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「夫のちんぽが入らない」こだま

2017年に世に出てからTwitter上なんかで流行っていたノンフィクション私小説。
タイトルからライトなお話を想像してしまっていたけど、かなり壮絶な本気の、誰かの人生の話で、ちょっとびっくりしてしまった。

幼少期からの母との関係性、甘えることを許されないように感じ、母の顔色をうかがいながら過ごす日々。学校では友人ができず、馴染めない。田舎独特の閉鎖的な空間。やっと大学で少し都会に出て彼氏ができた。その人はのちに夫となる人。でも、セックスができない。物理的に。
自分の意思で異動した職場の小学校では、生徒からいじめのターゲットとなり学級崩壊。死ぬことを考える日々。熱心な教師である夫には責められるのではないかと思い相談できない。死に近づく毎日。ずっと続けたいと思っていた教師もやめてしまった。教師を辞めてから病気になって薬を飲む。薬の問題もあって妊娠ができない。そして38歳で閉経。

この一人の女性の壮絶な人生に、ただただ驚き、これがフィクションでないことを悲しみ同情する、というのが読んでいる最中のわたしでした。
でも、彼女はこの本を読んだ人に、共感とか同情とかそんなものはいりませんとはっきり言っているように思います。

こどもがいない人に自分の子を担当させるなんて不安だわ
こどもできないなんてかわいそうね
今からでも遅くないよ、病院紹介しようか?

善意から発する言葉が最も残酷。
子供がいないと子供の気持ちがわからないとか、人間だれしも子供が欲しいとか子孫を残すことが人間の本能だとか、無職は悪だとか、いろいろな人が無意識に発する自文化中心主義が蔓延する。

この本の中で著者が言いたかったことは、そんな同情いらねえよ
同情も医者も薬もいらねえ、ということなんじゃないかと思います。
ただこの世に77億あるはずの人生のそのひとつはこんな感じですよ、
と、知ってほしかったんじゃないでしょうか。

なのでわたしは、へぇ~そんなことが!と思ってこの人生の一つを想像力の引き出しに追加しました。

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