見出し画像

なぜ集中している人に話しかけてはダメ?

メチャクチャ集中しているときに平然と話しかけてくる人って、正直ちょっと、、、お付き合いご遠慮いただきたいですよね。
謝りながら話しかけてくる分には しゃあねぇな とも思うけど、とりわけホント悪びれる気配とかサラサラない人。
この人いろいろ大丈夫かなって心配にすらなります。

ですがよく考えたら、集中してるときに話しかけられるのって、なんであんなに腹立つんでしょうか。

ちょっと時間を割いて、終わったらまた集中しなおせばいいだけのはずです。
時間的な欠損はその間だけで、その前後まで邪魔されているわけじゃないんです。

なのになぜ、膨大な何かを奪われたかのような錯覚を覚えるんでしょう??

皆さん、こんにちは。
もしくは初めて見てくださった方、ありがとうございます。

私はIT業界で最初は新人として働いていたはずが、気がつくといつの間にか新人じゃなくなっていた悲しい運命のエンジニア・中島です。
この 絶対バグらないシステム作ろうぜの会 では、バグの出ないシステム、またはトラブルを起こさないチーム運営を作っていくために大切なことなどを、なるだけ面白く読めるように執筆していく趣旨となっております。

今回は、人の集中状態を妨害することが、具体的にどれくらい問題なのか、について。

1. そもそも集中状態とは: ノルアドレナリンを制御中の状態のこと

人間において集中状態とはどういうもので、集中していないときと比べて具体的に何が違うのでしょうか。

子供の頃、私も皆さんも集中という行為を意識的するはなく、楽しいといつの間にかやっているもの、くらいの感覚だったんじゃないでしょうか。
ですが社会人になって職場で仕事をするようになると、脳の中にまるで やる気スイッチ だかなんだかがあって、それがパチンと切り替わるかのような錯覚を覚え始めます。
しかも世の中にはこのスイッチが割と素早く切り替わる人と、もやっと徐々に切り替わっていく人とがいて、なおかつ、この2つの人種は互いにほとんど相容れません。

この感覚、いったいなんなのでしょうか。

答えから言ってしまうと、この やる気スイッチ の正体は脳内に分泌されるノルアドレナリンという物質です。
皆さん、名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。
心の状態を制御する機能があり、主に “不安感”と “ワクワク感” を制御します。

ノルアドレナリンが脳内に分泌されると、その分泌理由により不安感またはワクワク感のどちらかが起こり、それによって行動を促す。
そういう物質です。
ですから やる気スイッチ が押された状態とは、実際のところはノルアドレナリンが分泌され続けている状態のことを指すんです。

このとき、ノルアドレナリン濃度がやや高めで、かつちょうどいい値を巧くキープしている状態を “集中状態” といいます。

濃度がうまく上がらないのが “集中できない状態” もしくは “鬱状態”、
逆に高まりすぎていると、その理由により “過集中状態” または “不安状態” のどちらかとなります。

今回は、集中状態とは何かの定義として、ノルアドレナリン濃度を基準に置くことが話のポイントとなります。

2. ノルアドレナリン濃度はコントロールするのに労力がいる

ノルアドレナリンは脳内のデータ上の概念ではなく、実際に容積を持った液体です。
ですから、一瞬で高まったり下がったりすることはありません。
世の中には集中状態に一瞬で入れる人もたまにはいるのかもしれませんが、普通は不可能です。

これは、100メートル走の素人は、プロ選手と比べてトップスピードに達するまでに時間がかかるものであり、かつプロであろうとこれを0秒にはできないのと同じ理由です。
ノルアドレナリン濃度のコントロールを完全に0秒で行うのは、物理的に不可能なのです。
ただ、訓練で0に近づけていくことができるだけです。

世の中に、集中状態にすぐ入れる人と、巧く入れない人がいるのはそういう理由です。

3. ノルアドレナリン濃度のコントロールが苦手な人達

最近は、その濃度コントロールが苦手な人達が当初思われていたよりも多いことが社会問題となっていて、ニュースでもよく取り上げられます。

この濃度コントロールを不得手とする病気のことを、一般に “ADHD” といいます。
また病気レベルではなくても、ややそういう性格傾向がある人のことは “なんとなくADHDっぽい人” なんて呼んだりもしますね。

このADHDは、通常は物事に集中できず気が散ってしまう病気であると説明されますが、厳密にはちょっと違うんです。
ノルアドレナリンを適切な濃度に保てない病気のことです。

濃度が低いときは何をやってもなかなか上がらない一方、逆に上がるときは簡単にホイッと異常値を超えてしまう
ADHDはそういう病気です。
そして通常多くの患者は、その両方の状態を交互に繰り返すのが一般的です。

