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BBC報道、ジャニー氏を「捕食者」と表現し少年への性的虐待を批判


BBC報道、ジャニー氏を「捕食者」と表現し少年への性的虐待を批判

 日本の芸能界に対して深刻な疑念が日本国内外から寄せられている。英国公共放送BBCが2019年に亡くなった故ジャニー喜多川氏(享年87)がジャニーズ事務所に所属するジャニーズジュニアたちに対する性加害について全世界で報道している。なんとそのドキュメンタリーのタイトル(題名)は『Predator: The Secret Scandal of J-POP』(J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル)とのことで、ネットやSNSを中心に注目を集めている。

 しかし、日本のメディアやマスコミは現時点(3月18日)では全く報道しておらず、日本の芸能界の隠蔽体質や事なかれ主義など、この問題の根深さを物語っている。


3月7日英国内で、3月18日18時ワールド版で1時間の「ジャニー氏の性加害告発」ドキュメンタリー放送へ

 3月7日に英国国営放送のBBCが「BBC two」(日本のNHKのEテレにあたる知的・教養番組のチャンネルでゴールデンタイムの時間にとあるドキュメンタリーが放送された。

 その番組のタイトルは、『Predator: The Secret Scandal of J-POP』(J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル)というものであった。それは、ジャニー喜多川氏に関するスキャンダルを告発するという内容のドキュメンタリーだ。ジャニー氏といえば、大人気男性アイドル事務所「ジャニーズ」の創業者で、J-POPの生みの親とも言うべきカリスマ的存在で国内で名声をとどろかせてきたが、2019年に87歳でこの世を去った。

 しかもその告発内容というのが、ジャニー喜多川氏が当時所属していたジャニーズ・ジュニアたちに性的な虐待行為をしていたのだ、というのだから天地がひっくり返るかのごとき内容である。

 そのドキュメンタリでは、元ジャニーズの4人が証言者として登場し、どのような被害にあったのかや、ジャニー氏の自宅とされる「合宿所」などでの出来事などの当時の詳細を生々しく語っており、終始衝撃的な内容でおぞましささえ感じさせた。また、一部の被害者は顔出しで当時の体験を詳細に語っていて、その真実味を感じさせる。

 このドキュメンタリーは英国人ジャーナリストのモビン・アザー氏が制作し、日英にルーツをもつという、メグミ・インマン氏がプロデューサーを務めた。

同調圧力や周囲からのプレッシャーで「性的虐待」から逃げられない少年たち

番組の中では、3人の証言者「ハヤシ(仮名)」さんと「リュウ」さんと「レン」さんが、顔出しで出演している。

その中で、当時15歳であったという「ハヤシ」さんはジャニー氏について「すごく優しい」印象だったと語る。しかし、その後「ハヤシ」さんは緊張した様子で、「合宿所」というジャニー氏の自宅で起きたことを語り始める。

「しばらくして、ジャニーさんに『お風呂に入っておいでよ』と言われました。そして(喜多川氏に)全身を洗われました、お人形さんみたいに」と、ハヤシ氏は話した。

(BBCニュース:加害が明るみに……それでも崇拝され 日本ポップス界の「捕食者」https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-64832492)より引用

 その後、「ハヤシ」さんは動揺した様子で性的な行為を強要されたと語っている。

 また「ハヤシ」さんは別の機会にもそういう行為を受けたことを明かしている。また、そうして行為が行われているということは他の少年たちの間でも暗黙の了解だったと証言する。

「何人かに『これを我慢しないと売れないから』と(言われた)。僕の周りでそれが嫌で辞めるって人はいなかった。合宿所にはジャニーさんしか大人はいませんでしたし、相談できる環境もありませんでした」 

上記BBC記事より引用)

 閉鎖的な空間や周囲の大人からのプレッシャーなどによる同調圧力の中で、そうせざるを得ない状況にあったという。「ハヤシ」さんはジャニー氏に対して「売れている人に限って言えば、感謝の気持ちはいっぱいあると思うが、それと性犯罪は別だと思う」と指摘する。

 同様のケースは1999年の週刊文春の報道でも見られた。そこでは10代で性的虐待を受けたというアイドル志願者10名以上が証言している。中には12歳で被害を受けた少年もいた。やはり、彼らの多くも「合宿所」で被害にあっていたという。

