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第3章〜川越少年刑務所編 第1犯〜分セン一階 恐怖の「さかもっちゃん」

★まず最初に、トプ画の刑務官は物語に関係ありません★

どこの世界にも人に恐怖心を抱かせる奴がいる。
特に刑務所のような特殊な環境では恐怖心に特大のバイアスがかかる

こんなところで強がっていてもしょうがないので正直に書くが、僕が感じた分類センターの一番の目的は分類ではなく恐怖支配だった。
そしてその支配に順応し、問題を起こさずに過ごすことが、仮釈放への一番の近道と分かった。

そしてその恐怖支配一発目となった刑務官(オヤジ)が、主題にある「さかもっちゃん」だ。
本名なのか知らんけど「坂本先生」と呼ばれていた。
自分を担当する刑務官に対しての呼称は「先生」「オヤジ」で統一されている。
さかもっちゃんの場合オヤジっていうとブチギレるのでみんな先生と呼んでいた。

分類センターは一般的に「分舎」と呼ばれる4階建の建物。
1、2階は分類前期の2週間を過ごす囚人の生活空間、3、4階は分類後期の囚人の生活空間である。
その1階部分の独裁者がさかもっちゃんである。

洗礼は初日に行われた。
入所して分舎1階に整列させられた何十人もの新米受刑者。その新米に刑務所内での基本中の基本を叩き込むさかもっちゃん。
まずは整列だ。小学生の時にやった隊列訓練を8万倍キビキビさせた動きを要求される。
そして挙手やら返事やらを何度も何度も繰り返し練習させられる。
ちょっとでもミスしようものなら罵声を浴びせられる。
仮に全員が完璧にできたターンがあったとしても終了ではない。当のさかもっちゃんが納得するまで続けさせられるわけだ。

受刑者にも優秀な奴と平均的な奴とダメな奴がいるわけだが、ダメな奴はどこの刑務所でも「モタ」と呼ばれている。
このモタがミスるたびに連帯責任としてその場にいる全員が同じことを何度もやらされる
ちゃんとやってる奴らの足を引っ張るわけだから、当然怒りの矛先はモタに向けられる。
こーゆーのからイジメに発展して自殺した奴も何人か見たが、それは後のお話で。

分類前期は仕事も自分の舎房内で行う。
基本的に川越の冬は寒い。暖房なんてあるわけがない。ハッキリ言って死ねるレベルの寒さだ。
なのでほとんどの受刑者は霜焼けと戦っている。
オレも両手両足はカビで変色したクリームパンみたいになった。
オカンは面会でオレのカビクリームパンを見て号泣していたが一緒に来た彼女は爆笑していた。

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【概ねこんな感じの時間割なのだが、分類前期の間は運動も作業も自室で行う】

そんなこんなでこの霜焼けをどうにかしたいと思って医務診察などの願い出をしたいとさかもっちゃんにお願いするが、全く取り合ってくれない
何ならティッシュすらもくれない。鼻水は手でかんで水道で手洗いをしろ、という習わしみたい。
※ここで一つ注意なのだが、刑務所内では「ティッシュ」という言葉は使用を禁止されている。「ちり紙(ちりし)」と言わないと怒鳴られる。

今思うとあれは本当にティッシュなのか?と疑うほどの低クオリティだったな。

あと、「掃夫(そうふ)」と呼ばれる受刑者がいるのだが、こいつらは受刑者の世話をするエリート戦士達だ。
当然分類センターにも戦力投入されているわけだから、我々分類生の世話も業務の一環だ。
で、こうつらがとにかく腹立つんです。なんかもう、とにかく腹の立つ奴らでした。
先輩受刑者がこんな奴らばっかりだったら分類後は地獄だろうなとちょっと思った。

そんなこんなでおんなじ事の繰り返しのみの分類前期も終わりを迎え、次なるステージである分類後期に突入していく。

【後日談】
この洗礼の時のさかもっちゃんは最初怖かったのだが、オレが正式に配属された後に会った時はめっちゃいい奴になってた。
きっと新米受刑者に刑務所の厳しさを叩き込む事に熱心だっただけなのだろう。

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