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女性のためのヨガの教科書15

太陽礼拝/月礼拝


上半身を使う太陽礼拝
下半身を使う月礼拝

センターに集中する太陽礼拝
サイドの流れをよくする月礼拝

朝の太陽礼拝
夜の月礼拝

男性的な太陽礼拝
女性的な月礼拝

集中/活性の太陽礼拝
バランス/落ち着きの月礼拝

区別をするならそんな風に捉えられるかも知れません。

もともとあった太陽礼拝を補うものとして考えられたのが月礼拝です。
誰が考えたのか、数千年前にはすでに存在していたと考えられていますが、
現代の太陽礼拝のシークエンスも実際には1900年以降の比較的新しいものだと思います。

一時は女性のヨガ行は禁止とされていて、女人禁制、男性のみの修行とされていて、
ほとんどのそう言ったものの場合、女性の存在そのものが男性修行者の気を散らしてしまうからと言った理由です。
「不浄」や「下賤」、などの物言いは、
それだけ魅力的で、徹底的に貶めるような印象を与えないと、
それでもそっちに走ってしまう者が後を絶たないからでしょうよ。

宗教や文化的習慣が厳しく生活に根付いている地域ほど、
社会的に本当にそう思い込んでしまって、
女性蔑視や、虐待、時には犯罪などが横行している実態は許すまじきもの。
大して修行もしていないくせに、
本当に真実を掴めていない半端者のくせに、
勘違いするなよ、ともっとしっかり声をあげましょう。

はい、話逸れましたが、

太陽礼拝そのものは、
チベットなどで行われる五体投地に似ていると思っています。
派生は多分山岳信仰でしょう。
ヒマラヤは世界一標高の高い、
海底から10000m近くも隆起した、
未だ前人未到の地、まだ地図にも載っていないような渓谷や滝や洞窟など、
衛生写真からではわからないような深い自然、いや、規模的には畏怖を感じるレベルの桁違いの、多分絶対に人間のものにはできない世界です。

山を崇めるというのは、ヨーロッパのアルピニズムにはなくて、
日本やアジア諸国、またはシベリア、アラスカなどの同じ民族としてのルーツを辿れる地域独特の信仰です。

「神」という存在を感じざるを得ない、
いわゆる本当の「神域」、
そこに近づくために、
いきなり近づいては高山病にも事故にもなり得ますから、
途方も無い意志と精神力と時間と体力と、純粋な信仰を持ってしか行かせないためのものだったのかもしれません。

その動きは、地面に伏せ、上体を持ち上げて、上に、前に向かって行く背骨を縦に動かす、
エネルギーを「締める」動きです。

動くことで不必要な体力を消耗しないよう、
高地で酸素不足にならないよう、
身体はエネルギーをロックするためのバンダを用いて筋肉や関節に過剰に負担をかけないように扱い、呼吸もまた喉のバンダを使って効率よく全身に血液と酸素を巡らせるためのウジャイー呼吸が用いられます。

最近海より山に興味のある私ですが、
ヨガってもしくは山登りの為の修行かもしれないと思ったりもするわけです。

神に近いところに出来るだけ近づいて、
そこで神を感じられるよう座って瞑想するための。。。。

私は、Suchitrita Deviという聖名を拝受しているのですが、
それを授けてくださったのが、女性で初めてカイラス山での修行を認められた、
アルタ先生とラリタ先生の姉妹師匠です。
15年以上前、日本に来てくださったことがあるのですよ。
今は現地まで行かないとお会い出来ませんが、
一度はヒマラヤの聖地で座ってみたい。

太陽礼拝の動きそのものは、
妊娠中や生理中は腹部を圧迫されるので、キツいですし、
手を床について前や後ろにジャンプする動きも、
「女性向き」かと言ったらそうではありません。
やりすぎることで上半身がタイトになりすぎるからか、
女性ホルモンのバランスが乱れて、
生理が止まってしまた話は以前よく相談されました。

20年前くらいには正しい知識も経験者も日本にはほぼなくて、
その割にはいきなり流行ってしまって、
皆、太陽礼拝を一生懸命やったのですよ。
本当「修行」みたいな感じで(笑)

日本人は真面目なので、
無理してでも頑張ってやり遂げようとするのですが、
当時日本在住で友人だったオーストラリア人のセーラは、
「太陽礼拝って前に言ったり後ろに行ったりで全然楽しくないし気持ちよくない、
ゆったりした気持ちになりたくてもならない、私には合ってない、だからやらない」
とはっきり言っていました。

そして気功をやり始めたらしかったのですが、
ある日、「ねえ聞いて。ヨガしている時と同じライフスタイルで、
食べるものも運動量も同じなのに、私気功やり始めてからどんどん身体が大きくなっていくのよ、なんでなのかわかる?」と相談されたことがありました。
その時はそういうものなんだ、と思っていたし、
声で気を扱うオペラ歌手や、エナジーワークに従事しているような方って大抵恰幅が良くて、
それでバランスを取っているのかなって思っていました。
大きなエネルギーに見合った大きな身体。

