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なぜハロプロはフェスで輝くのか? 「Juice=Juiceのロッキンデビューをアンジュルムヲタが観て考えた」

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019 2日目はハロプロからJuice=Juiceとアンジュルムが出演した。去年のモーニング娘。'18とアンジュルムの時も「優勝だ。優勝だ」と騒いだものだが、今年もハロプロ勢の圧勝だった。自画自賛だが本当に素晴らしかった。

なぜハロプロとフェスは親和性が高いのだろうか?

■ 無駄に熱いヲタの使命感

Juice=Juiceが出演したBUZZ STAGEは去年アンジュルムが出演したステージだ。巨大テントのステージなので音の反響も良く、歌で盛り上げるハロプロのグループとは相性がいい。また閉じた空間だからこそ会場との一体感も出やすい。

去年のアンジュルムとアンジュルムヲタにとっては「あやちょと過ごす最後の夏フェス」という事もあり、かつ午前中にLAKE STAGEで同じハロプロのモーニング娘。'18が圧巻の集客とパフォーマンスをした事もあって「負けてられん!」という気概と思いが重なって大爆発した。結果、物凄い盛り上がりを見せて『夏将軍』でタオル振り回しながら僕は泣いていた。

あやちょも後日のラジオで「ファンのみなさんの気合が物凄くて、なんでそっちが気合入ってちゃってるのってくらい気合十分だった」と言っているくらいヲタクも熱が入るのは、おそらく承認欲求が異常に高いせいなのだろう。「俺らが(私達が)応援している子たちはこんなに素晴らしいんだ」という事を世間に伝えたくて仕方ないんだと思う。

今年がロッキン初登場のJuice=JuiceとJuiceファミリー(ヲタ)にとっても、隣のGRASS STAGEで欅坂46がトップバッターとして出ている事に「負けてられんし、負けるわけない!」と気合が入っていた。

1曲目『Fiesta! Fiesta!』のイントロが鳴り出した瞬間から地鳴りのような歓声が上がり「フィエスタ!フィエスタ!」とヲタの特大コールから段原瑠々が出撃「情熱を解きーーーー放とう!」とブチかますのに合わせて「うぉおおおおおおお!」と大歓声。もうこれで今日のライブの成功は確定した。

思えば段原瑠々は新加入した最初のライブでも、同じように一発回答で応えてみせた。彼女の声は瞬発力とパンチ力を兼ね揃えている。あれを聴いて何も感じない人間は居ないだろう。音楽が好きなら尚更だ。

「ハロプロはヲタのコール含めてライブ」とよく言うが、対外フェスとなると何時も以上にヲタも気合が入る事が要因のひとつだろう。

『Magic of Love』では僕が聞いた中で一番デカい「ここだよ朋子!」コールが響き渡った。PAブース内で観ていたアンジュルムのメンバーも、あまりのデカさに大爆笑していたくらいだった。

公式動画じゃないけど貼っちゃおう。この時の雰囲気も素晴らしかったが、ロッキンのJuiceヲタの盛り上げてやろうぜっていう気持ちが絶頂に達した瞬間だったんじゃないだろうか。

■ 圧倒的なパフォーマンスの説得力

そして圧巻だったのは宮本佳林だ。この日のパフォーマンスは、今まで観てきた宮本佳林の最高峰だった。

あんなに
近くにいた
竹内朱莉ちゃんは
アンジュルムのリーダーだし
勝田里奈ちゃんは
卒業決まってるし

なんかもう
なんかです。

ブログでそう語った佳林ちゃんだが、心に期する思いがあったのだろう。

2曲目の『「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?』は宮本佳林のアカペラから始まる。「ひとりで生きられそうって……」そう歌い出すと同時に女性ヲタの「キャーー!」という悲鳴のような歓声が聞こえた。それに合わせて佳林ちゃんがスクリーンにアップで映され、彼女は「やってやった」と言わんばかりにニヤリと笑っていた。宮本佳林にカチッとスイッチが入ったように見えた。

そこからもう、煽る煽る。「やれんのか!そんなもんか!もっと来いや!」と言わんばかりに歌い、踊り、観客にアピールをする宮本佳林。いつもは【アイドルサイボーグ】と異名を取る彼女だが、なんだか【アイドルマタドール】みたいなギラつきを見せていた。