「性加害」を受け入れてしまう被害者たちの存在

 また別の元「ジュニア」の少年も取材に応じている。「リュウ」さんは2002年からジャニーズ事務所に所属し10年間バックダンサーとして在籍したという。彼の証言によれば当時彼は16歳でジャニー氏は70代だったという。

「(喜多川氏の家で)寝室の方に行ったときに、ジャニーさんが来て、『最近すごい忙しいだろうから、マッサージしてあげるよ』という感じでマッサージしてもらいました。肩からどんどん下の方にいったという感じでした。ある一定のところまでいって、もうそろそろ度を超えそうだなと思ったので、『もうこれ以上はだめだよ』というふうに言って。『ああ、ごめんね、ごめんね』って、ジャニーさんは別の部屋に行ったんです」

(前述のBBCの記事より)

と当時のことを語る。ところが、彼はジャニー氏を非難する気はないそうだ。彼は、ジャニー氏のことは嫌いではなくむしろ好きで、お世話になったことや愛をもって接してもらえたと感じたからだという。

 3人目の証言者「レン」さんはジャニー氏が亡くなる2019年まで事務所に所属していた。「レン」さんの証言からは「芸能界の貧しい人につけこむ搾取の構図」という側面も浮き彫りになる。

「まず、ジャニーズ事務所から連絡が来たことに対して、(母親は)感動して泣いてましたね。(家族は)こんなに(お金が)もらえるんだって思っていましたね。裕福ではなかったです。本当に夢のような時間というか、信じられなかった」(同上のBBC記事)

「レン」さんも特段ジャニー氏を非難する気はないという。彼は「性的な接待行為」は必要悪なのではないかという認識だ。

「ジャニーさんのセクハラ疑惑については、僕は正直めっちゃ悪いとは思わないんですね。受け入れちゃってる時点で、そういううわさが回っている。これがあれば売れるとか。(そういう気持ちが)ちょっとはあると思うので、そこはどっちも責められないかなと僕は思います」 (同上のBBC記事)

「少し我慢すれば成功できる」でいいのか?

 この構図は女優と監督などの間の「枕営業」や「性加害」の問題に似ている。「利益を得るには多少の犠牲はしょうがない」というような意識が被害者の間に広がっているということだろう。

 ましてや、世間ではジャニー氏はカリスマ的な存在だ。誰もそんな噂を正面から向き合おうとはしないだろうということで、声をあげようとしても上げられないのだ。

 こういった行為について、本人がよければそれでいいのだ、という意見もあるかもしれないが、こうした行為の積み重ねがほかにも犠牲者を出したり、加害者の行為をエスカレートさせてしまう。そういう意味で、社会のためにもこういった行為を許すべきではない。

 3人の証言は極めて詳細なもので、おおよそ偽りのものだとは信じがたいものだ。これらの内容がBBCで報じられた際にはジャニーズの影響力が強い日本だけでなく韓国や中国、東南アジアの国でも反響があったという。

これまでの「ジャニー氏性加害」報道の経緯

 ここで、今回の性加害疑惑に関する報道の流れとジャニーズの動きを振り返っておきたい。またこれまでのメディア・マスコミの報じ方についても触れておきたい。

 ジャニー氏の「性加害」疑惑は1964年から報道されていた!?

 そもそも「ジャニー氏の性加害」の疑いが世の中に初めて出たのは実はかなり前で、1964年の新芸能学院とジャニーズ事務所の授業料トラブルを巡る裁判が発端であるという。  

 ジャニーズ事務所の初代タレント「ジャニーズ」は、はじめ新芸能学院という芸能人の育成スクールでダンスや歌を学んでいたが、マネージャーのような存在だったジャニー氏とともにそこから独立した。これに対して新芸能学院の学院長は所属中の授業料とスタジオ使用料などを要求し東京地裁に提訴した。単なる金銭を巡る裁判だったが、ジャニー氏の性的嗜好をめぐる問題がマスコミに報じられ、そちらに世間の注目が集まった。