多分太陽礼拝は、身体が大きくならないように締めるための要素が意図的に含まれていると思いますよ。間違いなくエナジー量はアップしますし、ぎゅっと締めて引き上げて凝縮するので、ほとんどの男性は性欲が高まり、結構そこらへんで苦労するようです。

伝統的にはオジャスをテジャスに昇華するなんて言います。

性エネルギーを外に使わずに、
自分のエネルギーとして温存させることです。

女性の性欲は、外的要因というよりは内的なホルモンバランスでほぼ決まりますから、
太陽礼拝をやる時期、やらない時期は意図的に分けると良いのかもしれないですね。
ただ1日何時間もやり込むような方は少ないと思いますから、
それほど気にしなくても大丈夫でしょう。

もしかしたら男性女性分け隔てなくヨガを行っていたらしい古代では、
男性は太陽礼拝を、女性は月礼拝を行うものと決められていたのかもしれません。

太陽礼拝の中で、
「乙女ジャンプ」とからかわれるのが、
思い切り真上に飛び上がれず、
ヨイショって感じでちょっとしか飛べないジャンプです。
手に体重をかけることで、
脚をまっすぐ伸ばせずに、
膝を曲げてしまうから、
力が弱く遠心力もかからないため、フワッと飛べないんです。

犬でもウサギでもチーターでも、
飛ぶ時の後脚はしっかり伸びています。
蹴る力、すなわち脚の力です。

結局どんな姿勢だろうが、
足を使って体の中心に力を引き上げて使うことは変わりません。

でも気持ちが怖いから飛べないんです。
飛んだ瞬間、手のひら全体にしっかりと体重を掛けられないから思い切り飛べないんです。
人間は土台が安定していなければエネルギーを広げられない生き物。

が、その怖さを「乙女」と揶揄うのはちょっと。
勇気のない男性を「女みたい」と揶揄するのも、令和の今は完全にアウトですよね。

逆を言えば、正面から行こうとするまっすぐさがあれば恐怖心も生まれるもの、
女性は正攻法で真っ直ぐチャレンジする潔さを身に付けるなら、
ぜひ太陽礼拝ですね。
A,B,C,D, ありますから、
「飛ばない」スタイルを選択しても良いでしょう。

実際意を決して思い切り飛んで飛び過ぎて前に転んだり、
腕の力で支えきれずに顔面から落ちる場面を何度も見てきました。
一度怖いと思ったことに対して、
それに抗ってリラックスしながら行えるところまで持っていくのは難しいですよね。
ただそこも意味があるとは思います。

ジャンプはハンドスタンドの練習になります。
アームバランスの練習にもなります。

飛ぶ瞬間に脚を内側に引き寄せて、
力を内に集中させないといけません。
その瞬間的な潔さも大事です。

だから要らない訳ではないですが、
「どうなりたい?」と自分に尋ねたときに、
飛びたいのか、地に足をつけたいのか、
エネルギーバランスで選択できれば良いと思います。

太陽礼拝はアシュタンガヨガ式と、
シヴァナンダヨガ式に分かれますが、
どちらもマットを縦に使います。


月礼拝も人によって幾つかのヴァリエーションがありますが、
マットを横に敷いて、左右に移動しながら、
新月、下弦、満月、上弦、新月、と月の周期をマットの上で行うイメージです。

主に股関節や腋など、
大きな血管や神経のある場所を伸ばし緩め、
上半身より下半身をしっかり使っていくシークエンスです。
生理中でも、腹部を圧迫せず、下半身の血行を促進するので、
私はむしろお薦めかなと思っております。

逆にダウンドッグも軽い逆転ですし、
腹部に圧が掛かることの多い太陽礼拝的な動きは、
生理中には極々自然にしたくなくなりました。

したくなければやらなくていい。
自分の身体の声を聴いて、
その時々で自分のベストな選択ができることの方が、
毎日同じことをやり抜くよりも女性には大切なのかもしれません。

年末恒例の108回太陽礼拝。
毎年やる方はすごい。
私はもう全然やる気が起きませんけど…
50という年齢は、
同じ動きを繰り返すことで得られるメリットより、
関節や組織へのダメージを考えないといけない年齢ですから。

108回月礼拝って多分これからも絶対出てこないと思います。
なんとなく達成とか目標とか、そういう類のものではないからです。

月そのものの在り方として、
(地球から見える姿は)
常に変化していて、月そのものは光っていなくて、
太陽のように不動の強さや他を照らす輝き、みたいなエネルギーではないから。
太陽が表向きの思考や感情を表すのに対して、
月は秘めた想いや隠された願望、
潜在的な感情や思考です。
バランスが取れていれば、
内側で満足すれば、
数をこなす必要はないのです。

それぞれ好みはありますし、
コンディションも違う私たち女性の選択肢として、
どういった目的で、どんな自分になりたいのか、
それに合わせて、太陽礼拝、月礼拝、
それぞれ選んでやれれば良いと思います。

ヨガインストラクター歴は18年。既に成人した息子をシングルマザーとして育ててきた経験から、ヨガを軸に、女性の生き方、医療でカバーできない健康のこと、などを発信していきます。