虐待的監督と破壊的リーダーシップ
虐待的監督と破壊的リーダーシップについて、2つの論文の概要をGeminiに出力してもらいました。
Mackey, J. D., Ellen III, B. P., McAllister, C. P., & Alexander, K. C. (2021). The dark side of leadership: A systematic literature review and meta-analysis of destructive leadership research. Journal of Business Research, 132, 705-718.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0148296320306883
Kaluza, A. J., Boer, D., Buengeler, C., & van Dick, R. (2020). Leadership behaviour and leader self-reported well-being: A review, integration and meta-analytic examination. Work & Stress, 34(1), 34-56.
https://doi.org/10.1080/02678373.2019.1617369
1.The dark side of leadership: A systematic literature review and meta-analysis of destructive leadership research.
リーダーシップのダークサイド: 破壊的リーダーシップ研究の体系的文献レビューとメタ分析。
本論文は、近年著しい広がりを見せている破壊的リーダーシップの文献レビューとメタ分析を通して、その実態解明を試みるものです。先行研究は数多く存在するものの、破壊的リーダーシップに対する理解は未だ不十分な状況です。そこで、本研究では体系的な文献レビューを実施し、今後の知識創出と理論発展のための強固な基盤を築き上げることが目標です。
具体的には、418件の調査データ(k = 418, N = 123,511)を用いてランダム効果メタ分析を行い、破壊的リーダーシップのノモロジカルネットワーク内の関係性の強さと方向性を推定しました。その結果、本研究では、過去20年間の研究成果を活用し、破壊的リーダーシップに関する知識を深め、理論発展を促進し、今後の研究の指針を示し、政策や実践のためのエビデンスに基づいた提言を行うことが可能となりました。
本論文のポイント:
破壊的リーダーシップに関する体系的な文献レビューを実施。
418件の調査データを用いてメタ分析を実施。
異なるタイプの破壊的リーダーシップの定義を提供。
今後の知識向上に必要な確固たる実証的基盤を構築。
今後の研究の方向性を示唆。
破壊的リーダーシップとは?:
リーダーが組織や部下の正当な利益を侵害するような意図的行動をとるリーダーシップスタイルです。論文中のKrasikova et al. (2013) の定義では、
組織の正当な利益に反する目標を部下に追求させる
部下への影響において有害な方法を用いる
のいずれか、あるいは両方を満たす場合、破壊的リーダーシップとみなされます。重要なのは、リーダーシップにおける影響のプロセスにおいて有害な行動が組み込まれている点です。
破壊的リーダーシップのスタイル:
権威主義的リーダーシップ
非倫理的リーダーシップ
搾取的リーダーシップ
自己愛的リーダーシップ
リーダーによるいじめ
リーダーによる排除
リーダーによる無礼な言動
リーダーによる妨害行為
その他
破壊的リーダーシップの影響:
部下の仕事のパフォーマンス低下
職場での逸脱行為
従業員の離職意向
ストレス、不安、抑うつ
組織へのコミットメント低下
その他
本研究の貢献:
破壊的リーダーシップに関する包括的なメタ分析の実施
破壊的リーダーシップのノモロジカルネットワーク内の関係性の強さと方向性の推定
今後の研究のための具体的な方向性の提示
政策立案者や実務家のためのエビデンスに基づいた提言
破壊的リーダーシップの様々なスタイル
破壊的リーダーシップは包括的な概念であり、多くの具体的なスタイルが含まれます。論文では、以下のスタイルが挙げられています。
Abusive Supervision (虐待的監督): 身体的接触を除く、敵意的な言動を部下に対して継続的に行うこと。最も研究が多く、破壊的リーダーシップ研究の中心的なスタイルとなっています。
Aversive Leadership (忌避的リーダーシップ): 脅迫、威圧、罰を用いて部下を指導するスタイル。
