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サッカーが教示する語彙力の必要性【町田ゼルビア黒田監督に学ぶ】

町田ゼルビア旋風

サッカーJリーグにある旋風が巻き起こっている。

黒田剛監督率いる町田ゼルビア旋風だ。

昨年にJ2で優勝を果たし、ついに今シーズンからチーム初のトップディビジョンへの昇格を果たした。

そんな町田ゼルビアがJ1でも首位に立っている(執筆時点)。

そもそもサッカーというスポーツは賭けの対象になるほどに番狂わせが起こりやすいスポーツであるし(昨年降格してしまったが、先日引退した岡崎慎司が在籍したレスター・シティFCのイングリッシュプレミアリーグでの優勝も記憶に新しい)、まだシーズン序盤なので本来驚くほどのことでもないかもしれないが、実際には町田ゼルビアの文字がスポーツニュースやSNSで度々並び、世間を賑わせている。


そこまで世間の耳目を集めている要因の一つに、黒田監督の異色の経歴が挙げられるだろう。

黒田監督は一昨年まで青森山田高校の監督であった。

青森山田高校と言えば選手権を4度も制している全国屈指の強豪だ。

その4度の優勝のうち3度は黒田監督が率いていた(残りの1度は昨年、つまり黒田監督が辞めた直後のものである)。

そんな黒田監督を町田ゼルビアが昨年招聘し、一昨年にJ2で15位だったチームを1年で昇格まで導いたのだ。

高校の先生がプロスポーツで監督となってここまで結果を残すというのは前例のないことである。

普段サッカーに関しては欧州リーグしか見ない私も、そんな町田ゼルビアと黒田監督に興味を抱き、YouTubeでインタビュー映像を見るなどしていたのだが、その中で興味深い話を見つけた。

それはインタビュアーであるレオザフットボール氏からの「サッカーにおいて、試合の中でアイデアを生み出すことができ、かつそのイメージを他者と共有できる選手とできない選手がいる中で、できない選手にどういう指導をしてきたか」という質問に対する答えであった。

回答を要約すると

(イメージが)見えない選手にはとことん見えない。見ろと言っても見えない。見えないということは情報量がない。ボールから目を切って間接視野でもコントロールできる、首を振って360度全てを自分の情報量として持っていられるということが、幼少期から遊びの中でも訓練されていないと、なかなかできるようにならない。

と語っていた。

私は思わず膝を打った。

これは国語にも通ずることなのだ。


読解における基礎体力の不足が招くこと

長年国語を指導していると、急速に力をつけて点数や偏差値にすぐに表れる子もいれば、どれだけやってもなかなか成果が出なかったり、あるいは偏差値が乱高下したりする子もいる。

私はこれを語彙力・音読力の不足が原因であると考えている。

子供たちには常日頃から(特に今は新学期なのでいつも以上に)、国語力には語彙・知識力と論理的思考力があるということを伝えている。

文章読解という実践の舞台は、両者が総合的に試される試合のようなものであり、試合がそうであるのと同様に、ただ文章を読むことを繰り返せば実力がついていくというものではない。

パス・シュート・ドリブルといった基礎技術を練習の中で磨いておくことで、初めて試合で戦えるようになるし、もっといえば筋力・持久力・敏捷性などの基礎体力がなければ練習すら満足には行えない。

ここでいう基礎技術が論理的思考力にあたり、基礎体力が語彙力や音読力にあたる。

論理的思考力は短い子で1年あればそれなり(=公立高校受験を戦える程度)に鍛えることができる。

一方で、語彙に関してはそうはいかない。

残酷なまでに積み重ねがモノをいう。

以前勤めていた塾では受講教科数を選択することができたので、英数を優先して中3になってから初めて国語を追加で受講するという子も多くいた(故の「国語不要論撲滅大作戦」である)。

そういう子の中にごくまれに、以前から国語を受講していた子をサクッと追い抜いていく子がいたのだが、そういう子はおしなべて語彙力があった。

表現力があった。

そして言葉の使い方、言葉選びにとても敏感であった。

語彙力がない子は未知の語彙に遭遇するたびに佇立することを強いられる。

音読がスムーズでない子は、凹凸の激しい悪路を歩まねばならぬことに辟易する。

読解どころではないのだ。

まさにボールをコントロールすることそのものに気を取られて周囲の状況が把握できないサッカー選手のようだ。

そういう子は文章の難易度やジャンルに左右されて国語の偏差値を乱高下させることとなる。


語彙強化、音読強化の必要性

小学生の頃からしっかりと音読に取り組み、語彙力も磨く。

そうしてテクストという道の上に四散する障害を除去し、地ならししておく。

そういう準備があってはじめて、技術の習得が読解に生きるようになる。

語彙の習得に早すぎるということはないので、是非早いうちに実践されたい。

また既に中学生の子も、毎週の語彙テストに向けた毎日音読には一切手を抜かないでほしい。

読む上での負荷を感じなくなることこそが成長の証であるので実感がしづらい部分ではあるが、着実に力はついているはずだ。

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