そして、そんな佳林ちゃんに触発されてハロプロのアレサ・フランクリンこと高木紗友希もボルテージが上がる。淀みない高音のビブラートと強弱きかせたフェイクが会場を包み込む。時にその歌声の美しさに「おぉ……」と、どよめきも起こっていた。

新リーダーの金澤朋子は、そんな若いギラギラした才能を一歩下がって見守りながら、ポイントを押さえた「かなとも節」を忘れず放り込んでいた。敢えて引くという美学、かなともっぽい。

植村あかりの美しさ、その美貌は立っているだけで説得力があり、そこにあの歌唱力が乗っているのだ。男も女も惚れずにはいられないんじゃなかろうか。その上、終始楽しそうに手を振り、時にしゃがみ込んで笑顔を振りまいていた。女神か、植村あかり。

そして、もしかしたら一番驚いたのが「まなかん」こと稲場愛香に関してかもしれない。歌唱法というか声質というか、今までの少し細くて儚いイメージだった歌声が、その儚さは残しながらボリューム感のあるメレンゲのような質量を持っていた。ボイトレしたのかな?終わった後、ヲタたちもザワついていた気がする。すごかった。

さて、勢いで全メンバーのレビューをしてしまったが、このように全員が個性的かつ高次元のパフォーマンスを観せられるグループはない。

いまだにアイドルは口パクだというレッテルが横行する中で、一瞬にしてその先入観を吹き飛ばしてしまう力は興味本位で観に来た音楽好きを唸らせるに十分なものだろう。

■ ライブを楽しみ、ライブで楽しませる

何よりも本人たちがライブを楽しんでいる事。あの炎天下の過酷な環境にあって、ノンストップで歌い踊るだけじゃなく、その表情が終始笑顔である事が驚きなんだと去年のモーニング娘。'18を観た人の感想でもしばしば見かけた。

Juice=Juiceのみんなも楽しそうに歌っていた。楽しい気持ちは伝播する。会場全体が高揚感に包まれていた。歌の上手い人は沢山いる。そこに感情を乗せて飛ばせるかどうかが特にフェスみたいな様々な客層のいるライブでは重要なファクターだと思う。

気持ちだけじゃない。普段から小さなライブハウスでもやりつつホールコンサートから武道館規模まで幅広いキャパでライブをしているからか、その箱の広さにあった目線を送る事が自然に出来る。だから目の前の客だけじゃなく、左右から奥の方にいる米粒くらいの客まで平等に言葉を投げかけられる。なかなか簡単には出来ないテクニックだが、ハロプロの子たちはそれが上手い。

■竹内朱莉の場を盛り上げる天賦の才

中でも飛び抜けて上手いのがアンジュルムの新リーダー竹内朱莉だろう。今年のアンジュルムはFOREST STAGEという森の中のステージだった。

自分は最前線のエリアに居たので、後ろがどれくらい入ったかライブ中は分からなかった。だが、りなぷ(勝田里奈)が物凄い笑顔だった。メンバー全員が満面の笑みで「いっぱいいる!」と驚いていた。

森の中やフードコートの方まで溢れるくらい立ち止まって見てくれる人達がいたらしい。それを見逃さないで巻き込む上手さが竹内朱莉にはある。

MCでも何時ものように「後ろの方まで見えてますよー!」とまず会場全体の観客にアピールし、隣接するフードコート側に向かって「フードコートまで沢山ありがとうございます!」と手を振り、PARK STAGE方面の木陰で座って眺めている人たちにも「木陰で休みながらも見て下さって、ありがとうございまーす!」「座りながらでもジャンジャン煽るんで、良かったらノッて下さいね!」と言いつつ「前の方の何時もの人たちは、何時も通り盛り上がってね!」と最後に僕らを乗せる。

「うぉおおおお!」と盛り上がる僕たち。そこに『46億年LOVE』のイントロ。そしてタケの「みんな思いっきり騒いでね!」とダメ押し。そら盛り上がる。最前線が率先して騒げば、それは波のように後ろへ伝わる。

『46億年LOVE』で観客を乗せた所に畳み掛けるように『大器晩成』。正直、普段からライブに行っている連中には食傷気味ではあるが、やはりフェスみたいな環境では曲の知名度含めてキラーチューンとなっている。

