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日本人ヘラヘラしすぎ問題

今の会社の上司はイギリス人で、イギリス人にしては珍しく(?)割とはっきりものを言うタイプなのですが、そんな上司と以前大喧嘩した際に、

「僕が感情的になっている時にヘラヘラ笑うのをやめてほしい」
「バカにされているようで傷つく」

と言われたことがありました。

それ以来、同じことは言われていないのですが、どうも上司が怒っていたり、悲しんでいたりネガティブな話をしている際に、上司の雰囲気(画面越しではありますが)を見る限りどうも私のリアクションがおかしい(=場面に相応しくない)ようだと感じるようになってきました。

もちろん、上司を嘲笑うような意図は全くないです(あまりにしょうもない理由で怒っているときなんかは正直心の中で「何で?」みたいな気持ちになっているときもありますが、当然上司が悲しんでいるときは同情する気持ちで聞いています)。
また、例えば上司が私個人の行いに対して怒っている(or 注意している)ような時は、私もそれを受け入れたり、何か自分なりの反論をしたりして、特にニヤニヤ笑ったりはしていないです。


「ネガティブな話題の際にヘラヘラしている」ということは、私が(外資系企業で欧米人と仕事をしていた際を含めて)日本で働いていた際は誰にも指摘されたことはありませんでした。

よく考えると、欧米(少なくとも英米あたり)のコミュニケーションを見ていて、誰かがネガティブな話をしているときは、誰しも「かわいそうだね」「元気だして」という感じで、話している人と一緒になって悲しい顔をしたり、眉間に皺を寄せたりして感情(共感)を表していることがほとんどだと思います。

私は生まれも育ちも日本なので、完全に日本の文化で育ってきて、これまで全く自覚することがなかったのですが、どうやら、日本人はネガティブな話題のときにヘラヘラと笑うことによってその場の雰囲気を和ませている(=その場の空気を軽くして衝突を回避させる)ようなのです。

このように言語化すると当たり前のような気もするのですが、なんと、欧米には全くこの文化はないようなのです(結構衝撃です)。
アメリカで生まれ育った帰国子女の友達に聞いても、「欧米では笑い=happy or funnyしかない」「日本のように複雑な感情を表現するものではない」とのことでした。

ネットで探すといろいろと出てきます。

 確かに、「私もう死ぬのかなと思っちゃって、アハハハ」と笑っているその笑いを、どう説明したらいいのだろうと、自分もしばらく考え込んでしまった。外国人である彼らは、「死にそうになったよ」と笑うことはないなあ、と言う。もちろん、人にもよるだろうけれど。

 他にも緊張や動揺、気まずい空気を感じた時にも日本人は笑顔をつくる。そればかりではなく、誰かを怒らせてしまったとき、逆に誰かを怒っているときにさえ笑いをつくることがある。笑ってごまかす、というとやや表現は良くないが、場の緊張を緩和させようとして笑いを使うのには一定の効果がある。

https://bungeishunju.com/n/n8d5333fd662d

意外に多く挙がったのが「照れ笑い」です。どうも日本人は会話の中で、この照れ笑いを頻発しすぎているようです。

言われてみると、確かに英語圏の人たちはあまり照れ笑いをしない気がします。まぁ、英語で話しているときなど、自信がなくなって、つい照れ笑いしたくなる気持ちはとてもよくわかるので、「許してあげてー!」と言ってみたのですが、どうやらこの照れ笑い、私たちが考えているのとは別のメッセージとして捉えられているようです。

ネーティブたちは照れ笑いをされると「相手が真剣に話していない」とか「適当にあしらわれている」といった印象を受けるようです。おそらく相手が笑い出したときに、私たち日本人は「緊張しているんだ」とか「困っているんだ」というメッセージとして理解できるのですが、ネーティブはまず「バカにされている」とか「ふざけている」というほうに直結してしまうようなのです。

緊張で照れ笑いをしながらプレゼンテーションをしている人を見ると、一気にその内容に対する興味が冷めてしまうというネーティブもいました。

https://toyokeizai.net/articles/-/303846?page=2

正直、グサグサ思い当たる節があります。日本人なら誰でもするんじゃないでしょうか?

なんなら、会議の場で話がヒートアップして、一触即発状態になったとき、ヘラヘラしながら場を和ませるような一言を言えるような人こそいわゆる「コミュ力が高い人」と呼ばれ、何ならその能力が買われるということすらあるのではないでしょうか?

そんな議論の場で、怒りなど感情をあらわにして相手に対して反論しつづけるようなタイプは「空気が読めないタイプ」として厄介がられるのではないでしょうか?

それが、欧米では逆なのだと言うことに、イギリスで働き始めて半年経って初めて気づきました。

確かに、「緊張を緩和させるための笑い」の文化がなければ、「自分が悲しい話をしているのにニヤニヤしている、なんて共感性のないやつなんだ」「俺をバカにして笑っているに違いない」と思うのも無理はありません。

おそらく、これまでも悲しい話の時にニヤニヤ、ヘラヘラ、していたんだと思いますが、それを、周りの人は「なんて空気の読めないやつだ」と感じていたのだと思います。

これの非常に難しい点は、あくまで表情(=非言語コミュニケーション)だということです。

みなさんは、これまで人の話を聞いているときの自分の表情について深く考えたことはありますでしょうか?
おそらく、「こう言えば元気づけられるかな」「どうやって場の空気を明るくさせよう」とか、話す内容について考えたことはあっても、表情まで考えたことがある人はほとんどいないのではと思います。

正直言って、海外で働いたり生活したり人間関係を構築する上で、これは致命的なダメージになり得ます。

例えば、「アメリカ人は自信満々」「イタリア人は早口」のようなステレオタイプがありますが、このくらい有名なステレオタイプであれば「イタリア人は早口だから、ちょっと話を遮るのに苦労するよね」など、多少理解・配慮される可能性があります。しかし「Politeなことで有名な日本人」が「場の空気を和ませるために、ネガティブな話題の際にヘラヘラ笑う」は全くステレオタイプとしては認識されていないのではないでしょうか。

配偶者が日本人だったり、日本の会社と長く付き合いがあるような人であれば何となく肌感として「日本人ってこうなんだ」と言う風にあらかじめ理解している可能性もなくはないですが、何と言っても欧米(少なくともイギリス)では日本人は所詮マイノリティです。「悲しい話題の際にヘラヘラ笑っている人」は「普通に失礼な人」として、本人の知らぬところでマイナス評価を受けている可能性がかなりあるような気がしています。

正直、これを認識している私ですら、今日上司がネガティブな内容を話している際に、しばらく経ってからどうも自分の口角が上がっていることに気づいて、愕然としたという事実があります。

表情は完全に無意識の反応なので、これを変えるというのは一朝一夕ではできず、日々気をつけることしかできないかなと思います。

とりあえず、やっと日々の違和感が少し言語化できました。
「これはJapanese grinで、私たちは場を和ませるために笑う。だから無意識にニヤニヤしてしまうのだ」「今までも意識して治そうとはしてきたけど無意識なのですごく難しい」「でも不適切な表情をして傷つけたことは申し訳ないと思っている」「イギリスで働いている以上、こちらの文化に合わせたい。だから、今後私が不適切な場面でニヤニヤ笑っていたら、指摘して欲しい」と言う感じで、時間のある際に上司に説明してみようと思います。

改めて、文化って難しいなと思った日でした。

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