Corrupt Leadership (腐敗したリーダーシップ): リーダーと一部の部下が、規範を超えて嘘、不正、窃盗を行い、私益を公益よりも優先するスタイル。
Derailed Leadership (脱線したリーダーシップ): いじめ、屈辱、操作、欺瞞、嫌がらせなどの部下に対する反社会的行動と、欠勤、怠慢、詐欺、窃盗などの組織に対する反社会的行動を同時に行うスタイル。
Despotic Leadership (専制的なリーダーシップ): リーダーの自己利益のために、個人的な支配力と権威主義的な行動を用いるスタイル。
Exploitative Leadership (搾取的リーダーシップ): リーダーの自己利益を追求することを主目的としたリーダーシップ。部下の搾取、過剰な負担、あるいは逆に成長の機会を与えないなどの行動が見られる。
Insincere Leadership (不誠実なリーダーシップ): 他者を利用して個人的な目標を達成するために、様々なリーダーシップ行動を駆使するが、直接的な対決ではなく、秘密裏の策略を用いるスタイル。
Leader Bullying (リーダーによるいじめ): 自分を守ることが難しい部下に対して、リーダーが否定的な行動を繰り返し行うこと。
Leader Exclusion (リーダーによる排除): リーダーが部下を職場の人間関係、活動、イベントから排除すること。
Leader Incivility (リーダーによる無礼な行動): リーダーが部下に対する敬意を欠いた、失礼で無作法な行動をとること。
Leader Narcissism (自己愛的なリーダーシップ): リーダーの行動が、自身の誇大なニーズや信念によって主に動機づけられ、部下や組織のニーズや利益を無視するスタイル。
Leader Undermining (リーダーによる弱体化): リーダーが部下の人間関係や仕事上の成功を妨害する行動をとること。
Negative Leadership (ネガティブ・リーダーシップ): 非効果的な側面から破壊的な側面まで、一般的に嫌悪され非難される行動をとるリーダーシップ。
Personalized Charismatic Leadership (個人化したカリスマ的リーダーシップ): 自分の私利私欲を重視し、部下を操り、力を奪うことで、不均衡な関係を意図的に築くスタイル。
Pseudo-Transformational Leadership (偽の変革的リーダーシップ): 部下を支配し、コントロールすることで、自身の利己的な目標を推進するスタイル。
Petty Tyranny (軽度の専制政治): 権力と権威を圧迫的、気まぐれ、時には復讐的に用いること。
Toxic Leadership (有害なリーダーシップ): リーダーの破壊的な行動や機能不全な個人的資質によって、個人、家族、組織、地域社会、さらには社会全体に深刻で永続的な悪影響を与えるスタイル。
Tyrannical Leadership (暴君的なリーダーシップ): 組織の目標、任務、戦略に従って行動するが、部下を通してではなく、部下を犠牲にして成果を上げるスタイル。
これらのスタイルは、リーダーが部下に影響を与える際に用いる有害な方法を強調しています。各スタイルは微妙に異なり、理論構築において異なる示唆を含んでいます。
Abusive Supervision (虐待的監督)について
Abusive Supervisionは、破壊的リーダーシップの中で最も研究されているスタイルです。部下に対する敵意的な言動の継続的な表示として定義され、身体的接触は除外されます。論文では、完全版の15項目尺度と短縮版の5項目尺度の違いにも言及し、尺度の違いが結果に影響を与える可能性を示唆しています。5項目尺度は、積極的な攻撃性を中心としたパワハラ的行動に焦点を当てているのに対し、15項目尺度はより広範囲なパワハラ的行動を網羅しています。この違いにより、自己評価やLMXなど一部の変数との相関関係に違いが生じる可能性が示唆されています。
2.Leadership behaviour and leader self-reported well-being: A review, integration and meta-analytic examination
リーダーシップ行動とリーダーの自己報告による幸福度: レビュー、統合、メタ分析による検討
研究の背景:
リーダーシップとフォロワーの幸福度の関連性は広く確立されている一方で、リーダーのリーダーシップ行動と自身の幸福度の関係については、まだ十分に解明されていません。特に、既存の研究を体系的に統合した研究は不足しています。
研究の目的:
