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マネー・MMT

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MMTのルーツは新左翼思想
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2023年5月の記事一覧

財政マネタリストが使い続ける相関グラフ

「税は財源ではない」カルトの教祖の一人・中野剛志が、近著の『どうする財源』で例の散布図を引用している。 財政支出でGDPをコントロールできるという「財政マネタリズム」とでも呼ぶべき論である。 このグラフは起点(t=0)とn年後の名目GDP(Y)と一般政府支出(G)の関係が $$ \frac {Y_n}{Y_0}≒\frac {G_n}{G_0} $$ となっていることを示している。これを変形すると $$ Y_n≒\frac {Y_0}{G_0}G_n $$ となる

Debt limitとMMT

アメリカ連邦政府の債務上限引き上げが条件付きの合意に達したことで、6月5日にも起こり得るとされていたデフォルトが回避される見通しとなった。 デフォルトを回避する方策についてステファニー・ケルトンがツイートしていたが、特殊な債券か「1兆ドルプラチナコイン」を発行してドルを調達するというものなので、MMTの基本的主張の「財政支出はその都度の中央銀行の通貨発行によって賄われているので事前の財源調達は不要」と矛盾する。 MMTが下火になってきたのは、インフレ率が跳ね上がったことに

米連邦政府の国庫事情

アメリカ連邦政府の国庫(Treasury general account)だが、当日の支払が前日末の残高を上回る日が増えている。つまり、当日の受入を支払に回す綱渡りの状況である。 徴税や借入によって国庫に入ったドルがそのまま支払に充てられているのだから、税が財政支出の財源になっていることは明らかなのだが、何故か理解できない人がいる。

「税は財源ではない」カルト

それなりの専門性がある人が専門外では異端(トンデモ)にはまってしまう例が一つ増えた。 この👇辺りを学習してしまったのかもしれない。 昨日の記事にも書いたが、「国庫には、無尽蔵にお金がある」のなら、アメリカの債務上限(debt limit)は問題になっていない。「お金を国庫に貯めておいて使う」のは現代でも変わっていない。 国庫にお金を貯めるメインの手段が徴税なのだから、税が財源であることは自明である。 「税は財源ではない」に目覚めてしまった人は、AUMの麻原の空中浮揚写

アメリカ政府のdebt limitと「税は財源ではない」

アメリカ連邦政府の債務上限(debt limit)が引き上げられなければ、6月1日にも国庫が空になって支払不能に陥る可能性が出てきた。 👇がアメリカの国庫Treasury general account(TGA)の残高推移。 「正しい貨幣観」論者が唱える「政府支出は中央銀行の貨幣発行によって賄われている(→税は財源ではない)」なら、支払不能になることは原理的にあり得ないので、このデフォルト危機は「正しい貨幣観」が正しくないことを証明している。 現在の世界標準の財政制度で

中野剛志の貨幣誤論②~租税は財源か

積極財政派が唱える「正しい貨幣観」では、財政運営の順序は「徴税+借入→支出」ではなく「貨幣発行して支出→徴税+借入」で、徴税と借入は財源調達ではなく、市中から過剰な貨幣を吸収してインフレ率を適正に保つための手段だとされている。 政府は中央銀行に貨幣を発行させて支出するので、財源不足のために支出できなくなることは原理的にあり得ないとされる。 👇はステファニー・ケルトンの説明。 「徴税+借入→支出」では、税収では足りない分が借入(財政赤字)で賄われるが、借入金利が高騰すると

「税は財源ではない」論者が知らない事実

昨日の記事の関連だが、「正しい貨幣観」を持っていると自負する論者は現実の制度運営について無知である。 実際はこの通り👇。「税は財源」は「税だけが財源」の意味ではない。 政府が(通貨価値を損なわない範囲で)借り入れできるのは、将来の収入(多くの国では主として税収)によって返済が担保されているから。 「税金は政府の財源ではない」というのは、「売上金は企業の給与支払いの原資ではない」と言うに等しい妄言。

中野剛志の貨幣誤論①~国の財源

中野剛志が近著の『世界インフレと戦争』と『どうする財源』で通貨・財政システムについて独自研究に基づくおかしな説明を続けているので、何回かに分けて検証する。 中野の根本的な誤りは、政府預金口座(国庫)が中央銀行にあること、国庫金が中央銀行が発行するマネー(現代では取引が電子化されているためデータとしてのbook moneyだが、ここでは同等の「現金」と表記する)であることを、この👇ように理解しているところにある。 しかし、ハンコック銀行がハリケーン・カトリーナの被災者にドル