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【P+Bインタビュー】株式会社Oshicoco代表 多田夏帆さん(後編)流行りに消費されない「推し活」×「事業」の秘訣

いまや社会現象にまでなりつつある「推し」文化。かつてはネガティブなイメージもあった「オタク」という言葉も、Z世代はポジティブに捉えている向きもあります。推す、つまり好きという力は、自分を元気づけて前向きに生きる力にもなり得るでしょう。そこで、自身ももともと「オタク」で、推しがいる人に向けてメディアや通販を展開し、BtoB事業も手掛ける株式会社Oshicocoの代表取締役の多田夏帆さんに、前編・後編にわたって「好き」の力が生み出す推し活事業についてお話を伺いました。

―では、BtoBの事業についてもお聞かせください。問い合わせやクライアントはどういったジャンルの企業が多いですか。

多田:大きく2つあります。まず1つがエンタメ系の企業。配信プラットフォームのアプリ会社やアニメの制作会社が多いです。ライバーさんの芸能事務所もメインのクライアントにはなってきています。もう1つはサービス系です。ホテル、カフェ、居酒屋などといったところが多く、弊社がプロデュースという形でやらせていただいています。弊社で企画からSNSの発信や宣伝まで担うことも多く、中でもポップアップストアの展開はとても好評です。

ポップアップストアの様子。


あと、メーカーさんでいうと、技術力があるにもかかわらず若い子向けの企画が思いつかないという事業者さんからのお問い合わせも多いです。

―何か事例はありますか。

多田:印刷や速達の技術をお持ちで、今までBtoBを中心にやっていた会社なのですが、印刷技術をBtoCでも生かしたいということでご相談をいただき、推し活に関係あることとして、弊社でシールを企画しました。推し活で使ううちわに貼るシールです。

多田:デザインにすごくこだわって作りました。ポップアップストアで最初に発売したところ、200枚が1日で完売しました。今は種類を増やしていて、弊社の人気商品のひとつになっています。このように、ユニークな技術があるけれど企画がなかなか思いつかないという企業から喜んでもらうことは多いです。企画からデザイン、そして売るところまで手掛けることができるのが強みだと思っています。

―企業側にも推し活ニーズがある一方で、推し活という言葉が流行れば流行るほど、言葉だけが早歩きしてオタクの方たちが望まない方向に消費されていっているのでは、と思うことがあるのですが、流行りに乗りたいだけの企業からの問い合わせや依頼もあるのでは?

多田:たしかに「オタクのことはわからないけれど自社の商品はオタクの人たちに需要があるのではないか」という企業からの問い合わせは多いです。そこは弊社が需要の背景や、なぜ売れているのかという深い話をしっかり説明し、納得いただいて一緒にお仕事をするようにしています。

―具体的にはどのような説明をされているか、教えていただけますか。

多田:個人的な議論にはなるのですが、なぜオタクがそもそもこんなにお金と時間を使うのか、というところから話は始まります。

―それは、深い話になりそうですね(笑)

多田:はい(笑)。私はそれは、母性や父性に関連すると考えています。例えば100年前の20~30代くらいの世代の女性は、おもに子育てにお金と自分の精神を使っていました。100年で人間の機能は変わっていませんが、社会は大きく変わり、女性は社会進出し、晩婚化もしています。それまでだったら子どもに愛情を注いでいた世代にあたる20代の女性は、現代では仕事や勉強をしている人が多いので、本能的に何かに愛情を注ぐということが抜けて生きている人が多いのではないかと私は思うのです。そこで愛情を注ぐ推しに出会うことで、オタクはお金も時間も精神もかけて推し活をしている。だから推し活は子育てと同じくらい本気な行為なのだと私は考えています。ということを、企業の方に説明しています。

―たしかに多田さんや社員の方々は現在Z世代で、ターゲットも推し活が一般化しているZ世代にあたると思うのですが、5年後10年後、どの世代をターゲットにしていく予定でしょうか。やはり若い社員を入れて、今のZ世代にあたる10~30歳をターゲットとしていくのか、それとも同世代マーケティングとして自分たちと一緒にターゲットの年齢もあげていくのか。どうお考えですか。

多田:私たちの強みは、Z世代であることや若いことではなく、オタクのことを一番理解してすぎることだと思っているので、若さにはこだわりすぎず、好きでいてくださるファンの皆さんと一緒に年を取っていければと思っています。一方で、「好きなものを好きだって言っていいんだよ」というメッセージを若い子にも届けたいという思いも強く持っています。中学生や高校生から、「ほかでは言えないけれど勇気をもらいました」といったような長文のメッセージが来るのですよ。なので、今のお客さまと一緒に年齢を重ねていくと同時に、10代、20代の人たちもずっと大事にしていきたいと考えています。

―最後に、今後の展望や力を入れたい事業などがあれば教えてください。

多田:今「オタク」とか「カワイイ」は日本だけではなく世界で通じる言葉になっていますよね。なので「推し活」もそうなりたいと思っています。今後日本に海外からの観光客がまたたくさん来るようになった時に、弊社の強みでもある「カワイイ」×「オタク」という世界観を外国の方にも届けたいです。実際にインスタも海外のフォロワーさんもいて、中国語や韓国語でコメントをもらうこともあるのですよ。それを見て、今日本で流行っているような「推し活」はまだ海外では当たり前ではないことに気がつきました。なので、私たちにもできることは何かないかなと考え、実際に海外のオタクの方にヒアリングしたり、海外のSNSに進出したりしています。


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