かすみ

文化的雪かき

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最近の記事

想田和弘監督 観察映画

最近気になっているものを紹介します。 映画作家の想田監督なんですけど、映画「精神」を見てどっぷりはまってしまい、続けて「演劇1」「演劇2」「選挙」「選挙2」「Peace」「港町」「THE BIG HOUSE」の8作を見て、著書「なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか」を読んだので、内容をまとめておこうと思います。 ドキュメンタリーの魅力=存在の不確かさ、はかなさ「作り手の予想や思惑が生の現実の迫力を前に粉々に砕け散り、心底裏切られ、既存の世界がドロドロに溶解してしまったときにこ

    • 魂のないフィクションはゴミ

      又吉直樹の「人間」を読みました。 あらすじとしては、38歳の男が、芸大時代に住んでいたシェアハウスの友人から1通のメールをもらう。そこから当時のことを思い出し、男の創作活動や自分自身、当時の知人たちに対する思考が巡っていきます。 前半:学生時代の回想、中盤:影島という芸人が自信を批判するエッセイストに対して書いた反論文、そして影島との対話、後半:沖縄での親族との時間と、大まかに3つの場面です。3つとも流れる空気が全然違って驚きます。 久しぶりに小説を読むことに没頭し、読ん

      • 「論語物語」下村湖人

        孔子の教えを弟子たちが綴ったのが論語ですが、それをさらにかみ砕いて、一部抜粋したものが本書です。 それぞれの物語から孔子の伝えたかったことを読み取り、今の自分にあてはめてみながら読むと一見難しそうな論語が少し身近になります。 特に印象に残った3つについて書きます。 意識しているうちはまだまだ貧富で人を差別するなんて絶対にやってはいけない、僕は裕福だが貧しい彼らに対し驕る気持ちを持たないように気を付けよう。と、思っているうちは真に貧富の差を超越したとは言えない。 前に映画『

        • 「夫のちんぽが入らない」こだま

          2017年に世に出てからTwitter上なんかで流行っていたノンフィクション私小説。 タイトルからライトなお話を想像してしまっていたけど、かなり壮絶な本気の、誰かの人生の話で、ちょっとびっくりしてしまった。 幼少期からの母との関係性、甘えることを許されないように感じ、母の顔色をうかがいながら過ごす日々。学校では友人ができず、馴染めない。田舎独特の閉鎖的な空間。やっと大学で少し都会に出て彼氏ができた。その人はのちに夫となる人。でも、セックスができない。物理的に。 自分の意思で

        想田和弘監督 観察映画

          「読書する人だけがたどり着ける場所」齋藤孝

          なんでそんなに本が好きなの?よく聞かれる質問ですが、どうも納得のいく答えができない。好きなものが好きである理由を説明するのってこんなに難しいのか、といつも思います。 でもこの本にはその理由がすべてありました。 書店に行けば読書をすすめる本はたくさんあって、その中の多くが、効率とかビジネスでの成功とか成果とかそういうものを前提に読書のすばらしさを説いています。それはそれでいい。でもなんか足りない。 齋藤さんの語りからは、あゝこの人は本当に読書を信じているのだな、ということが伝わ

          「読書する人だけがたどり着ける場所」齋藤孝

          「A2」森達也

          続編です。 1999年9月にオウム真理教が対外活動を休止する宣言を出したそのあと。 じゃあ先生が死ねって言ったら死ぬんか??教祖の命令であれば、やはりたくさんの罪なき人が犠牲になったとしても従うだろうという信者。 前提として、 神秘的な力によって、その人たちに本当に恩恵があるのだということを人間的な力を超えたところで見抜いていること、本質的な意味ですべての人のためになっていることが必要らしい。 自分の意思に反していても、そもそも修業とは自分というエゴを崩壊させるために行って

          「A2」森達也

          「A」森達也

          1995年地下鉄サリン事件後のオウム真理教に密着したドキュメンタリー映画。広報副部長の荒木浩さんがメインのキャストです。普段映画の感想はFilmarksに載せているんですけど、どうしてもうずうずしてしまったのでここに書き殴ります。前回の投稿「感性は感動しない」にのっとり、できるだけ「かたまり」のままの考えを書きたい。 世の中にはいろいろなもののとらえ方をする人がいるので、前置きとして、これは個人の感想であって、サリン事件を正当化したりオウム真理教に加担したりする意図はないこと

          「A」森達也

          「感性は感動しない」椹木野衣

          #読書感想文 おそらく大学時代の塾バイトで、高校生の生徒に国語を教えていたとき、教材の中でこの素敵な本に出会ったのだと思う。やっと読めた。まずタイトル。めちゃくちゃ惹かれる。タイトルからここまで色々なことを想像できるってそんなにない。感性って感動しないの?では感動しているのは理性か、知性か?理性とか知性で感動するってもはや感情を制御してない?それって感動なの?あ、でも知識によって何かが枠にはまると感動するな…etc タイトルからはなんだか難しそうな美術評論を想像してしまう

          「感性は感動しない」椹木野衣