『光る君へ』で見えてきた字幕のもう1つの活用方法【スタッフnote】

はじめまして。precogが運営する「THEATRE for ALL」のWEB管理や広報を担当しているシミズです。「劇場体験に、アクセシビリティを」をミッションに配信作品や記事を公開しています。

私は子どもの頃から歴史好きな上に、学生時代には平安時代の文学を学びました。『源氏物語』を学びたくて国文学科に進み、卒論の題材にも選んだ『源氏』マニアなので、今年の大河ドラマ『光る君へ』は見逃せない作品です。大河史上ちょっと異色な作品、さてどうなるんだろう？と私も思っていたのですが、始まってみれば台本も演出も、もちろん役者陣も素晴らしく、楽しく視聴しています。皆さんはいかがですか？

「じもく」ということばから感じたこと

さて、だらだらと自分の好きなものを語ろうとしているのではありません。『光る君へ』を見ながら、アクセシビリティについて思ったことがあるんです。

この作品には「じもく」ということばがよく出てきます。漢字で書くと「除目」です。平安文学をやった身には知っていて当然のことばなのですが、音で聞いてパッと漢字が浮かぶ人の割合ってどのくらいだろう？と思ったのです。武士が登場するタイプの大河ドラマだとほとんど出てきた記憶がない。現に、ほぼ毎年大河ドラマを見ている私の父もわからなかったようでしたから。

「しょう」ということばもよく出てきますよね。音だけだと「ん？今なんて言った？」となりがちだと思うのですが、「妾」と漢字が充てられれば何のことだかわかる人もいるはず。表意文字としての漢字は実に便利なものだなと改めて思います。

字幕はみんながそれぞれに活用できるツール

テレビの字幕をオンにすると「除目」「妾」と漢字で表記されます。そうすればスマホで調べるのも簡単です。

テレビやYouTubeのような動画配信で字幕をオンにして見る機会が皆さんにもあると思います。私自身も、電車の中など音を出せない状況や、歳を重ねたせいで音が聞こえにくいときなど、利用する機会が増えています。

それに加えて「ことばの意味を早く理解するため」という活用方法が『光る君へ』で見えてきたわけです。平安時代のことばは現代語とは大きく違い、ある意味外国語のようなもの。英語の映画を日本語字幕で見るような感覚で、テレビの字幕を活用する方が意外といらっしゃるのではないでしょうか。字幕というツールは、聴覚障害のある方だけではなく、誰もが活用し、楽しみを享受し得るツールなんだなと思います。

新しい「バリアフリー字幕」がどんどん生まれている

THEATRE for ALLの配信では主に2種類の字幕がつけられています。

「字幕」と呼んでいるものは、話している言葉の内容と話者名を日本語もしくは英語などの言語で表したもの。テレビ等につけられているのがこのタイプの字幕です。

そして、「バリアフリー字幕」は、話している言葉の内容と話者名に加えて、音楽・効果音などの音情報を文字にした字幕です。

昨年のEPADさんとの企画では、劇場の臨場感がより伝わるような工夫を凝らしたアクセシビリティ版がいくつも配信されているのですが、特にSNS等で話題になったのが『わが星』という演劇作品。バリアフリー字幕版にはセリフだけでなく、音楽のリズムも表示されるんです。こちらは無料でご覧いただけるので、ぜひ見てみてくださいね！

わが星 ままごと | THEATRE for ALL

文：清水恩（THEATRE for ALL事業部／WEBマスター／プロジェクトアシスタント）

高校・大学と親しんだモダンダンスとの類似点からウェディング業界へ。フリーランスのウェディングプランナーとして活動しながら、2021年4月にprecogに入社し、現在はTHEATRE for ALLのWEB管理・広報を担当。

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株式会社precog（プリコグ）は、芸術祭、映画祭、演劇・ダンス公演、スクール事業など、舞台芸術をはじめとする、さまざまなアートプロジェクトの企画・運営を手がける制作会社です。近年では、アートと福祉の取り組みにも力を入れ、芸術に関する新たな事業の開発にも取り組んでいます。

【スタッフnote】では、仕事を通して得た新たな気付きや知見の数々、プロジェクトにかける想いをお届けしていきます。

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