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プレシャスプラスチックの先駆者、鹿児島の環境活動家・テンダーとの対話 (後編)

こんにちは、プレシャスプラスチック鎌倉の狩野です。鹿児島在住の環境活動家・テンダーとの地域を超えた対話、前回の記事はこちら。

テンダー:プレシャスプラスチックプロジェクトが全世界的に広がっていることは、ものを学ぶ手法としてとてもいいことだと思うけれど、そもそもマシンを使って何をつくるかという考えが欠落している。プラスチックがここまで普及したのは、均一なものを大量に安くつくれるから。プレシャスプラスチックで同じことをしたらあまり意味がなくて、個人的には世界に足りないものを作らない限り、何をつくってもごみになるんじゃないかと思っている。
世界で足りてないものといえば、例えばトイレとか。最近、「Koyassy」という手回し式コンポストトイレを開発したのだけれど、これをプレシャスプラスチックで作ろうとしている。

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テンダーが開発した手回し式のコンポストコンポストトイレ「Koyassy」。(ダイナミックラボウェブサイトより引用)

テンダー:プラスチックの特性を考えると、じめじめしたり、防虫性能が必要とされるような環境とも相性がよいから、家の下の束(つか)とかもいいかもしれない。世界には対話が足りてないから、トーキングスティック※をプレシャスプラスチックマシンでつくろうとかいう話がでると、次のステージにいくと思う。

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※トーキングスティックとは、アメリカ先住民が議論を行う際に用いた道具。(写真はwikipediaより引用)

渡辺:確かに、ごみからごみをつくったら意味がないですもんね。「世界に足りないものをつくる」という観点は抜けていたので、とても勉強になります。こういった課題感を、例えば近隣なら逗子※や、他の地域でプレシャスプラスチックプロジェクトに取り組む人たちと共有したり、知見がたまっていくような方法を考えられたらなと。

(※鎌倉の隣町逗子でもプレシャスプラスチックの活動が始まっており、テンダーは逗子のマシンづくりも手掛けた。)

テンダー:そう、だから今日は日本でもプレシャスプラスチックのコミュニティをつくりましょうという話もしたかった。
その中で、まず最初にこのプロジェクトの要でもあるオープンソースについて理解することはとても重要だと思う。プレシャスプラスチックという名前を出さずに活動している人たちがいるけれど、オープンソースに関わる関わり方としては違うなと。

瀬藤:オープンソースなのに、自分のブランドのようにうたっているということだね。

テンダー:プレシャスプラスチックのコンセプトが日本語訳されていないから、コンセプトを理解しないまま、マシンづくりから始めてしまう人が日本にはとても多いのかもしれないと最近気が付いただから、日本でコミュニティを作っていくうえでプレシャスプラスチックのコンセプトを日本語訳しておく必要がある。

(以下、プレシャスプラスチックのコンセプト英語本文、続いて鎌倉メンバーによる日本語訳)


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(プレシャスプラスチックウェブサイトより引用)

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テンダー:プレシャスプラスチックには、discordというチャットツールを使ったグローバルなオンラインコミュニティのプラットフォームがあるけれど、日本語版のオンラインプラットフォームもそろそろ必要な段階に来ているかと思う。ただ、日本はインターネットにおいて腐す文化があるから、せっかくつくったのに一年後に稼働していないというのは避けたい。

瀬藤:マシンのつくり方だけでなくスピリットも共有できるような、日本語版のプラットフォームづくりはやる価値がありそうだね。               

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左上から時計回りにテンダー、鎌倉チームの狩野、渡辺、瀬藤、山本

テンダー:日本では、プレシャスプラスチックに関わる層にまだ厚みがない気がしていて、このままものづくりや環境問題に詳しい人たちだけのものになってしまわないかという危機感が私にはある。ただ、鹿児島にいると、直接会える人の数は鎌倉と比べて圧倒的に少ないから、やみくもに多くの人に伝えるというようなやり方ができない。だから、マシンづくりを教えるにしても、自分の目的のために勉強をいとわず、自分で手を動かしたい人に来てほしいなと思う。そういう人は、自分で学んだ後に、自分で広げていってくれる可能性があるから。

瀬藤:テンダーは必要な知識や技術を身につけながら自分でマシンをつくることを大切にしているけれど、鎌倉では、ファブラボ鎌倉の山本さんを中心にバイク修理が得意な僕の友人や鉄職人、いろいろな人の力を借りてつくったんだよね。プレシャスプラスチックマシンをつくるには、モーター、回路、鉄工、いろいろな要素があるから、一般的には一人でできるものじゃないと思ってもらったほうがいいと僕は思っている。

テンダー:金属加工の知識がなくても、一週間あればシュレッダーはつくれるようになるのだけれど、それでも難しいのかな。

瀬藤:つくるための道具が揃っていて、テンダーのような教えてくれる人がいればできるのだろうけれど。個人的には、いろいろな人を巻き込んでマシンをつくることで、コミュニティがアクティブになる感覚がとても面白かった。鎌倉のプロジェクトでは、素材集めからプロダクトづくりまで、地域の人や企業を巻き込みながら進めていきたいと思っている。

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鎌倉でそれぞれの知識を持ち合いシュレッダーを作っている様子

瀬藤:テンダーと僕たちとでは、考え方やスタンスで異なる点もあるけれど、違いをリスペクトしながら、一緒にできることはしていきたいなと今日改めて話をして思った。プラットフォームづくりはもちろん、あとは例えば鎌倉にテンダーを呼んでプレシャスプラスチックについて学ぶ会を開くとか。

渡辺:鹿児島にも行きたいですね。現地に行くと情報量が違いますし、よりテンダーさんのスピリットを共有できると思います。マシンづくりをしたい人たち複数で合宿するようなプログラムにしたら、自然と仲間もできそうです。

テンダー:今は、プレシャスプラスチックマシンをつくるために一週間の修行をしているけれど、双方の環境が整っていれば基礎的な計測やヤスリがけ等、オンラインで教えられることもありそう。

瀬藤:そういった方向性で連携の仕方を考えてみるのもいいね。テンダー、今日はありがとう!



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