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14人の、14色の生き方

「友がみな我よりえらく見える日は①」

久しぶりに、小説の感想文を書いてみる。

これはノンフィクションで、計14人の人生を
描いた作品。

以前、小説を買うときの決め手として、裏表紙
にかかれてある、あらすじを基準にすると
書いたが、この作品に限っては、タイトルに
目を惹かれて半ば衝動的に買ってしまった。

というのも、私が21歳の頃だったと記憶して
いるが、謂わゆる「心を病んでいる」状態で
それこそ神仏にすがりたいぐらいの気持ちで
いたときに、フラッと立ち寄った本屋で見か
けたという経緯がある。

自分だけが人生の底辺に居て、他の誰もが、
健全な心身で人生を歩んでいるように見えた。

作品の中には、例えばホームレス同然の生活を
続け、妻子からも捨てられた芥川賞作家とか、
アパートの5階から墜落し、両目を失明した
市役所職員。

その容貌ゆえに46年間、一度も男性と交際した
ことのない独身OLなど、おそらく誰しもが
心に秘めている劣等感にさいなまされ、深く
傷付いたことは有るだろうが、そんなとき、
どのように自尊心を取り戻すのかというある種
新しいタイプのノンフィクションだ。

と、あらすじには書いてある。

結論から言えば、当時、若干21歳なりに、もう
生きることに疲れた。

何をやっても上手くはいかない。

まさに「友がみな、我よりえらく見えていた」
頃だった。

私自身の人生の、今がまさに底辺だと感じていた
ときに読んだこの作品に私は救われた。

それは単に、自分よりはるかに厳しく苦しい
状況下で生きている人がいると知って、自分は
まだマシだと思えたからだった。

年月が経ち、私なりに人生経験を重ねた今、
読んでみると、全く違う視点から物事が見えた
ことに驚いた。

当時は、謂わば卑下した登場人物たちに対し、
今になって、今もなお人生の決して下層空間
から抜け出せたとは感じられないにも関わらず、登場人物たちに、卑下とは全く逆の感情を
抱いた。

21歳当時は、表面的な感受だけに留まったが、
彼らの人生観を読み取れるようになり、内面を
覗くと、深く、広く感じた。

その、悲壮だが決して後ろ向きでない14人の
エピソードを、ネタバレが過ぎない程度に、
紹介し知っていただきたく思う。

コロナ禍やロシア軍のウクライナ侵攻など、
総体的に「心が病んでいる」ご時世だから
こそ、知ってもらいたいという気持ちです。

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