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経済

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2022年9月の記事一覧

日本の「成長産業」

安倍政権期には名目ベースでも国内総生産や国民所得が1997年と2007年のピークを超えて過去最高を更新したものの、誰もが「日本経済完全復活!」と元気になるような景気の良さは感じられなかった。 技術立国を体現する製造業の国内総生産は1997年→2007年→2018年とピークの水準が徐々に低下している。 「情報通信革命」のはずだが、情報通信業の国内生産はそれほど伸びていない。 1990年代から堅調に伸び続けているのはこの三業種だが、これらの成長が日本経済の「レベルアップ」に

アベノミクスの誤算

安倍政権の「日本再興」が計画通りに進まなかった理由の一つは、日本経済が構造変化を起こしていたために「円安→輸出増→国内生産・内需に波及」が生じなかったことである。 マーカーは2018年9月(リーマンショック)と2011年3月(東日本大震災)だが、世界や主な地域共にその水準を超えていない。 鉱工業生産も盛り上がりを欠いていた。 昨日の記事にも書いたが、「日本の基礎体力の可能性からすれば、決して高すぎる目標ではない」というのが思い違いだったわけである。アベノミクスは年寄りの

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安倍元首相を回想「1人当たりGNIを10年で+150万円」

安倍元首相を追悼する代わりに、2013年6月5日の「成長戦略第3弾スピーチ」で表明した「1人当たり国民総所得を10年で+150万円」を振り返る。 +150万円は年率+3%で達成できるので荒唐無稽な目標だったわけではない。 甘利大臣(当時)の「後半は高い成長」の予想に反して、2013~15年度は目標ペースで成長したものの、2016年度から遅れ始め、2020年度のコロナ危機で完全に脱落といったところである。 3%成長が続かなかったのは、この期間の成長が就業者1人当たり実質G

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為替介入と実質実効為替レート

円買い介入の水準は対ドルでは24年前とほぼ同じだが、実質実効為替レートでは大きく変わったことが見て取れる。 グラフは円の実質実効為替レート(2002年Q1=100)で、橙は円買い、紫は円売りした月を示している(1991年4月以降)。 日本経済は1990年代末~2000年代初頭の構造改革の前後で様々な点が大きく変化しているが、為替介入の水準もその一つで、1990年代には円の底だった水準(グラフの100程度)が2000年代には天井へとひっくり返っている。 今回の円買い介入水

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逆効果だったinternal devaluation

「ドル円はいよいよ1998年8月に付けた147円66銭が視野に入ってきた」が、 実質レートでは1998年8月を大きく下回り、変動相場制移行後の最低水準に達している。 長期的に見ると、円の実質為替レートの減価はexternalよりもinternalのdevaluationの寄与が大きい。2022年7月を1998年8月とを比較すると、名目実効為替レートはわずかに円高だが、実質実効為替レートは4割も円安である。 日本は変動相場制にもかかわらず、external devalua

企業が賃上げしない理由

「企業が賃上げしない理由」については河野龍太郎と見解がほぼ一致する。 バブル崩壊後も賃上げを続ける ↓ 1997年の金融危機後の大不況で固定費負担が重くなる ↓ 債務・設備・雇用の「三つの過剰」の解消後も賃金抑制を続ける ↓ 2008年には世界大不況(リーマンショック) ↓ 2020年には新型コロナ不況 バブル崩壊後も賃上げを続けたことが失敗体験、金融危機から20年以上賃金抑制を続けたことが成功体験として経営者が学習してしまったわけである。これと「将来的なマーケットの縮小

金融ビッグバンの成果

日本経済がこう👇なってしまった理由を知るには、1990年代後半~2000年代前半の改革の論調を振り返るのが役立つ。 その一つ。 経済の仕組みを根底から変える改革は、国際的な投資家(株主)の立場からは成功したと言える。 日本の改革論者の多くがおそらく理解していなかったのは、金融ビッグバンとはグローバル投資家の儲けが多くなるように日本経済の仕組みを作り替えるもので、日本経済の「富国」や日本人の生活水準の上昇に直結するものではなかったことである。 改革論者は「第三の開国」に

デフレマインドではなく縮小マインド

「日本に根付いたこの心理」を金融政策と財政政策で克服可能なデフレマインドだとしたのがリフレ派と積極財政派の誤り。 そうではなく、人口減から来る縮小マインドがその正体で、デフレマインドはそれから派生したもの。 輸入インフレや財政出動でデフレマインドが払拭されても縮小マインドは残り続けるので、積極財政派が描く楽観的なシナリオの実現性は低い。

経常収支と円安

これが円安の一因。 早川氏が指摘する所得収支の内訳の変化(日本企業のジャパン・バッシング、空洞化)には要注意。 ヘッジファンドが指摘する日本銀行のYCCがもう一つの円安要因。