ゆえにADHDは常にパニクっている人達だけでなく色々なパターンがあるし、数限りないバリエーションが考えられることにもなります。

  • 濃度が上がるのは早いが下がりにくい人(頑張りすぎ型)

  • 濃度が上がりにくい人(毎日へとへと型)

  • 濃度がそもそも上がらない人(無気力型)

  • 濃度が常に乱高下を繰り返す人(ジキルとハイド型)

  • 興味を持っている物事に対してのみ濃度が上がる人(職人気質型)

ちなみに余談: 過集中について
一般にADHD患者やその家族は、鬱状態だけを問題視していて、過集中状態を “病気ではない” と認識する傾向があるのだそうです。
過集中状態は、表面的には物事により深く集中し、熱心に取り組むことができているように見えるからです。
ですが実際フタを開けてみると、ミスの連発で周りに迷惑をかけている例が多く、過集中はやっぱり病気だと認識した方がよさそうです。

世のネット記事のADHDに対する関心をみるだけでも、“適切に集中する” という行為が人間にとってどれだけ難しいのか、またはそれを簡単にやってのけるのがどれだけ天才的なことなのか分かろうというものです。

ノルアドレナリンという物質は分泌(=脳内での物理移動)に時間がかかるものであって、物質が2点間をテレポーテーションのように一瞬で移動することはありません。
ゆえに、ADHD傾向が限りなく0の人はいても、この完全に0というおはありえないことになります。

ですから全ての人は、集中状態に入る(または抜ける)のに時間がかるものであって、個人差はその時間の長さに現れます。

もし、集中状態に入るのが得意で、できないってことを全く理解できない人がいたら、そういう人は集中が苦手な人達とのコミュニケーションを一切絶った方がいいでしょう。
それがお互いのためだし、無理な強要はただの迷惑行為・言葉の暴力でしかありません。

4. より深い集中状態は、入るのに長い時間がかかる

エンジニアに限らず、専門職はだいたい頭を使います。
手順が複雑で難しく、それに伴って集中力も高くなければいけないからです。
集中力が十分に高まっていなければ、その複雑な手順を正確に追いかけることができず、ちょっとした周辺ノイズで簡単にミスをしてしまうかもしれないのです。

たとえば、一般職の場合は、集中度50で十分にいい仕事ができると仮定します。

だとすると世の中の多くの専門職は、集中度50では仕事になりません。
もちろん業務内容によるのですが、専門職の業務は80とか100とか必要なわけです。
低い集中度でもできる仕事なら、そもそも世の中から専門職と呼ばれたりしません。

できる人がそれだけ少ないから専門職なのであって、だから専門職というのは手順が複雑で、高い集中度を求められるものなのです。

ちなみに余談2: “総務” は一般職?
通常、総務の担当者は一般職に分類されますが、当記事内では専門職の方に数えて話をしています。総務はマネジメント業務のノウハウを習熟した人だけができる高度な仕事であって、新人にいきなり任せて簡単にできるものではないからです。
総務が専門職である証拠に、大部分の皆さん、総務課が何をやってるのかの具体的な想像ができないでしょ?

必然的に専門職の人達は、一般職と比べて集中状態に入るまでに時間がかかることになります。
場合によっては、最高潮に達するまでに30分・45分、あるいはそれ以上の時間が必要なこともあります。
集中状態に入るのに45分かかる人があなたに話しかけられた場合、あなたにとってはたった1分でも、その人にとっては45分のロスなわけです。

また中には、集中状態に入れるまでの時間が毎日安定せず、日によって5分だったり2時間だったりする人もいます。
とりわけそういう人は、“集中が途切れることそれ自体を怖がる” ケースが多いです。
なぜなら一度でも途切れると、次にいつ集中状態に入れるか自分でも予想がつかないからです。

以前勤めていた会社では、そういうタイプのエンジニアにもドンドンガンガン話しかけていくストロングスタイルの人が結構いて、“エンジニアに話しかけるときはちょっと遠慮しようね” という趣旨の勉強会すら開かれたほどでした。(正直あんま効果なかったけどね、、、)
もし、集中している人に話しかけても大きな問題はないし、話が終わったらまた集中してもらえばいいだけだと思っている人がもしいれば、そういう人はエンジニアからは空気の読めない問題社員と認識されている可能性が高いです。

もちろん、だからって遠慮しすぎもそれはそれで問題なのですけど、要は程度の問題ってこと。

5. ノルアドレナリン濃度の上昇・降下速度の鍛え方

もしあなたが、普段から集中状態に入りづらく、話しかけられるとすぐ途切れちゃう、なんて悩んでいるなら、訓練方法が知りたいですよね。
ここでは私が知っているものを3つほど紹介します。

