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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑫

 初任者研修に通いながら、訪問介護(以下ヘルパー)で実践する事は凄く為になった。コンビニという仕事はコンビニの上司に習うだけだが、介護という仕事は、介護を熟知した先生に習うので面白かった。

 勿論、井上さんに聴くとがあったが、自分自身が何が不得意なのかもわからなかった。学校の試験でも何が不得意という分析など自分自身に何が必要という事を考えなかったからかもしれない。

 授業を受けた事で、井上さんに質問が出来るようになった。
 特に介護度が重い高齢者の対応はどうすればいいか?受ける前よりも聴く事ができたのだ。

 僕が担当している利用者さんの中で、1番大変だった。Hさんは介護度が1番重い5であった。

 介護には支援と要介護があり、支援は1、2があり。要介護には1〜5まであった事を授業で習った。


 Hさんは1番介護度が重い要介護5で認知症が激しく、普段はテレビ近くのソファーに座っている事が多かったのだが、時には玄関に倒れていたり、床に倒れていたりした。
 Hさんは生活介助と身体介助。生活介助と言っても、ご飯を作る、清掃が主で身体介助はトイレと入浴介助がメインだった。


 トイレはベッドでオムツ交換をして、入浴は入浴はせずに、身体を濡れたタオルで拭く(以下、清拭)ことだった。
 清拭に関しては、そこまで大変ではなかったのだが、オムツ交換にとても時間がかかった。 
 オムツを交換するときに利用者の方は抵抗したり拒否をする。時には騒がれたりする。
酷いときには、
 「人殺し」
 と言われたり、
 「警察呼ぶよ」
と言われる事があった。


 訪問介護の時間も長くても2時間しか入れないので、時間に追わる。  
 オムツ交換だけではなく、選択、食事の準備などしなければいけない。
 タイミングを変えてチャレンジしてみても駄目な時もある。
 何度かは無理やりオムツ交換をした事もあった。本当は無理矢理なんて交換なんてしたくない。食事も本当はもっと丁寧にやりたい。

 初任者研修で習った事は、あくまで基礎というのは身にしみて分かる。
 初任者研修で言われた介助等はヘルパーや介護士にとっては当たり前に持っているスキルであって、それ以外のスキルを身につけなければならないと。

 食事にしても主婦の人は手際良く作れるし、オムツ交換も長年働いている井上さんは声かけやコツなのを知っている。井上さんは「慣れだよ」と言っていたが、コミュニケーション力や料理も出来ない僕には課題が山盛りだった。

 介護という仕事は極めるの本当に難しいし、深い仕事と言う事をどんどんと痛感する。

介護を本気で変えたいので、色々な人や施設にインタビューをしていきたいので宜しくお願いします。