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プレシャスプラスチックの先駆者、鹿児島の環境活動家・テンダーとの対話(前編)

こんにちは、プレシャスプラスチック鎌倉の狩野です。
コロナの影響で計画していたイベントなどが全て吹っ飛んだこの1年間。当面多くの人に向けた体験型イベント等を行うのは難しいので、今後に向けた下準備や、仲間づくりを進めています。

今回は、地域を超えた連携の可能性を探るべく、日本におけるプレシャスプラスチックの先駆者である鹿児島在住の環境活動家のテンダーに、鎌倉メンバー4人で話を聞きました。

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テンダー(「ダイナミックラボ」運営)
考えて実践して伝える作業を繰り返しています。
版元を作り出版した「わがや電力」は直販にて12000部を売上げ。 先住民技術、NVCとシステム思考、Fabの知恵を使い、生態系を模倣する文明を研究中。鹿児島の廃校にて環境問題を解決するためのfablab・ダイナミックラボを運営。 http://sonohen.life

プレシャスプラスチック鎌倉・瀬藤:鎌倉のプロジェクトは、テンダーを通してプレシャスプラスチックを知ったことが、きっかけになってるんだよね。2018年にテンダーから技術的なことを教えてもらいながら鎌倉でマシーンづくりを始め、2019年に3つのマシーンが完成し、いざ本格的に活動しようと思っていたところにコロナの影響で動けなくなって。

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2018年10月、鎌倉で開催された「鎌倉 海のアカデミア」(主催:ルートカルチャー)でプレシャス・プラスチック・マシーン鎌倉1号機「インジェクション・マシン」をお披露目したときの様子。テンダーに鹿児島から来てもらいました。

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プレシャスプラスチック鎌倉の発起人・ルートカルチャー代表の瀬藤さん。zoomを使ったオンラインインタビューを行いました。

瀬藤:今日は、日本におけるプレシャスプラスチックの先駆者として、テンダーの考えや、これまでの経験で得た知識を聞かせて欲しいなと思って。

テンダー:まず前提として、私はオランダのプレシャスプラスチックマシーンを日本仕様に変えて作り始めた最初の実践者というだけであって、プレシャスプラスチックの権威でもなんでもない、ということは強調しておきたい。実際、私個人の考え方と、オランダチームの考え方は必ずしも一致していないから。

瀬藤:プレシャスプラスチックマシンについて、多方面から問合せが入り始めているのだけれど、テンダーのところにもかなりの問合せや視察が入ってそうだよね?

テンダー:ウェブサイトを見て、20件以上は問合せがきたかな。今日も夕方に与論島からお客さんがきて、一週間の修行でプラスチックのシュレッダー(破砕機)をつくることになってる。

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ダイナミックラボでの修行の様子。(ダイナミックラボウェブサイトより引用)

マシンをつくりたいんじゃなくて、社会をつくりたい

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瀬藤:プレシャスプラスチックマシンをつくって欲しいという声もあると思うのだけれど、テンダーは依頼を受けてつくったりもしているの?

テンダー:機械だけを出すということは基本的に考えてない。扱いによって壊れやすいマシンだし、メンテナンスが必要なものだから、自分たちで手直しできないと意味がないと思ってる。私は鹿児島で暮らしているので、呼ばれてもすぐに行けないという条件が前提にあるけれど。
これまでミクロネシア、与論島、京丹後の人たちにマシンづくりを教えてきたけれど、全員ダイナミックラボに一週間泊まり込みで滞在してもらい、金属加工の基礎から学んでもらっている。2、3日あればシュレッダーを作るために必要な金属加工の技術や感覚を身につけることができて、一週間あれば組み立てまでできる。自分で作れる人を増やせば、その人が他の人にマシンづくりを教えることができるようになるから、各地で自律分散型で増えていくと思っていて。お金を払ってマシンを買って、じゃ何も変わらない

プレシャスプラスチック鎌倉・渡辺:私たちは、日本仕様のマシンの作り方をオープンソースで公開しようと思っていたのですが、海外から仕入れた一部のパーツ※がコロナによって同ルートで手に入らなくなってしまったため、公開する意味がなくなってしまいました。日本でマシンを作りたい人が、ダイナミックラボに必要なパーツを発注できるとスムーズだと思うのですが、どうでしょう。

エクストリューダーマシン(押し出し機)に使用するスクリューとパイプ

テンダー:ダイナミックラボでも、レーザーカットは長崎の工場に外注している。ただ、ロットがまとまらないから納期が安定しないよね。自分でシュレッダーの軸を作れるように金属旋盤の技術を身につけたりもしたけれど、大前提として私は機械を作り続けたくない。
一方で、専属でやれば一人雇えるくらいの事業ではあるから、プレシャスプラスチックで地域おこし協力隊を一人雇えないかと、ダイナミックラボがある南さつま市には提案している。鹿児島はマンパワーがとても足りないから、ファブラボ鎌倉に来る活きのよい若者をダイナミックラボに送り込んでもらえるなら、私としてはとてもウェルカムで、一年後に独立できるよう育てることもできる。

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マシンを組み立てるテンダー(ダイナミックラボウェブサイトより引用)

瀬藤:テンダーはマシンを作りたいんじゃなくて、社会を作りたいんだよね。

テンダー:その通り!いいこといったね (笑)

瀬藤:プレシャスプラスチックは、Do It YourselfやDo It With Othersの精神でやっているプロジェクトだから、マシン作ってよというスタンスで来るのはいずれにしても違う気がする。鎌倉はファブラボがあったり、友人の鉄職人たちのおかげで自分たちでマシンを作ることができた。

テンダー:自分でマシンの図面を見ることもなく、いきなり作り方がわかる人を探す人が多い。自分は消費者を保ちつつ、道具だけ欲しいというスタンスは、プラスチックがここまで出回っていることと同根の問題だと思う。出来上がったマシンが簡単に手に入るような、自分でコミットする人が増えない仕組みにしてしまうとプレシャスプラスチックの意味がないとは思う。

瀬藤:日本は、消費者と手を動かす人の間に大きな隔たりがある気がするよね?

テンダー:メディアによって、私たちはいかに無力で、専門家に頼まないと危険なことが起きると洗脳されているから。今は、お金を払えば何でも買えるし外注もできる。いろいろな社会問題が大きくなりすぎていて、個人から見渡せなくなっているというのも大きな原因。だからこそ、自分たちでコミットしていくことが大切

(後編につづく)




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