1. 食事療法によるもの

人間の集中力は、性格的なADHD傾向と不可分なわけですから、従ってADHDの食事療法と似た食事療法が健康な人でも使えます。

たとえば集中状態に入れはするけどすぐに切れてしまう系統の人は、普段から血糖値が不安定であることが関係している可能性があります。
ですので、朝昼晩の食事の時間を毎日必ず同じにしたり、あるいはビタミンB鉄分を取ると、血糖値が安定して集中力が高まるかもしれません。

それからそもそも集中力が上がりにくい人は、ノルアドレナリンのコントロールを助けると言われているDHAナイアシンをとるといいんじゃないでしょうか。

2. 瞑想

食事療法と比べると多少ハードルが高いものの、慣れれば短い時間で高い効果を出せるようになる方法です。
瞑想というと、坊さんがパッチン棒で人の頭叩いてるイメージしかない人もいるかもしれませんが、ここでいう瞑想はアレじゃなくて、単にそういう精神集中法のことです。
別に鎌倉のお寺さんにわざわざ行かなくても、自分の机に座ったまますぐできます。

ざっくりしたやり方としては、瞑想とはようするに何も考えないようにすることではあります。
けどそれを言うと、「何も考えないということは、何も考えないことを意識している状態であって、厳密には何も考えないことは不可能だ」なんて疑問が浮かんできます。

そうじゃなくて、どうやっても止めることができない部分を除いてそれ以外の思考を止めるイメージです。
物理的に脳を止めたら死んでしまいますので、全部止めてはむしろダメです。(当たり前)

この、何も考えないようにするという行為は、身の回りにある音に耳を澄ます行為によく似ています。
自然の音、周囲の人達が歩く足音、外の自動車の音、風の音、時計が出すチクタク音など、自分以外の音に集中することによって、考え事をするのを止めるイメージです。

また、とりわけ長く取り組んでいる趣味がある人は、何かを惰性だけでやっているときに、実は瞑想に近い精神状態になっていることもあります。
そういう趣味がある人は試してみるといいでしょう。

これができるようになると、リラックスを意識してやることによって、集中状態にも意図的に入ることができるようになります。
なぜなら、リラックス直後は自分自身の集中状態をコントロールしやすくなるからです。

3. 目標管理の練習

何ごともそうですが、何かに集中するのが苦手な人は、目標の自己管理が苦手な傾向があります。
「あなたは何のためにこの仕事をするの?」と聞かれると、たとえば「お金のため」とか「将来のため」といった壮大な答えを返してしまいがちな人です。

じゃなくて、それはあなたが会社勤めをしている理由であって、目の前に今ある仕事を今やる理由じゃないですよね?

  • 今のうちにがんばっておかないと、締め切りに間に合わなかったらみんなガッカリするから

  • 残り日数的に、もう明日じゃ間に合わないから

  • 今日中にできれば上司からの評価が上がるから

とかとか、あるいは単に「やれと言われたから」だったりします。

今日のお仕事それ自体は、巡り巡って最終的にお給料に変わるだけで、目の前の仕事それ自体は直接お金を得るためのものではないはずです。

これも当たり前ですが、人間は集中する理由がないと集中できない生き物です。
また集中する理由を意図的に作ることも、気が散る理由を排除するのとは全く別物だったりします。
ですから人間は、気が散る理由が一切なく、周りが凄いシーンとしている場所であっても、集中する理由がない(=集中すべきと自分で納得できていない)仕事には集中できないものなんです。

ですから “今日をがんばる” ためには、“今日をがんばる理由” が必要なのであって、それは毎日同じじゃダメなんです。

目標管理とは、お金や将来のためという壮大な目標を、日々の小さな努力に落とし込むための方法論の総称です。
ですのでそのスキルを身に着けることによって、集中力を高めることはできるってなワケです。

6. 鍛え方があるということは、できない人にはできないということ

ここでは集中力の鍛え方を3つほど紹介しましたが、いずれも生まれもった性格に関わらず、訓練すれば誰にでもできるものです。
(文章量の関係で、具体的なところがピンと来なかった人はいるかもしれませんが、それは練習手段がないことを示すものではありません)

ただし、この “誰でもできる” には大きな落とし穴があります。

練習すれば誰にでもできるってことは、練習しなきゃ誰にもできないってことです。
やってみせて、言って聞かせてさせてみて、褒めて伸ばしてあげるならまだしも、できない人に「やれ」と言っていきなりできるわけじゃないし、あなたが「光あれ」と言っても光は現れません。

集中するのが苦手で、それでも一生懸命がんばって集中してんのに、いきなり話しかけて作業効率を落とされて、しかも作業効率を落としたこと自体も叱られる――。
もし仮にそんな上司がいたら、がんばって集中してる側からすれば、意図的に邪魔して言いがかりをつけて評価を落としたように見えると思いませんか?

集中している人に話しかけるとき慎重にならないといけない理由は、そういうところにあるんじゃないかなと、私なんかは思うわけです。

ではまた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?