブランドでは、季節ごとの限定品を出しているので、半年に1回それを味わえるのですよ。

なので、新しい商品が出たタイミングで好きなインフルエンサーさんが投稿をしてくれた瞬間とか、やっぱりうれしいですよね。責任ももちろんありますが、そういった喜びが多いのでやっていけるというのはあります。あとは本当にトラブルが起きたら、上司に頼ります(笑)。

一同:(笑)

中島:トラブルというか、私たち先輩・上司の仕事は失敗の確率を減らすことだと思うのですよ。もし売れなかったとしたら、今回なぜ売れなかったのかをチェックすれば良いだけの話で、もしかしたらその時はターゲットとなる購買層の行動やスタイルが違っただけかもしれないし、そこを失敗しないようにサポートしてあげれば良いと思います。そうしないと、「前髪グルー」や「あざと毛スティック」といった商品は出てこないですよ。前髪を貼り付けるとかおじさんだったら絶対やらないし、やらないから理解できなくて「無理無理」となってしまってはいけません。やはりそこはしっかりメンバーの話を聞くことが大事だと思っています。「自分の経験則は1回置いておく」ということを強く意識しています。

1つの商品を長く売るためのプロモーション

―ちなみに御社では、Z世代の特徴をどうお考えですか。

中島:いろいろな言い方をされていますが、やはり「失敗したくない」意識があるのだなというのは感じます。単なるハイブランド志向ではなく、自分が良いと思ったものを見極めることを重視しているのがデータからもわかります。あと、コストパフォーマンスの良さは必須で、その先にブランドの姿勢や考え方に共感して消費を選択しているのだと思いますね。

―そういったことは商品開発やプロモーションでも重視していますか。

中島:はい。そういったことをしっかり理解していかないと、取り残されてしまいます。例えば、マトメージュのプロモーションでも、機能だけではなく女性のエンパワーメント、自由なスタイルを楽しめるような世の中になってほしいというメッセージを打ち出しています。時代ごとのインサイトに合わせてプロモーションで伝える内容は変えていく必要があると思っています。約30年続いてきたものを、50年100年生かしていくというのが私達の仕事なので。

あとは、トレンドを重視するとはいえ、その場限りで売れれば良いというわけではないのですよ。私達としては10人に1人熱狂的なファンが使い続けてくれるというところをポイントにしないといけないので、「前髪グルー」も「あざと毛スティック」も一時期なブームで売り逃げようとはまったく思っていません。5年10年と売り続けたいです。マトメージュも最初はニッチな商品でしたが、多くの熱狂的なファンに支えられて発売から25年以上経った今でも売上は伸長しています。

―小西さんはご自身がZ世代にあたりますが、「Z世代」とくくられることをどう思いますか。

小西:私は自分のことをZ世代とは思っておらず、実際はもう少し年下の子たちが中心だと認識しているので、全てを理解できるとは思っていません。でも共感できるところはしていきたいです。例えばZ世代は少し病んでいる部分もあれば、インスタなどではキラキラしている部分もある二面性を持つ子が多いと言われています。その中に、共感する部分を見つけていきたいです。全部理解できるとは思っていませんが、私が嫌だと思ったことは、おそらくZ世代も嫌だろうと。共感する姿勢は常に持っていたいと思っています。

世代の異なる社員のアイデアを伸ばすポイント


✔ 自分が理解できない内容だから却下するのではなく、まず理解をしようとする
✔ 自分の経験則はいったん置いておく
✔ 自分で考え企画を生み出す社員を育てるには、ある程度「任せる」


今回は、新卒3年目の小西さんの視点と、入社16年目・マーケティング14年目の中島さんの視点で商品開発やマーケティングについてお話を伺いました。世代の異なる社員のアイデアの伸ばし方や環境についてお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。

電通プロモーションプラスでは、Z世代をターゲットとしたプロモーションの企画・実施やZ世代との共創のサポートをおこなっております。お気軽にお問い合わせください。
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