#高安動脈炎闘病記 7
7.初耳学
「高安動脈炎?」
初めて聞く病気の名前だ。病気の名前ってことだけはすぐにわかった。
ただ残念ながら高安と言われると茨城県出身田子の浦部屋所属の高安関しか浮かばない。
失礼だが、毛むくじゃらで愛らしい見た目から高安関のことを本当は熊だと思っている。
そんなことを考えていると、先生がなにかの書類を手渡してきた。
「国指定難病、珍しい病気です。」
ほーん、難病ね。
既にクローン病の診断を受けていたこともあり、しかも今のところこっちは薬を飲むことでほぼ影響は出ていないことから、そんなに重く受け止めていなかった。
実際のところは、これが結構厄介な病気なのだ。
通常、心不全というのは1〜2ヶ月で急に悪くなるものではなく、徐々に年単位で変化が出るらしい。それがこの数ヶ月間で不調を訴えるものだから、これはおかしいぞとこの病気を疑ったそうだ。
「それで先生、どうすればいいんですか?」
僕の問いに先生が答える。
「今はまだ、疑いという状態です。ここから数日でいくつか検査を受けてもらいます」
検査ね、はいはい。
この10日あまりで色んな検査を受けたこともあり、感覚が麻痺していた。1番きついだろうと思っていた経食道心エコーも気づいたら終わっていた。大丈夫だ、問題ない。
さあ、どんな検査があるんでしょうか。と待ち構えていると、同意書を2枚渡された。
心臓カテーテル検査とPET/CTとある。
PET/CTは知ってる、ガンの検査とかでやるやつだ。人間ドックのオプションとかでやる高いやつだ。
ただ、心臓カテーテル検査、これはなんだろう。聞くと手首(橈骨)と首からカテーテルを刺し、血管に心臓までカテーテルを通して検査をするとのこと。
麻酔はなく、差し込み口の痛み止めだけが投与される。無論、意識はバチバチにある状態。
所要時間は30分くらいとのこと。
いや、拷問じゃね?
中世の折檻でしょそんなの。
数日後、心臓カテーテル検査を受けた。
血管の狭窄があり、通りが悪かったため結局2時間近くその時間は続いた。
半年経った今も創傷痕は残っている。
右腕と頚部細い管が通るその感覚は消えない。
多分、一生消えない。
数日後、正式に高安動脈炎の診断が下りた。
病名を告げられてから何度か、病気について調べた。
全国で5,000人程度の患者がいて、9割が35歳以下の若い女性。男性の症例も増えてきている原因不明の病気。
正直、マンガみたいだなって思った。
全国民で5,000人で、そのうち1割が男だからえーっと、500人で、じゃあ確率で言うと
考えるのをやめた。
というか、今考えてもしょうがない。
妙に物分かりが良い僕は、一旦この病気のことを忘れ、再び今の状態を手術に向けて良くすることに集中した。