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心に刺さったことば。



少し前にライターの先輩が「これが胸に刺さった」とおっしゃっていた「ステートメント宣言」。「コピーライターだけじゃなくて、この世にいる文章を書くすべての人のために」書かれた本です。

教わった10秒後くらいにアマゾンでポチる。

蔵書の大部分は読まれないまま積み上がっていますが、この本は文体も読みやすく、今の私にとって大事なことが書いてある感じがして、すぐ手に取りました。
正直、コピーライターと編集記事のライターは表現方法が違うだろうし、広告も純広告と呼ばれるものとタイアップは別だろうし、「ライター」と言えども幅広い。ですが、何となくそういう枠を超えた「心意気」が書いてありました。


【何でもいい。でも何でもいいわけじゃない】

著者は岡本欣也さんというコピーライターさん。代表作はたくさんあり、私が見聞きした記憶があるのはGODIVAの「日本は、義理チョコをやめよう」とか「大人たばこ養成講座」とかでしょうか。ただご本人も書かれていましたが、糸井重里さんのような「作者が前に出るコピー」がもてはやされた時代は終わり、現在は匿名性の高いライターが多く、共作だったりもあるそうで。


なので、最近はコピーライターの名前が先に出る広告はあまりないらしい。


そんな中、今、この瞬間、どうやってコピーを考えているか。考えるべきか。の集大成。
たくさんの章があって、言いたいことも多角的なのですが、私の心に刺さったいろいろ。

【言葉は、つくるのではなく見つけなさい-岡本さんの師匠の岩崎俊一さんの言葉】

あ、これ。
これですよ。

なんか、かっこよく書こうとしたり、賢そうに見せたくてまとめようとすると「どんどん現実からかけ離れていく」。その最悪なものが「世間一般的な美辞麗句を並べただけのよそ行きの顔をしたホームページ」であると認識できる文章もありましたが。

表現を考えるとか、おしゃれに書くとか、そういうことの前にやることがある。
対象物をよく見る。
何でもいいから質問する。
相手が考えなければ答えられないような質問ができたらラッキー。
本当のことは意外とすぐそばにある。目の前どころか、足元に。だから一生懸命かがんでみないと見えないのです。


それを見つけ、掘り起こし、拾い上げ、手の中に入れてから丹念に磨き上げるわけです。


【真実をついた言葉はオールターゲットに刺さる】

よくペルソナが、とかいろいろ聞かされて、その人向けに書きましょうなんて話になりますが。

その会社や商品の魅力をどんどん掘り下げて解体していくと、足元にあつ「たった一つの真実」みたいなものが見えてきて。それは「あったかいご飯があれば幸せ」「その幸せのために食だけを頑張る」みたいなそういう姿勢だったりする(これは永谷園のコンセプトだったか。どんなにバブルが盛り上がろうと異業種参入しなかった姿勢から)。要素を減らし、人類みんなに共通するようなシンプルなことばに落とし込むと、もう「男性とか女性とか年齢とか関係なく、すべての人に刺さる」ことばになるらしい。

へえ。

だから、誰々向けにとか考えず、たった一人の人に向けて書くくらいの姿勢で書くべきだと。

【だから自分の足元を見つめるらしい】


で、その「たった一つの真実」が何かを探る時、対象とするのは自分。「本当のところ、自分はどう思っているのか」みたいなステージまで昇華し、自分が社会に対して、自分に対して「気がつかないうちに」被っている化けの皮を剥がせたら勝ち。

人は自分にさえ嘘をつく。
ほんとはどう思っているのか。


いいのか、悪いのか。欲しいのか、欲しくないのか。
自分の心の奥底の本音を探すことが一番大切。

その声を拾い上げることができたなら、「本心から絞り出したことばなら、何だっていい。相手に届けばどんな形でもどんなことばでも」。けれど、「本心じゃなくて、紋切り型のセリフを固めただけの形だけのことばなら、いらない」
だから、ことばは、何でもいいけど、何でもいいわけじゃない。

【無駄は楽しい。楽しいことはきっと正義】

最近の私。


「こういう風に書けば形になる」というセオリーは身についたし、取材の時に緊張もしなくなったし、質問は何でもいい、とりあえず相手から話を引き出せればどんなアプローチでもいい、どこに自分がときめいて、何にワクワクしたかを覚えていれば、そこを突破口にして文章を書ける。


そんな「経験則から来た外面の繕いかた」を覚えた私は、形を整えることばかりに意識がいっておりました。

しかしどうもそうじゃない。

本気で考えて、本気でぶつかる人達は「形よりもまずは真実」を大事にしているし、どうもそういう人は「滅多なことでは意見を曲げない」。
なぜなら自分の足元にある「たった一つの真実」をベースにしているので、真実だと思っていることは簡単に変えられない。むしろそっちが折れて、と提案してくるわけです。

私はそんな「本当のこと」がゴロゴロ転がっている世界の中で、ふわふわと「紋切り型のことばを毛糸で編んだような、見た目ちょっと可愛いけど実は中身のない」文章を書いているのではないかという不安と恐怖にかられるのでした。
こわい。


が、すべてのことは回り回って自分の糧になるしかないという、よくわからないポジティブ精神も持ち合わせているので。

「もういい年になり、昔みたいに上司から怒られて記事全変更という指示もあまりなく、本当にこれでいいのか不安だけどなんか通っちゃう」みたいな感じで心根がたるんでいくのは怖いですし、これはいい機会なのだなと。

「直すべき赤字」があると「こう直せばいいのか!」とむしろハッとして、ワクワクしていたあの感覚(でも原稿チェックされてる時の圧力は好きじゃない)。
次から、頑張ろう。

取材のたびに本音を探り、真実を探り、ことばを探そう。


…と思うだけ、今は思っています。

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地方の出版社を経てフリーの編集ライターとして活動しています。
○ライターの仕事を続けるには
○単価アップを叶えるには
○そもそもライターってどんな仕事?
○編集の視点とライターの視点の違い
などについて、自分なりの解釈をしていきたいと思っています。


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