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中学生には難しい?

以前、夏休みの中学生達に、オートファジーについて講演したことがあった。父兄も大勢来られていた。

講演後アンケートの結果を見せて貰うと、ひとりのお母さんがご立腹だった。「先生は中学の教科書をご覧になったことはありますか? 中学生が習っていることを踏まえずに、あんな難しい内容を話されると困ります。」という主旨。

実は私は事前に中学生の理科の教科書に目を通していた。その上で、なるべく専門用語を使わなければ、中学生でも十分理解できるだろうと判断した。オートファジーのことを理解するのに数式などは要らないので。

実際、中学生達のアンケートの答えには「難しくて分からなかった」という感想はなかった。

このお母さんは、勉強というのは積み重ねで、小中高と徐々に知識が増え頭が良くなっていくのだから、いきなりその遙か上のレベルである大学院で研究している難しい話をされても分かるわけが無いと思ったのだろう。

それは思いこみに過ぎない。だいたい、学年が進むにつれて頭が良くなるわけではないし(ずるくはなるかも)、知識は増えるが、そういう知識は今や聞けば即座にAIが教えてくれる。

大人は頭が硬くなっていて、新しいこと・知らないことを聞くと拒絶反応を示し、そんな難しいことわからない、私は文系だから無理などと思ってしまう。子供達の頭はずっと柔軟だ。

阪大には、「めばえ適塾」という科学や研究が大好きな小中学生が集まって、実験したり科学者の講義を聴いたりするプロジェクトがある。https://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~mebae/

そこで講演したときに、担当の先生から「スライドは大学院生向けと同じもので大丈夫です。うちの子らは理解できます。」と言われた。半信半疑だったが、講演して驚いたことに理解しているだけではなく、大学院生顔負けの鋭い質問がばんばん出た。熱気もすごかった。

知識が多いことを「賢い」と言うのは、もうやめたほうがよい。知識は必要だが、クイズ王のように森羅万象について知らなくていい。自分が興味を持ったことについて、調べれば良い。それには中学生にはまだ早いとか、小学生には無理とかいうことはないのだ。

最も大事なことは好奇心。そして次に論理的な思考。科学的に考えること。訓練すれば、誰でもできる。それも特殊な訓練は要らない。3番目に、枠にとらわれない自由な発想。この3つは子供のみならず、大人にも必須だと思う。どんな職業でも。

最近、くだらない会議に出たり雑用をしているより子供達と話をしている方がずっと楽しいことに気付いた。目を輝かせている子供達から、こちらが刺激と元気と場合によっては科学のアイデアを貰える。

これまでも依頼があれば積極的に子供達に講演してきたが、今後はもっとしよう。小学校、中学校、高等学校、あるいはそれ以外の子供達の集まりで。謝礼は不要(遠方の場合は交通費が出るとありがたい)。ただし営利目的の団体主催の場合は、きっちり相場通り頂く。

講演依頼は、当研究室の秘書宛にメールで。jimu@gt.med.osaka-u.ac.jp

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