日常に潜む偏見や先入観 「認知バイアス辞典」読書感想 ~情報を正しく選択するために~

こんにちは。夏が終わりましたね。

「情報を正しく選択するための認知バイアス辞典」著者:情報文化科学研究所(山崎紗紀子/宮代こずゑ/菊池由希子)という本をお盆休みの間に読みました。読書感想文を書いていきます。

本を読んだ背景

私が普段会話をしている中で「思い違い」や「相手の言葉の裏を変に解釈」してしまい、話が食い違ってしまうことがあり、どうにか改善できないかと思っていたところ、本書を見つけました。

本書の表紙には「世界と自分の見え方を変える60の心のクセのトリセツ」と書かれています。自分の悪いクセに気づくきっかけになるし、科学的な読本も読むのは好き(今まで満足に活用できたことはありませんが)で、面白そうと思い、本書を手に取りました。

はじめに

さて、「認知バイアス」とは何でしょう。「認知」はなんとなく意味がわかるのではないでしょうか。見たもの聞いたもの、感じたことを「これは○○だ」と認識することですね。例えば、リンゴを見てその形や色などから「これはリンゴだ」と認識するようなことです。
「バイアス」は偏りや歪みを意味します。つまり、認知バイアスは認知が歪んでしまう現象で、偏見や先入観、歪んだデータ、誤解などを指す言葉です。

本書の前書きには、面白い例が書かれています。まずこんなことを質問されます。
”品川駅は品川区?”
え、品川区じゃないの?と私は思いました。私は東京に住んだことがないので、よく知りませんが、もしかすると品川区在住の方以外も同じように思うんじゃないでしょうか。
正解は、NOです。品川駅は港区にあります。そのほかにも品川プリンスホテルや品川税務署も港区にあります。名称に”品川”と付くことから、思い込みが生じてしまったわけで、認知バイアスの罠にかかっていたことになります。
ちなみにこれらの建物に品川の名前が付けられているのは、品川駅のあたりは廃藩置県で品川県になり、その後区の合併などから港区になったものの名称はそのまま残っているという状態だそうです。

このように人間は認知する過程で推測(品川という名前がついているから品川区にあるだろう)するので、このような思い違いをするというわけです。

本書で書かれていること

本書ではこういった認知バイアスを論理学、認知科学、社会心理学の観点から各20項目、表紙の説明の通り”60”項目書かれています。

すべての項目の解説は同じフォーマットで書かれています。まず、認知バイアスの論理または現象の名前が見出しで大きく書かれており、その意味と関連ワードが書かれています。そして具体例を絡めながらバイアスの説明、なぜバイアスが生まれるのか、日常に潜む罠、そして認知バイアスの発生による弊害や心得が書かれています。すべて1項目に対して4ページで書かれているので、リズムよく読めます。中には知っている知識もありましたが、すごくわかりやすく書かれていると思いました。また、各項目の最後にに参考文献が記載されています。もっと深く知りたいときにも書籍がすぐ見つかります。

参考までに各学問がそれぞれどういったことか簡単に書いておきます。

論理学:思考の形式及び法則。思考のつながり、推論や論証の仕方。

認知科学:情報処理という観点から見る生体(特に人)の知の働きや性質。

社会心理学:個人に対する社会活動や相互的影響関係。

話し方などは論理学の範囲ですね。詐欺の手口とかで使われる話も出てきます。データなど視覚的なことは認知科学です。大衆心理とか周りの人の影響によって起こることは社会心理学の範囲です。

感想

まず、本書を読んで私が人とのコミュニケーションで誤解や思い違いを無くすのに大事だと思ったことは
「自分の考えを正確に伝えるには丁寧な説明が必要であること」
「相手の話に対して自分の受け取った理解を伝えること」
です。

認知バイアスは得られた情報から不足している部分や結論を勝手に類推してしまうという現象です。よって、コミュニケーションをとる自分にも相手にも認知バイアスは発生しうるのです。
そして、認知バイアスによって齟齬が生まれてしまいます。つまり、認知バイアスを発生させないことが重要であると考えました。

自分の話す内容の中で情報が不足していれば、相手は類推しようとしてしまうし、自分が前のめりになって早く話を進めようとすれば、自分を類推して勝手な解釈をしてしまいます。この観点から自分の話す内容に不足がないようにすること、相手の話した内容に対する自分の理解を相手に伝えることで、誤解を減らすことができるのではないかと思いました。

上記の観点とは別に認知バイアスを使って、重要な話を印象付けたり、逆に情報量を減らすこともできると思います。今の私にとって、それはまだ難しいと思うので、コミュニケーションの問題が少なくなってきたら、本書をまた読み直して発展的なテクニックとして使ってみようと思います。

本書はビジネス書としてだけではなく、雑学的な知識を得るのにもよい本だと思います。あとは詐欺とか誇大広告の手口に使われている手法も学べるので、日常生活で自己防衛をするための知識としても役立つでしょう。

最後に

私が本書に掲載された現象の名前で一番かっこいいと思ったのは「賢馬ハンス効果」です。

最後で読んでいただきありがとうございます。


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