見出し画像

プラごみはごみじゃない!プレシャスプラスチックで変わる見方/逗子チームとの対話


こんにちは、プレシャスプラスチック鎌倉の狩野です。

3回にわたり、プレシャスプラスチックの日本における先駆者である鹿児島の環境活動家・テンダーとの対話をお届けしました。

この中でも軽く触れましたが、実は鎌倉のお隣、逗子でもプレシャスプラスチックの取り組みが昨年スタートしています。

鎌倉と逗子は共に海があり、住民の環境への意識が比較的高いエリアとはいえ、こんなに近くで2つのチームがプレシャスプラスチックに取り組んでいる地域は日本で他にないのではないでしょうか!?

プレシャスプラスチック鎌倉チームと逗子チーム、もちろんお互いに存在は知っていましたが、今回は改めてそれぞれどういった思いやモチベーションで活動しているのか、今後の連携もふまえてファブラボ鎌倉でオープンに話をしてみました。

画像1

逗子メンバー全員が自転車で参加。逗子駅からファブラボ鎌倉まで、山を越えて自転車で20分ほどの距離です。

プレシャスプラスチックのおもしろさはプラスチックへの向き合い方が変わること

画像2

左から逗子チームの長峰宏治さん、松澤有子さん、 長島源さん、ファブラボ鎌倉の山本さん

瀬藤(鎌倉):プレシャスプラスチックで鎌倉チームが目指しているのは、大量生産・大量廃棄という今までのモデルを脱し、プラスチックごみを素材ととらえて地域の中で循環させていく、新しい社会モデルをつくること
現状の3Dプリンタのノズルは細くて扱える素材が限られているけれど、そのうちいろいろなプラスチックを入れられるようになるだろうから、用済みになったプラスチックごみをシュレッダーにいれ、3Dプリンタで必要なものを造形できるようになったらいいなと。世界では、3Dプリンタで家をつくるような取り組みも実際にあるし、これから3Dプリンタでつくれるものはどんどん増えていくはず。実現するまでには少し時間はかかるかもしれないけれど、そんな新しい循環型社会を思い描きながら活動しています。
逗子チームはどういったビジョンやモチベーションでプレシャスプラスチックに取り組んでいるのでしょう?

長島(逗子):僕は「CINEMA AMIGO」というシネマカフェの運営や、「CINEMA CARAVAN」のメンバーとして映画祭の企画などをしているのだけれど、活動のベースにあるのは、カルチャー的にも資源的にも地域が自立している分散型社会をつくりたいという思い。
資源という観点からいうと、どうしてもプラスチックは悪者のような扱いをされがちなのだけれど、リベラル VS 保守のように全てが対立構造だった時代は過去のものとなっているし、同じようにナチュラルなものとプラスチックが対立しない新しい関係性をつくれないかなと

画像5

画像6

長島さんが運営するシネマカフェ「CINEMA AMIGO」(上)、LOCAL、NATURAL、SUSTAINABLE をコンセプトとするショップ&デリ「AMIGO MARKET」(下)

長島(逗子):プラスチックは既製品のイメージが強くて、自分たちの手に届かない素材という感覚が一般的にあるけれど、プレシャスプラスチックと出会ったことで意外と自分で扱える素材なんだなと気づいた。マシンづくりはハードルが高いかもしれないけれど、温度調整で溶ける特性を活かして「とりあえずホットプレートでプラスチックを溶かしてみよう」ということから始めることもできる。

瀬藤:アイロンを使って、ビニール袋からバッグやポーチをつくったりね。

重ねたビニール袋をアイロンで加熱し、溶接された素材からバッグをつくる例(プレシャスプラスチックのyoutubeチャンネルより引用)

長島(逗子):プラスチックが自分で扱える素材だと気づいて、木工の延長で日常的にDIYに取り入れられるようになると、ものづくりの可能性が広がっていく。テンダーも言っていたように、プレシャスプラスチック自体が広がったところで、プラスチック問題を解決するわけではないけれど、プレシャスプラスチックに触れることでプラスチックに向き合う姿勢が変わるということが、このプロジェクトの大きなポイントなんだろうなと
だからこそ、エコロジカルにいいことをやっているというモチベーションではなく、「ごみでこれつくれたらおもしろい!」っていう感覚がないと、あまりやっても意味ないかなと個人的には思っています。

画像7

プレシャスプラスチックでつくった角材を建材としてフレームに使いたいという長島さん

「プラごみはごみじゃない」物事を多面的に見ることの大切さ

画像4

左奥から時計まわりに、逗子の長島さん、長峰さん、松澤さん、手前が鎌倉の瀬藤さん

松澤(逗子):私はアーティストとして活動しているのですが、逗子アートフェスティバルの企画に携わる長峰さん(今回も参加している逗子メンバーの一人。普段はフリーのプロデューサーだり、逗子アートフェスティバルの共同代表者。)から声をかけられて、2018年からプラスチックごみを使った作品づくりを始めました。プラスチックごみを使い始めたのは、環境問題が入口というよりも、とにかく制作予算がなかったから。逗子だからこそあって安い素材は何だろう?と考えていた時期に、こどもが「海で宝石見つけたよ」とプラスチックのごみを拾ってきた。確かによく見るとカラフルできれいだし、物事を知識や先入観で曲げないこどもの感覚は、大人も大切にしないとな、と思って。予算もないし、プラごみを拾って使うことは環境にもよいし、とまずは海でごみを拾うところから始めました。