リーダーの幸福度とリーダーシップの関連性に関する主要な理論をまとめた統合フレームワークに基づき、異なるリーダーシップ行動とリーダーの幸福度指標との関係に関する知見を定量的に統合することを目的としています。
研究方法:
メタ分析を実施し、95の有効な効果量(サンプルサイズ:N = 12,617)を分析しました。
研究結果:
建設的なリーダーシップと破壊的なリーダーシップは、リーダーの幸福度と予想される方向に有意な関連性があることが確認されました。
建設的なリーダーシップ行動に関する相対的な重み分析では、変革指向および関係指向のリーダーシップ(例:変革型、参加型)が、タスク指向のリーダーシップ(例:取引型)よりもリーダーの幸福度の分散を多く説明することが示されました。
破壊的なリーダーシップに関しては、積極的な破壊的リーダーシップ(例:虐待的な監督)は、受動的なリーダーシップ(例:自由放任)よりもリーダーの幸福度との負の関連性が強いことが示されました。
統合フレームワークに基づき、幸福度の異なる形態(ポジティブvs.ネガティブ、短期vs.長期、仕事関連vs.一般的)に対する関連性の異なるパターンを提案し、その裏付けとなる結果を得ました。
結論:
本研究は、リーダーの幸福度とリーダーシップの間にかなりの関連性があることを示しており、従業員、チーム、組織への影響を考えると、リーダーのためのリーダーシップ開発プログラムと組織の健康介入の導入を支持するものです。
示唆:
リーダーの幸福度は、リーダー自身だけでなく、そのリーダーシップ行動や組織全体にも影響を与える重要な要素であることが示唆されました。組織は、リーダーの健康を積極的に促進し、建設的なリーダーシップ行動を育成することで、組織全体の業績向上に繋げることが重要です。
建設的なリーダーシップの詳細
この論文では、建設的なリーダーシップをタスク指向、関係指向、変革指向の3つの下位カテゴリーに分類して検討しています。
1. タスク指向リーダーシップ:
定義: 仕事の要件を明確化し、タスクの達成を監視することに焦点を当てた行動。
具体的な行動例:
目標設定と仕事の割り当て
作業手順の明確化
進捗状況の監視とフィードバックの提供
パフォーマンス基準の設定と評価
関連する理論:
取引型リーダーシップ: リーダーとフォロワーの間で、報酬と引き換えにパフォーマンスを期待する交換関係に基づくリーダーシップ。
イニシエーティングストラクチャー: グループの目標達成を促進するために、役割と責任を明確化し、組織化することに焦点を当てたリーダーシップ。
マネジメント・バイ・エクセプション・アクティブ: 問題が発生する前に積極的に監視し、逸脱を修正することに焦点を当てたリーダーシップ。
2. 関係指向リーダーシップ:
定義: 関係の質を向上させ、従業員を支援することを主な目標とした行動。
具体的な行動例:
従業員への配慮と共感
従業員の意見を聞き、意思決定に参加させる
従業員の成長と発展を支援する
チームワークと協力を促進する
関連する理論:
コンシダレーション: 従業員のニーズと幸福を重視し、相互の信頼と尊敬に基づいた関係を築くリーダーシップ。
リーダー・メンバー交換(LMX): リーダーと個々のフォロワーとの間の質の高い交換関係を重視するリーダーシップ。
参加型リーダーシップ: 従業員を意思決定プロセスに参加させ、彼らの意見やアイデアを尊重するリーダーシップ。
支援的リーダーシップ: 従業員が仕事上の課題を克服し、成功するために必要なリソースやサポートを提供するリーダーシップ。
3. 変革指向リーダーシップ:
定義: フォロワーを鼓舞し、変革を促進することを目的とした行動。
具体的な行動例:
ビジョンと目標を明確に伝え、フォロワーを動機づける
変革への必要性を強調し、フォロワーに挑戦する
フォロワーの成長と能力開発を支援する
組織文化を変革し、新しい価値観を浸透させる
関連する理論:
変革型リーダーシップ: フォロワーにインスピレーションを与え、彼らをより高いレベルのパフォーマンスとコミットメントへと導くリーダーシップ。
カリスマティックリーダーシップ: 魅力的なパーソナリティとビジョンによってフォロワーを魅了し、熱狂的な支持を集めるリーダーシップ。
ビジョナリーリーダーシップ: 将来のビジョンを明確に描き、フォロワーをその実現に向けて導くリーダーシップ。
メタ分析の結果:
建設的なリーダーシップは、リーダーの幸福度と正の関連を示しました。
相対的な重み分析の結果、変革指向と関係指向のリーダーシップは、タスク指向のリーダーシップよりもリーダーの幸福度の分散を多く説明することが示されました。
特に、関係指向リーダーシップは、リーダーの幸福度を高める可能性が高いと考えられています。これは、従業員との良好な関係を築くことで、リーダー自身の帰属意識や自己肯定感といった欲求が満たされるためと考えられます。