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逆噴射小説大賞参加作品(2018〜2020)

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逆噴射小説大賞への投稿作品です
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#逆噴射小説大賞2020

-VS EATER-

-VS EATER-

 パリ、夜の裏路地。カレーライスと八宝菜が手足をバタつかせ、捕食者に悲痛な抵抗を示していた。

 「アァ、ウマイ、こんなご馳走にありつける日がまた来るなんて……」
 「存分に味わえ、これは本来ヒトに許された当然の権利だからな」
 「頭が無くなる!助けて!」

 哀れな被食者にがぶりつくのは薄汚い男女二名、その後ろで黒服男が一人見守る。哀れな被食者の頭部は今に平らげられようとしていた。

 「肉断ち

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千二百年の墓暴き

千二百年の墓暴き

 それまでイズはエネヴィア団長にこの上ない敬愛を抱いていた。孤児であったイズを拾い育てた親で、己も属する守護団の長。その団長にイズは今、曲剣を突き付けられ床に跪かされている。

 「か、母様?何のご冗談です?」
 「ここでは団長と呼びな。今日はお前に昔話をしに来たのさ、この団にまつわるね」

 初老の女団長は眼前の大扉を見る。ここ『勇者の大墳墓』の最奥に位置する室には、数多の神器と、太古に世を救っ

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野海山宙球

野海山宙球

 遥か昔の事、かつてバットという物は人の頭をブッ潰す為の凶器ではなく、野球なる平和的係争で用いられていたのだと、その爺は俺に語る。

 爺は腰から下の肉体をを失っていた。曰くデッドボールなるものを受けてこうなったらしい。今も夥しい血が流れ、この後楽園クレーターの泥に染みてゆく。それを横目に俺は、釘一本もない黄金色のバットを握り、立ちすくんでいた。今さっきそこの翁から渡されたブツだ。俺は問う。

 

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