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DTMer@Suno 2023冬、未知との遭遇~考えてみたシリーズ 05~

DTM(パソコンで作曲するアレです)をたしなむ筆者が、AIイラストをきっかけに、AIと人間の創造性について考えたことをまとめていく知的探求ロマン…という体をとった一過性の心情をダダ流ししていくシリーズ

過去記事は以下↓

さあ、今回はついに本丸との対決(?)になります。
みなさん、ご存じですね。
テキストだけで超絶クオリティボーカル曲ができてしまう楽曲生成AIの究極形、Sunoについて書きます。

※本稿では便宜上、プロアマ問わず、作曲を行う人をDTMerと表記します。

未知との遭遇 ~うろたえ編~

余裕をかましていた半年前

先にリンク先を張り付けた記事の中で、以前こういうことを書きました。
以下、スクショをコピペ。


↑大海の流れを知らず、縁側でお茶をすすってる感が満載ですね↑

上記記事を書いてから約半年後、音楽界に黒船がやってきました。

「たった四杯」どころか一杯で夜も眠れず

つたない記憶をたどると、おそらくこのまにまにさんの記事でSunoを知ったと思います。そして、「ふむ、じゃあAIさんの作った歌モノとやらを聴いてやろうじゃないの」と大物プロデューサーにでもなったような尊大さで、まにまにさんが生成された楽曲をポチってみました。

ビビりました。震えました。青ざめました。血の気が引きました。

半年前に記事中で、「AIの日進月歩ぶりはすさまじいので、曲調、速さ、歌詞等をテキストで流し込むだけで、人気ボカロP並みの楽曲が数秒で出来てしまう未来は遠くないような気がします」と書きましたが、その時は、「遠くない未来」にたどり着くまで2年くらいはかかるかな、と思っていました。
それなりにAIに関心を持って情報に触れてきたつもりでしたが、甘々の甘ちゃんでした。
未来はもうそこにありました。

最近聴いた曲ではコレ↓

ビデオクリップと相まって、「UK出身、話題の新人アーティスト」と言われても信じ込んでしまいそうなクオリティです。

音楽生成AIは以前からもありましたし、Sunoのサービス自体は以前から始まっていたようですが、このバージョンアップしたSunoは、大げさ抜きに僕にとっての黒船でした。

加えてAI生成楽曲の現状

情報というか、ググって出てきた投稿ですが、驚きました。知りませんでした。

「Spotifyで聴ける16%が既にAIで作られた曲だといわれてるらしい」

…マジですか?

未知との遭遇 ~実践編~

Sunoに対するDTMerの反応は…

さて。

Sunoの仕上がりっぷりは凄まじく、ネットでは「スノ! スノ!」の大合唱。
作品がバンバン上げられ、その熱は今も続いています。

では、DTMer側の反応はというと、

上記記事を読むと空気感が伝わります。

自分がSNS等で見る限り、(日本における)DTMerの反応は、

・驚愕
・面白がって、Sunoを使って色々作っている
・静観している

…のどれか、またはそのミックスといった感じです。
そして多くのDTMerは静観しているように思います。

AIイラストが登場した時のような反発は、(僕が見る限り)あまり見受けられません。

なぜ表立った反発が出てこないのか

これには色々な理由が挙げられると思います。
以下、僕が考える静観の理由です。

【前書き】
箇条書きで論じていく前に、前書きを一つ。
冒頭に述べたように、僕はAIイラストをせっせと作っています。

なので基本AIに好意的ですし、棒人間しか描けない人間がAI使ってイラストをネットに上げているわけだから、同じことが音楽で起こっても冷静に受け止め、受け入れようと思っています(音楽を仕事にしていないから言えることではありますが)

では、カウントダウン、ちぇきらー

①やっていることが旧来の曲作りとかけ離れていてあっけに取られている

今現在、Sunoによる楽曲生成は、かなりの部分、ガチャ要素が強いようです。
自分でメロディ考えて、リズムパターン考えて…という旧来の作曲スタイルとはまるで違いますよね。

で、「あっけに取られている」と書いたことには意味がありまして。
Sunoによる楽曲群を聴いた時、驚きはあったものの、怒りや侮蔑の感情はほぼありませんでした。
これに関しては、強がりでもなんでもありません。

僕にとって曲を作ることは、メロディを自分で作ることです。
それが仮に「うわ、〇〇っぽいすね」と秒殺で看破されるものだとしても、自分でひねり出すことが曲作りの面白さだと思います。

歌詞はというと、僕の場合、メロディ先行で作ることもあり、メロディと歌詞は一体です。
だから、歌詞だけ放り投げて曲ができても、正直「作った」気にはなれません。

なので、試しにSunoで何曲か作ってみたものの、今までやってきたことと別世界過ぎて、喜びもなければ憎しみも感じませんでした。

※注1:Sunoユーザーを非難したり、嫌悪したりするつもりはありません。なんというか、それはそれ、これはこれ、というか。
さすがに「Sunoで曲作りの楽しさに目覚めました」とか言われると、こぶしを握ってしまうかもですが。
※注2:DTMerでもガチャにハマっている方がいらっしゃるようなので、人それぞれではあると思います。

