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原則2:「ご褒美」は、時々だから「有難い」💛

原則2:ご褒美にする Make It a Treat 

 自分から自分へ「ご褒美」をプレセントする習慣が定着したのは、いつ頃からだろう。ネットサーフすれば、「〇〇のご褒美ランキング」といった記事も多々、検索できる。たいていは「がんばった自分」や「特別な自分」へ欲しかったもの、レアなもの、いつもより贅沢なものをあげる、という文脈だ。いずれにしても、自分への「ご褒美」はそこそこの市民権を得ているかのように思える。

 しかしながら、否定的な意見も少なくない。例えば、筆者たちが開催したZoom講座「幸せなお金の使い方」のMC「あっきー」こと和田氏は、「無駄遣いの言い訳じゃないの?」という疑問を投げかけた。他にも「自分を甘やかしているのでは?」という声もあるし、ご褒美に値するかどうかの評価は他人がするものであり、自己評価によってご褒美とはおこがましい、という厳しい意見もある。

 とはいえ、筆者はがんばった仕事が一段落したら、がんばりに応じて、いつもより奮発ぎみのワインを抜栓し、自分へ「ご褒美」をあげている。これは、ご褒美をもらえるから芸をする動物のごとく、ご褒美が欲しくてますますがんばるはず…という行動理論の「強化」を意図したものだ。パフォーマンスをあげるための工夫だから、無駄遣いであるはずがないし、甘やかしでも自己満足でもないと、言い訳をしておこう。

 ところが、サイエンス・オブ・ハピネス(幸せについての科学)の分野で幸せとお金の関係を研究しているリズさんとマイクさんによれば、自分への「ご褒美」にはもっと深い、心のメカニズムがある。

 キーワードは「感謝」だ。

 人には環境に順応する能力が授けられていて、どんなに辛いこと苦しいことにも順応する反面、どんなに楽しいこと嬉しいことにも順応してしまう。これを「快楽順応」という。そして、いったん快楽に順応すると、どんなに有難いものでも「当り前」に感じるようになる。美味しいものもレアなものも贅沢なものも馴れてしまえば、いつのまにか「当り前」…。「当り前」になれば有り難さは失われ、有り難さがなくなれば「感謝」もなくなる。

 大型の液晶テレビや世界最小のビデオカメラを買った時には驚いたし嬉しかったのに、ほどなく「当り前」に成り下がった(参照:原則1「経験を買う」)。これも「快楽順応」のなせる業だ。1級畑のワインばかり飲んでいる知人は、2級畑や3級畑のワインには歯牙もかけない。彼はもちろん富豪だが、汗水垂らして智恵を絞ってワインを仕込んでいる栽培農家や醸造家に対し、とんでもなく失礼なことだ。これも、「快楽順応」によって「感謝」を忘れた成れの果て…というより馴れの果てである。

 幸せの最大の源泉が「感謝」であることは、サイエンス・オブ・ハピネスの研究者たちがさんざん証明している。幸せになるには、ありとあらゆるものに「感謝」さえすればいい。しかしながら、人間とは業の深い生き物で、いとも簡単に「感謝」を忘れてしまう。過酷な状況でも生き抜くのに不可欠な順応ではあるが、平生では「快楽順応」となって「感謝」を奪い、幸せを奪う。人間はほとほと、失楽園に生きる宿命を背負っているようだ。

 キリスト教徒ではないけれども、清貧を勧めるプロテストタントの思想を少しは理解できる気もしてきた。「感謝」を忘れたところに、幸せはない。大好物もとっておきも「当り前」になったら、「感謝」とともに幸せを失い、私たちは失楽園へまっしぐらなのだ。

 だから、大好きなものほど「ご褒美」にして、時々味わったり楽しんだりするよう、マイクさんとリズさんは提案している。リズさんはカフェオレが大好きだから、日にちを決めて味わうのだという。マイクさんは季節限定のレッドホッツやキャンディコーンが大好きだという。レッドホッツは肉桂の赤い小さなキャンディで、キャンディコーンはハロウィンのお菓子とのこと。それぞれ一年で限られた時期にしか手に入れられないので有難く、マイクさんを幸せにしてくれるそうだ。

 自分への「ご褒美」は「感謝」がキーワード。だから、がんばった時でなくても特別な日でなくても何かしらのルールを決めて、「時々」買ったり食べたり味わったりするのが、自分への「ご褒美」の正しいあげ方といえる。その心は「感謝」すること。「感謝」して幸せになることである。水道をひねれば、お水がでるのが「当り前」。パンデミックで買い物に行かれなくても、宅配便で食材が届くのが「当り前」。これらを「当り前」と思わずに、「有難い」と感謝すれば、幸せはいつでも私たちの隣に座っている。

引用:「幸せをお金で買う」5つの授業
    エリザベス・ダン マイケル・ノートン(2014 中経出版)

    「ハーバード流 幸せになる技術」
     悠木そのま (PHPビジネス新書)

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