高尾歳時記 2024年2月7日
先日2月4日は、二十四節気の立春。暦の上では、春を迎えました。
子供のころ、年賀状に「迎春」や「新春」とあったり、梅の花のイラストがあったりすることに、違和感を感じていました。クリスマスから一週間ほどなので、梅も春も見たり感じたりすることはなかったからです。
本年の立春2月4日は、太陰太陽暦、いわゆる旧暦では12月25日。今年の旧暦のお正月、すなわち1月1日は、2月10日です。昔は、今週の土曜日がお正月だったんですね。ちなみに、去年(2023年)の旧暦のお正月は1月22日、一昨年(2022年)は2月1日でした。
旧暦のお正月は太陽暦では一定しませんが、概ね1月末前後におさまります。だいたい梅の開花の時期と一致するので、年賀状にはその絵が描かれていたのですね。そうはいっても、過去3年間で1月22日から2月10日までずれがあるのですから、かなりアバウトです。
「旧暦のほうが日本人の季節感に合っている」というような言説をたまに耳にしますが、全くの勘違いです。月と太陽の動きをもとにする旧暦は、太陽暦(グレゴリオ暦)を使用している現代の我々にとって、季節感がずれることがけっこうあります。閏月が入る年は特に顕著です。旧暦を使用していた我々の祖先も当然それはわかっていて、太陽の動きに基づく二十四節気を使って四季の移り変わりをとらえていました。
暦では春ですといわれても、実感がわかないかもしれません。ですが立春の頃から、里は徐々に、そして確かに、春めいてきます。ところが、一昨日から昨日にかけて、東京は街中でも積もるほどの降雪でした。
忠臣蔵で描かれた赤穂浪士の討ち入りは、雪積もる吉良邸のイメージがありますよね。その決行は元禄15年12月14日とされていますが、これは旧暦です。もちろん東京で12月に雪が降ることもありますが、極めて稀です。ましてや、積もるほどの降雪になることはそうないでしょう。季節感を理解するためには、太陽暦を調べないといけません。太陽暦にもとづく赤穂浪士の討ち入りの日は、1703年1月30日。立春のころです。
冬の日本列島は西高東低の気圧配置となる日が続きます。このとき、日本海から流れ込む湿った空気は、本州中心に横たわる高い山脈にぶつかり大雪を降らせた後、乾いた空気となって関東地方に吹き下ろします。その結果、特に南関東は空気がカラッと乾き、どこまでも青く晴れ渡る空を伴う好天が続きます。
このパターンが崩れるのが立春を過ぎたあたりで、日本列島の南側を低気圧(南岸低気圧)が通過するようになり、晴れ雨晴れ雨という天候サイクルが徐々に戻ってきます。このときに発達した低気圧が通過すると、関東地方に寒気を持ち込むことで降雪になることがあります。事実、東京で雪が降る日が一番多いのは2月です。
この天候のサイクルの戻りが、まさに春を告げる使者なのです。白銀の高尾に行ってきました。
参考資料
「暖冬こそ「ドカ雪」に注意【令和の大雪のメカニズムと対策】」、TBSラジオHP、2024年2月5日
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?