②カスタマイズできない

僕の知識不足だったらすみませんが、2023年末現在、画像生成AIにおけるStable Diffusionのように無料で使えて、かつ色んな拡張機能を試せる音楽生成プラットフォームはありません。

Sunoにせよ、他のサービスにせよ、企業か研究機関が作ったプラットフォームを利用するにとどまっています。Stable Diffusionのように色々試せるわけではなく、プロンプトで工夫するのがせいぜいです。

もし楽曲生成AIが進化して、「音色を変えられる」「音源を差し込める」「自分の声を反映できる」などの機能がついた、オープンソースのStable Diffusion的決定版が出たら状況は一変するかもしれません。

③一曲の最長時間の問題

これ、結構大きい制約だと思います。有料プランでも2分20秒。いわゆる「フル尺」の曲を作るのは難しい。ゆえに、作った曲をそのまま完全自作曲と言い張るのは無理がある。
ショートバージョンで素晴らしい楽曲ができたとしても、「じゃあ、このフル尺を聞かせてください」と言われたら作れません。
裏返せば、DTMerにとってすぐに「歌モノのライバル」になりえないのでは、とは思います。

ただし、短い動画やCMに使用する分には問題ないでしょうし、時間の制約など、あっという間にクリアしてしまいそうですが。

追:相談次第では、もっと長い尺も作れるようです

④元々AIや作曲アシストサービスに慣れている

他の記事で書いたので詳細は省きますが、DTMerとAI(および作曲アシストサービス)の親和性は元々高かったので、イラスト等に比べると拒否反応は少ないのでは、と思います。

※ここで脱線

自分はループ音源やEZシリーズ(作曲アシストソフト)を多用しています。
少なくとも日本のDTM界では、時に「チート」扱いされることもありましたが、Sunoに比べたら全然かわいいもんです。
もはやループ音源使用の是非とかで議論する時代は過ぎ去ってしまいました。

※脱線終わり

⑤音楽独特の文化

hip-hopにおけるサンプリングをはじめ、音楽では他の楽曲の一部を使って新たなものを生み出す、という文化があります。
そしてそれを良しとする土壌もあります。

ネットに上がっているマッシュアップ作品の多くは無許可だと思いますが、それを「違法だ! 泥棒だ!」と責める人はほとんどおらず、出来が良ければ「クール!」と称賛さえされます。

そもそもカバー曲なんてのは、(ちゃんと使用権料を払ってるにせよ)他人の曲を丸っと使っているわけですが、カバーしている側はアレンジをバンバンしてます。
むしろ、原曲のフレームは残しつつ、いかに個性を出せるかというところが力の見せ所だったりもします。

ここは他のジャンルにはない、音楽の独自性かもしれません。

なので、AIによる生成に関してもアレルギーは少ないのかも、です。

⑥音楽にはライブという表現空間がある

ミュージシャンにとって、イラストや小説にない強みはこれじゃないでしょうか?

CDの売り上げは壊滅的になり、サブスク配信だけでは多くのミュージシャンが食べていけない中、ライブが収益の柱になって久しくなります(コロナ禍で大打撃をこうむることにはなるのですが)

AIが自動で曲を作ったとしても、さすがにライブ活動まで取って変わることは想像できないので、特に演奏活動ができるミュージシャンは、今後AI技術がじゃぶじゃぶ流れ込んできてもアイデンティティ(加えて収入も)を保てると思うのです。

まあ、金になるかどうかはさておき、一人でアコギ弾き語りしてるだけでも楽しいですしね。

⑦(余裕はないが)余裕をみせている

僕もそうです。
この問題に限らず、怒ったら同じ土俵に立つことになります。

なので、「まあ、お手並み拝見といきますか」と静観するのが、精神衛生的にも吉なのでは、と思います。

そう言いつつヒザはガクブルですが。

まとめ

というわけで、そろそろまとめます。

Sunoは凄まじい。とんでもない。
それは事実です。
でも、「もう曲を作る気失せたぜ」とまでは追い込まれていません。

強がり?

うーん、そうかもしれません。
ただ、「単なる負けん気の問題だけじゃないよ」という弁明もしたいので、最後に以前作ったボカロ曲の中でお気に入りの物を一つ、そしてその曲の歌詞をSunoに流して生成した曲を貼って終わりにしたいと思います。

↑GUMIによる自作曲。うむ、良い曲だ(おい)

↑こちらが、Sunoさんによる同じ歌詞での曲

「Sunoの方が好き」と言われたとしても甘んじて受け入れますが、できたものがあまりにも違いすぎます(そりゃそうだ)。

なので。
自分でメロディを作る人間にとって、Sunoは敵でも味方でもなく、百万光年離れた惑星からやってきた未知なる何か、なのです。

お、タイトルとつながりましたね。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。



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