松澤(逗子):最初の年(2018年)は、みんなに海で拾ってもらったプラスチック片に穴をあけ、漁網をほどいた糸に通して、公開制作で全長7メートルの大きな船を編みました。逗子のスーパー・スズキヤの屋上でインスタレーションを行ったのですが、吊り下げた船の足元一面には使用済のクリアファイルを用いて揺れる波を表現したり、基本的には地域で不用になったり捨てられたプラスチックを素材にしています。

画像9

松澤さんによる大型インスタレーションと、長峰さんの映像作品、逗子のダンサー・Chiiさん演出・出演によるスペシャルパフォーマンス、の3つの作品で構成された「ぼくたちのうたがきこえますか 2018」

2年目の年、使用済クリアファイルを用いて公開制作した作品。「ぼくたちのうたがきこえますか2019 〜やどかりがみた空〜」

瀬藤(鎌倉):もとは制作予算がなくて、子どもがプラスチックごみをきれいだといったところからプラスチックごみに着目したんですね。

松澤(逗子):そう。普段から、物事の見方というのをとても大切にしていることもあって、プラごみはごみじゃない、というこどもから得た気づきが作品づくりにつながっています。環境問題をテーマにしたものではないとはいえ、作品に使われた多くのプラスチックを見ると、これだけのものが海にあるのかと、環境問題に興味あるなし関わらず、皆驚かれます。

画像11

松澤さんの作品「まぜこぜおばけ ぼくたちのうたがきこえますか2020」

瀬藤(鎌倉):毎回、地域の人を巻き込んだ公開制作というスタイルをとっているようですが、コロナ禍の去年はどうしたのですか?

松澤(逗子):みんなで一緒につくることはできませんでしたが、素材をキットのようにして渡して、地域の人たちに各自つくってもらいました。ちょうど長島さんからプレシャスプラスチックの話を聞いたので、海で拾うごみとは少し次元が違う、同じプラスチックだけれど、違う視点からみたプラスチックを使って「まぜこぜおばけ」という作品に仕上げました。

画像10

プラスチックを溶かして細いロープ状にしたものを編んでつくったおばけ(長峰さんのnoteより引用)

画像12

プレシャスプラスチックマシンを使って細いロープをつくっているところ(写真右が松澤さん)

松澤(逗子):最初は私と長峰さんの二人で始めたごみ拾いも、毎年やっていくとどんどん増えていって、作品も公開制作で地域の人に参加してもらいながらつくる形式をとっているので、多いときは1000人くらいの人に関わってもらったり。

瀬藤(鎌倉):それはすごい!

画像11

逗子海岸でのごみ拾いの様子

興味もバックグラウンドもバラバラなところから集まったメンバー

瀬藤(鎌倉):そもそも、この3人はどうやって集まったのですか?

長島(逗子):実は、5年くらい前にテンダーが逗子に来たときからプラシャスプラスチックはやりたいと思っていて、逗子アートフェスティバルで松澤さんの作品を見て、こことつなげたら何とかなるかなーと。それで、本人の了承を得てもいないのに、見切り発車でプレシャスプラスチックマシンを手に入れたのが始まりの経緯。今後、逗子でプレシャスプラスチックがある程度ムーブメントとして広がっていって、素材となるプラごみを集める体制が整った頃に、個人的につくりたかった角材づくりに入ろうかなと(笑)。

長峰(逗子):数年前に松澤さんのポートフォリオを見て、一度作品を見てみたいなと思っていたら松澤さんの旦那さんと偶然つながって。その縁で、逗子アートフェスティバルでの作品づくりを相談したところから、今につながります。

瀬藤(鎌倉):長峰さんは、私がSFCの学生時代に隣の研究室の先輩で、ごみをテーマにしたアート作品をつくっていたのでプレシャスプラスチックに携わっていると知って僕の中では納得がいきました。3人はもともとバラバラなところから、ふうっと集まったチームなんですね。

逗子アートフェスティバル 2021のインタビュー動画、長峰さんの回。プレシャスプラスチック逗子の活動や、松澤さんの公開制作の様子にも触れられています、ぜひご覧ください。

瀬藤(鎌倉):逗子と鎌倉、目指すものや、やりたいことは違うとしても、ここまで近い距離で活動しているので、時に交わりながら、何かシェアしたり協力し合えたらいいなと思っています。例えばマシンを利用し合うとか、一緒に実験してみるとか。

長島(逗子): そうですね、プラスチックのよい集め方を考えたり。

長峰(逗子):今年の逗子アートフェスティバルは、小坪(逗子の中でも鎌倉から一番近いエリア)を会場にしようと思っていて、プレシャスプラスチックも参加するのでぜひ来てください。

瀬藤(鎌倉):小坪は、家からすぐだから、歩いて行きます(笑)。今日は、ありがとうございました。

(おわり)

この顔合わせの後、実際にマシンづくりやメンテナンスを一緒に行う話が進んだりと、地域を超えた連携が少しずつ始まっています。「逗子と鎌倉」2つの地域のプレシャスプラスチックの活動、乞うご期待ください!















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?