金融ビッグバンの成果

日本経済がこう👇なってしまった理由を知るには、1990年代後半~2000年代前半の改革の論調を振り返るのが役立つ。

その一つ。

私が見るところでは、金融ビッグバンが進行していくなかで、日本経済のこれまでの仕組みは根底から問い直されることになりそうです。ビッグバンは直接には金融市場の改革を目指すものですが、金融市場の変化は、直ちに、全経済界に及ぶからです。
その意味で、ビッグバンは、幕末の黒船来航に始まる明治維新、1945年の敗戦に始まる戦後の大改革に匹敵する改革になると思われます。ビッグバンが「第三の開国」といわれるのも当然かもしれません。

p.30|堺屋太一
太字は引用者

日本の株式市場は、日本が市場経済を採用しているという好都合な外見、日本流にいえば「建前」を提供しています。しかし、外部の株主(投資家)の立場に関していえば、欧米とは違って、企業のコストを削減させ、利益を増大させ、その結果株価を上げさせるといった圧力をかける余地が存在していないのです。

p.33|ターガート・マーフィー
太字は引用者

堺屋さんのおっしゃる通り、日本企業の株主軽視は甚だしいものがあります。株主軽視の最大の現れが、日本企業の収益率が欧米に比べて異常に低いことです。その低さは驚くほどです。
国際的な投資家が投資を決断するとき、企業の収益性が一定のレベルを超えていることが最低の判断基準になります。

p.35|ターガート・マーフィー

経済の仕組みを根底から変える改革は、国際的な投資家(株主)の立場からは成功したと言える。

財務省「法人企業統計調査」
財務省「法人企業統計調査」
財務省「法人企業統計調査」

日本の改革論者の多くがおそらく理解していなかったのは、金融ビッグバンとはグローバル投資家の儲けが多くなるように日本経済の仕組みを作り替えるもので、日本経済の「富国」や日本人の生活水準の上昇に直結するものではなかったことである。

改革論者は「第三の開国」によって日本経済が力強く成長軌道に回帰すると期待していたわけだが、現実に起こったのはかつてのラテンアメリカのようなものだった。

重大な転換の契機は、十八世紀のカルロス三世の改革やブラジルのボンバルの改革である。それは、さらに帝国主義的支配を強化するためのものであった。植民地行政区画の変更や細分化などの行政改革、貿易制度改革、税制改革、新たな財源確保のための産業開発、資本の大規模化と労働雇用の自由化などがその骨子であった。この改革は植民地社会を根底から変えた。帝国支配の強化は、本国の発展のために植民地社会を奉仕させることを意味する。具体的には、生産規模の拡大と生産活動の多角化と効率化による、より効果的な富の収奪である。直接生産者である労働者にとっては隷属的支配の強化となる。こうして支配と被支配の関係がさらに先鋭化し、先住民社会は困窮化と衰退化を進行させていった。その他の社会にあっても、社会格差は拡大し、大衆の社会生活は圧迫された。生産活動の分野では、生産者の管理強化、労働者の過剰収奪が常態化した。鉱山開発産業や輸出産業は発展するが、国内消費向け産業は停滞するという不均衡的発展が促進された。

p.30「帝国主義者たちのラテンアメリカ政策」
太字は引用者

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