 ジャニーズとともにレッスンを受けていた者がジャニー氏の男性へのセクハラを暴露し、なんとジャニー氏が他の男性に対してセクハラ行為をしていたと述べた。

 裁判の中で学院側の弁護士から「ジャニーズ」メンバー4人は皆それについて「記憶がない」や「知らない」と否定した。しかし、数年後に「ジャニーズ」のメンバーの1人は自らの著書の中で嘘をついていたと明かしており、セクハラ行為は事実だった可能性が高い。

 そうして、ジャニー氏への告発はあったものの証拠はなく曖昧になってしまった。また、当時は現在のように同性愛やLGBTQなどの性的少数者といったものが世間にほとんど受け入れられていない時代であったので、かつ当時はまだ男性から男性に対する性的加害行為が取り締まりの対象ではなかったことから、こうした話題はマスコミの間でタブー視されていたこともあり、この話題は数年もすると、世間に忘れ去られてしまった。

1999年以降の週刊文春のジャニー氏「性加害」批判キャンペーンも、大手マスコミはガン無視

 その後ジャニー氏はジャニーズ事務所の育成やマネジメントに辣腕をふるい巨大芸能プロダクションの一角になっていくわけだが、SMAPやTOKIOが登場し、今日の国民的スターもそろってくる1990年代の終わりに、ジャニー氏に今でいう「文春砲」が炸裂する。

 1999年、週刊文春がジャニー氏の少年に対する性的虐待に関する報道を始める。当時の特集のうちのタイトルの1つは「ジャニーズの少年たちが『悪夢の館』で強いられる”行為”」とセンセーショナルなもので、そこから数回にわたり特集が組まれ、実際に性的被害にあったアイドルを目指した少年たちの証言やそうした行為が行われた「合宿所」の見取り図さえも報じられた。

 こうして週刊文春は報道したが、テレビや新聞など大手マスコミやその他のメディアは門前払いのあり様であった。

文春VSジャニー氏泥沼裁判、も意外な結果に…

 そうして孤軍奮闘の文春を抑え込もうとばかりに、1999年11月になると、週刊文春の出版元である文藝春秋をジャニーズ事務所とジャニー氏が名誉棄損で訴えたのだ。

 訴訟の詳細についてここでは扱わないが、主な争点は

①男性間のセクハラ行為の有無 ②未成年への飲酒・喫煙の強要 ③事務所によるマスコミにおける万引き報道のもみ消し ④事務所のタレントへのパワハラ ⑤給与面での嫌がらせ ⑥ファンクラブの劣悪な運営 ⑦マスコミのジャニーズ報道の自主規制

であった。週刊文春によれば2003年7月の1審の東京地裁では④から⑦までが認められ、①から③まで(ジャニー氏の性加害報道を含む)のものについては真実性や真実相当性を棄却し、計880万円の賠償を文春側に命じた。

 当然この判決に対して納得しなかった双方は控訴し、2003年7月の東京高裁は一転して①を認めた(ただし②と③の真実性・真実相当性は棄却)。結果、高裁はジャニー氏側へ計120万円支払うことを文春側に命じた。

 その後、ジャニー氏側はこれも不服として、上告したものの最高裁は高裁判決を支持し、2004年に判決が確定する。

 すなわち、民事訴訟に関していえば、事実確認に関するプロであり公の機関である裁判所が、①の「ジャニー氏の性加害」に関して事実であると認めたのである。

 当然、テレビ局や新聞などの日本の大手マスメディア・マスコミ各社はこの裁判の結果を速報で報じたが、先に述べた裁判所の「ジャニー氏の性加害」に関する事実の認定だけは切り取られて報道された。結果、「文春がジャニーズ事務所に敗訴」したということだけが報じられ、世間の人々はこのことを知るよしもなかった。一方で、海外の新聞社には性加害について報じる社もあった。日本と世界の境界にはまるで情報を遮断する「万里の長城」があるが如く。


続き「日本のマスコミはジャニーズ事務所の広報宣伝部門か?…」は赤羽プリンシパルタイムズHPより
・元SMAPメンバーへのジャニーズ事務所のマスコミ各社への圧力問題
・日本のマスコミの構造問題
・ジャニー喜多川氏の死とこの問題
などについて扱っています。続きが気になる方は以下のリンクからどうぞ。


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