また、先日のTIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)みたいなアイドルフェスに出る時にはスマイレージ時代の『夢見る15歳』とか『有頂天LOVE』をセトリに組み込むことでライト層へ訴求効果が図れたりと、TPOに合わせた複数のキラーチューンを持てるようになったのはアンジュルムにとって大きな財産なんじゃないだろうか。

そして『大器晩成』の時のタケの煽りは秀逸だった。

まるで稀代のヒップホップMCのように歌いながら「はい!ここでジャンプ!」「いい!次、覚えてくださいね!」「いきますよ!ジャーンプ!」とテンポよく淀みなく、何より気持ちよく観客を誘導していた。

リズム感の鬼である竹内朱莉だからこそ出来る技かもしれない。唯一無二のリーダーだった和田彩花とは違うベクトル、違うスキルでアンジュルムの新リーダーは唯一無二の存在なんだと確信した瞬間だった。

竹内朱莉さんの煽り続ける姿
最高でした。
かっこいい。

言葉のレパートリーが物凄いし
たっっくさん人がいるのに
誰一人置いてけぼりにならないように
隅々まで気持ちを飛ばしていて
声を張っていてかっこよかった。。

ロッキン終了後のJuice=Juice稲場愛香の感想だが、なかなかあのレベルの煽りをやれるアイドルは、いやアイドルに限らず居ないと思う。

そら最後の『夏将軍』は全員がタオル回すわけですわ。

■ハロプロとはロックである

ライブを大切にし、生のライブ感を何よりも優先する姿勢、ハロプロに脈々とある魂みたいなものがロックフェスとは相性が良いのだろう。今の時代、ロックバンド自体も活動の仕方が難しくなり、ロックフェスと言いながら「ロックとは?」みたいに言われがちなラインナップと揶揄されるけど、いやいやバンドだけがロックじゃないよと言いたい。

何よりもハロプロの根幹を創ったつんく♂が常日頃から「ロックやで!」と口癖のように言っていたわけで、だからハロプロこそロックの定義を担っているんじゃないだろうか。

8月10日のGLASS STAGEにはモーニング娘。'19が立つ。早朝に6万人が集まるかどうかは分からない。だが「朝から凄いの見た」と言わせて欲しいと願っている。

■私立恵比寿中学

最後に4日のLAKE STAGEにはスターダストのアイドルグループ私立恵比寿中学が立った。あの炎天下の一番しんどい時間に立つという厳しい条件だったけど、感動した。

エビ中も10周年らしい。その間、ハロプロとはまた違う様々な出来事があった。外からは計り知れない思いをメンバーもファンもしてきたと思う。

だが、あの瞬間のLAKE STAGEには「楽しむぞ!」という気持ちで溢れていた。ステージ上は体感何度になってたか分からない灼熱状態、すり鉢状の会場もアスファルトからの照り返しでとんでもない状態だった。

それでもみんな笑顔、笑顔だった。楽しそうに踊るファン、それを見て楽しそうに歌うメンバー。素晴らしい光景だった。

そして『まっすぐ』を大切に噛み締めるように歌うメンバーと、それを聴き入るファンの対比、ジンとさせられた。

ハロプロはロックであると言ったが、アイドルという存在が、すべからくロックなんだろう。そんな気持ちになるロッキン2日目でした。アイドルっていいね。

■モーニング娘。'19

8月10日追記。モーニング娘。'19がロッキンのGRASS STAGEに降臨した。トップバッターなので、登場前にロッキング・オン代表取締役・渋谷陽一さんのMCがあった。

「(去年)彼女たちはロックフェスだからといってロック仕様にした訳じゃなく、いつも通りのパフォーマンスをやって、あれだけの熱狂を繰り広げてくれた。まさに、このロックフェスがモーニング娘。を発見したわけです。」

そう言わしめた。最大級の賛辞だ。

そして、彼女たちはその期待に最大級のパフォーマンスで応えた。GRASS STAGE朝から大熱狂の満員御礼だったらしい。

Twitterのトレンドも彼女たちの50分間ノンストップ14曲パフォーマンスに度肝抜かれて大騒ぎだった。遠く横浜の地でポケモン捕まえながら流れてくるTweetの数々を読むのも楽しかった。

誇らしいね。これで、これで何か変わるかもしれない。大きな流れが生まれるかもしれない。

そんな気持ちになった夏の夕暮れですわ。

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