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「取り急ぎお礼まで」は失礼なのか?

メール文末の「取り急ぎお礼まで」は失礼な言い方ではないか、というツイートをきっかけに、ネット上でちょっとした議論になったことをご存じでしょうか。

きっかけとなったツイートの発信者はIT系の研修講師の方。学生から届いたお礼メールに対して

学生さんからメールを頂きました。最後に「取り急ぎお礼まで」と書いてあり 失礼な言い方だと知らないんだなと思ったけど 言うべきかどうか迷って現在放置中。正解は「略儀ではございますが、まずはメールにてお礼申し上げます」という表現です。

とツイートしたことに対して、賛否両論を巻き起こしているということです。私も今年のクライアント先の新入社員が使っていたメールマナーブックにも、同様な記載があったので、ある程度広まっているルールなのでしょう。

これに対して、日本語学者で、「三省堂国語辞典」の編集委員を務める飯間浩明も議論に加わり、全く問題ない表現であることをおっしゃっています。

ちなみに飯間さんは、以前、「了解しました」がNGで、「承知しました」がOKという議論に対しても、「了解しました」で問題ない旨を主張されました。

ただ、飯間さんの努力むなしく、「了解しました」が失礼で「承知しました」という言い方にしましょうというのは、実際に新人研修で使われるテキストによく掲載されています。

目立つことを恐れ、無難な方に寄せていく若い人達を中心に、「取り急ぎお礼まで」=失礼というマナーも広まっていく可能性があります。

今の時代、形式的なものではなく、より実質的なものを求めるようになっていると思います。脱ハンコもその流れの一つでしょう。研修で教えるマナーにおいても、例えば、10年前であれば、バックパックタイプの鞄はNGと伝えていましたが、今では、ビジネスシーンで、バックパックタイプの合理性が好まれ浸透していったことを受けて、研修でもバックパックがNGということは伝えなくなりました。

私自身、合理性の欠くルールを減らし、形式的なことではなく、実質的なことで評価されるという流れは望ましいと思います。逆に、この表現が失礼というルールを増やすのは、反対です。

ちなみに、「了解」が失礼というマナーは、2011年に出版されたビジネスメールに関する書籍が発端となっとており、それ以前は特段問題となっておりませんでした。このあたりご興味のある方は、こちらのサイトに経緯が掲載されています。

私一人の影響力はたかが知れていますが、それでも、研修講師として、日々若いビジネスパーソンに対して、縛りを増やすのではなく、若い人達がこころの自由を感じながら、より本質的なことに注力できる、そんな関わりをしたいなと思いました。

皆さんが相手に示しているルールは、裏付けがありますか?
それは相手の行動を必要以上に縛っていないでしょうか?

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