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備忘録 ピピー!

結婚して2回目の秋を迎えた。
相変わらず、月に1回は家の空気が泥のように重くなり、
そのたびに泣きながら一人で夜ご飯を食べることもあったけど
慣れとは怖いもので、それを除けば結婚生活は順調だった。

そして、社会人4年目はそこそこ忙しい

そのころわたしは連日残業で、外でご飯を済ますことが続いた。

「今日も遅くなりそう。ご飯は食べてくる‼」
「了解。あんまり無理しないでね。」

11時過ぎに帰宅すると、旦那は珍しく先に寝ていた。
わたしがお風呂に入っている時、ドコッという鈍い音が聞こえた。
もしかしてベッドから落ちたのかもしれない。
旦那も疲れているんだろう。

寝室に入ったら、ベッド下にスマホが落ちていた。
さっきの音はこれか、と思いながら電気を消すも、スマホの画面はなかなか消灯しない。
もう、と思いながら手を伸ばして唖然とした。
画面にはモザイクのかかった、しかし女の子であることはわかる、顔写真がずらっと並んでいたのだ。
一気に血の気が引いて心臓がどくどく速くなる。
なにかはわからないが、温室で育ったわたしなりの危機管理能力がグルグルグルと動いている感がある。

これは、なんだ?どうやら何かのアプリであることは間違いなさそうだ。
おやおや、パンドラの箱を開けてしまったか~~~などと俯瞰している自分がいた。
むやみに画面を押すのはよくないと冷静に判断をしながらも、
各種SNSと同じフォーメーションで画面下に並ぶ人型のアイコンが、
おそらくホーム画面やらマイページだろうということだけはわかった。

旅先で、わたしが撮った写真にスタンプを貼ったアイコン、
偽名を使った旦那の自己紹介文が表示された。

これは、、、、マッチングアプリというやつか?
マッチングアプリ全盛の前に付き合い、結婚をしたため、
この類の知識が皆無だった。無知は恐ろしい。
翌日も仕事のため、ひとまず寝ることにした。
画面は消さずに裏返して。

「おはよう。昨日寝るの早かったね。疲れてた?」
「君が帰ってきたの気づかなかった、、、寝落ちしてたわ」

会社まで約40分の電車の中、必死で調べた。
「マッチングアプリ 旦那 」
関連には 浮気 の文字。
浮気なんてあいつに限ってありえない。絶対しなさそう。
そう言われるような人だし、わたしもそう思っていた。
いまや誰もがアプリを入れている時代なのだろうか。
これが普通で、わたしの価値観が違うのかもしれない。

会社に着くと仕事が待っている。
アプリを見つけたからといってくよくよしている暇なんてない。
そして帰りの電車でもひたすら調べた。
出てくるのは 浮気の疑い ばかりだったが、
とりあえず帰ったら2人分のご飯を作らないといけない。

「ただいま」
「お帰り、もうちょっとでご飯できるよ」



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