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高尾歳時記 2023年10月1日(日)

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天気:曇り一時小雨
気温:22.5℃(高尾山山頂 12:00)
人出:混雑
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セイタカアワダチソウ

稲垣栄洋静岡大学教授著「面白すぎて時間を忘れる 雑草のふしぎ」(三笠書房)に、セイタカアワダチソウについて、おもしろい記述があります。全て引くと長くなってしまうので、以下に要旨をまとめます。

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海外からやってくる植物には強そうなイメージがあるが、実際はそれほどでもない。多くの外来植物にとって、日本は不慣れな場所であり、生き残ることは難しい。それでも、日本に定着するものがある。

日本に定着した外来種で最も有名なもののひとつは、セイタカアワダチソウであろう。第二次世界大戦後、アメリカから輸入された物資に種子が混入し、高度成長期、国内の物流の発達にともない、全国に広がった。

古来、日本の秋の原風景はススキ野や、野の花がポツポツ咲く枯れ野であった。これを、セイタカアワダチソウは黄色一色で全て染めあげてしまう。

この、日本の原風景をがらりと変えてしまうほどの鮮やかなひとり勝ちには理由がある。セイタカアワダチソウは根から毒性のある物質を分泌しており、その毒で、まわりの植物を駆逐してしまったのである。

ところが、あれほど猛威を振るったセイタカアワダチソウは、現在すっかり衰退してしまった。

衰退の原因は、「自家中毒」にあったといわれる。他の競争相手がいる間は、毒は強力な武器であった。しかし競争相手がいなくなると、その毒で、自らも被害を受けるようになってしまったのである。
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そして、その顛末は本書をご覧いただければと思いますが、私はセイタカアワダチソウで真っ黄色に染まった野原を見たことは(少なくとも記憶には)ありません。ですが、一時期は深刻な問題となったようで、国立環境研究所のHPによれば、「日本の侵略的外来種ワースト100指定種…外来生物法で要注意外来生物に指定された」とのよし。なんだかとっても恐ろしそうです。もとい、こんにち、少なくとも高尾ではほかの植物とうまくやっているように見えますけどね。

稲垣教授によれば、これは、自然界ではひとり勝ちは許されないという例なのだそう。

高尾では、セイタカアワダチソウはほかの植物とうまくやっているように見えます。

植物が自己防衛のために昆虫や動物の接触を防いだり、他の植物の繁殖を抑制したり、逆に自身にとって有益なものをおびきよせるためになんらかの物質を放出することを、アレロパシー(Allelopathy)と呼ぶそうです。

なんでもやりすぎはいけないということなのでしょう。自然界には、サーモスタットのようにやりすぎいきすぎを制御する仕組みが色々あること(例のひとつは、食物連鎖)は学校などで教わりましたが、こんなところにもあるんだ、と興味深く読みました。人間社会にも示唆があるような気がしますね…。

先週末は秋の訪れをはっきりと感じることができる、涼しく爽やかな天気になりました。今週末、気温はそれほど高くはなかったのですが、空はぐずつき、湿度が高く、蒸し蒸しした空気で流れる汗を拭いながらの山行になりました。

植物に関していえば、高尾の秋は確実に深まっています。今日も花の多いところをぐるりとめぐってきました。

秋の花、ツユクサは盛りを迎えています。ふもとから山中まで、あちこちでみかけました。
ユウガギクもピークを迎えています。小仏川遊歩道にて。
キンミズヒキもピーク。高尾のみならず、南関東の野山では、この時期ごく一般的に観察できます。
ハグロソウは終盤を迎えています。先週より明らかに数が減りました。
ツリフネソウはまさにピークです。ふもとから山中まで、あちこちで見られます。くるっとまるまった距がかわいい。
ヒガンバナもピーク。文字通りあちこちでみかけました。小仏川遊歩道にて。
イヌタデは里山のみならず、都会の公園などでも普通に見かけます。秋を告げる花です。小仏川遊歩道にて。
キバナアサギリ。こちらも秋の花。個体数は比較的多い。
先週見なかった、アキノウナギツカミのつぼみが。見かけはミゾソバそっくりなのですが、葉っぱが笹の葉のような形なので区別は容易です。
こちらがミゾソバ。葉っぱが、基部が広がったトランプのスペードのような形をしているので、アキノウナギツカミと区別できます。
今年は、蛇滝のシュウカイドウが稀に見る不作でした。8月から9月にかけて降雨が極端に少なく、イワタバコの葉も乾いて溶けてしまっている姿を多く見かけました。来年が心配です。
黄葉した葉を見つけました。高尾は年々紅葉の時期が後ろ倒しになってきているような気がします。まだ山中の木々は青々としています。
ツルボは個体数が多く、この時期里山を中心に観察できます。
ゲンノショウコも盛りを迎えています。
こちらはゲンノショウコそっくりですが、ミツバフウロ。花を見るだけでは区別はほどんどつきません。一番大きな違いは花軸の毛の量が違うのと(ゲンノショウコは開出毛、ミツバフウロは伏毛)、ミツバフウロは地面に近い葉が、ゲンノショウコと違い五裂せず、三裂であること。 ミツバフウロには、花柄や萼片の外側に開出毛があるタカオフウロと呼ばれる品種もあります。 ゲンノショウコとミツバフウロ(と、品種まで突き詰めるならタカオフウロ)は、かなりの数を見て相当見慣れていないと同定は極めて難しい。
アズマヤマアザミ。
花頭は斜上または真上に開花し、総苞は円筒形ないしは狭筒形。総苞片は短く直立。
レモンエゴマ。
このレモンエゴマを高尾山で採取した牧野富太郎博士が、ちぎるとレモンのような香りがすることから命名したとされます。
(食用にはむかないとのことです)
イヌショウマがあちこちで開花していました。
ヤマハッカ。葉っぱがハッカに似ているのでそう名付けられたみたいです。ハッカの香りはしません。
ハナタデ。沢沿いなど、涼しく湿ったところで大量に咲いています。
あっ、これは珍しい!ジャコウソウですね!
上高地では何度も見たことがありますが、高尾で見つけるのは難しい。ラッキーです!
今年はクサボタンの花をあちこちで見かけます。豊作です。
ノハラアザミ。高尾ではもっともよく見かけるアザミのひとつ。 総苞片の突起が短いのがノハラアザミ。 長いのがトネアザミ(タイアザミ)。
こちらがトネアザミ(タイアザミ)。トネアザミも、高尾ではもっともよく見かけるアザミのひとつ。でも、よく見ないとノハラアザミとの区別はできません。
ナンテンハギは、高尾では最初に咲くマメ科の花です。
ツリガネニンジンもピークを迎えています。高尾では比較的個体数は多い。
シロヨメナの花がたくさん咲き始めています。高尾では個体数の非常に多い花です。
本日あちこちでシモバシラの花を見かけました。ピークを迎えつつあります。
高尾山山頂に到着。本日稜線は雲に包まれて、遠景は望めませんでした。

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