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AI:イラストと音楽でぼんやりと比べてみる ~考えてみたシリーズ03~

DTMer(PC等で音楽を作る人)がAIイラストにドはまりして考えたあれやこれやを語るシリーズ。

過去記事は以下になります。

これまでの内容を雑にまとめると

・AIイラスト超楽しい
・ボカロPという立場からしても、これは百年に一度の大革命
・音楽界にもAIのビッグウェーブが押し寄せてるので、他人ごとではない

…といったところです。

今回は、AIに関するイラストと音楽の違いについて、自分なりに書きたいと思います。

音楽の方がAIとの付き合いは長い

AIイラストの現状(ものすごく大雑把に)

2023年6月現在、画像生成AIについての議論は尽きません。

自分はAIイラストにドはまりし、そのためにハイスペックのWindowsマシンを購入した口なのですが、(いまだ)AIイラスト、およびその制作者は、反AIの方々からサンドバッグです。

一部のスキルマーケットや同人販売サイトでも様々な理由から「AIお断り」と言われている一方、PhotoshopがAIを応用したとんでもない機能を搭載するなど、今後どうなるのか全く分かりません。

一方の音楽

自分はプロでもなんでもなく、約5年前くらいからDTM(PCで作曲するやつ)を本格的に始めた人間なので、歴史を十分に網羅できているわけではありませんが、イラストに比べるとだいぶ早く、音楽業界にはAIが入り込んできています。

DTMer(DTM愛好家)にとって一番身近なのは、ミックス・マスタリング(曲の仕上げと思ってください)のツールとしてではないでしょうか?

超有名どころとしては、筆者も「神」と崇めるiZotope(アイゾトープ)社のOzone(オゾン)シリーズ。
曲の最終仕上げ段階であるマスタリングをソフトがやってくれるのですが、ざっと調べたところによると、2018年リリースのOzone 8から、AIを使ったマスタリング機能を搭載しています。

その後リリースを重ねるごとにパワーアップして行き、現行の10は「革命」と呼べるほど、音が良くなっています。

もちろん、プロのサウンドエンジニアが手掛けた楽曲に比べると見劣り(聴きおとり?)しますが、ざっくり80~90点の仕上げをしてくれます。
ワンクリック、ものの数秒です。

上記の他にも、メロディ生成、コード(伴奏の和音)生成など、AI搭載を謳ったソフトは数年前からたくさん出ています。

そして、ここ半年~1年くらいで、AIによる楽曲生成の研究、サービス(無償&有償)は百花繚乱と相成りました。

ついでに言うと

AIではありませんが、DTMには作曲をアシストする強力なソフトやサービスが以前から揃っていました。

例えばループ音源。
楽器やボーカルの短いフレーズをパズルのように制作中の楽曲に張り付けることができます。
そのおかげで、楽器が弾けなくても、それなりにかっこいい曲を作ることができます。
ループ音源は、作曲ソフト(DAW)にはじめから入っていたり、Splice(スプライス)のようなサブスクサービスに加入して、利用したりします。

もちろん合法で、商用利用可のものが大半です。
プロのミュージシャンも使っています。

また、三大神と崇められている(自分がそう呼んでるだけですが)EZ(イージー)三兄弟も有名です。
Toontrack社からリリースされている作曲アシストソフトで、ドラム、ベース、鍵盤と三種類あります。

リズムや伴奏を全部自分で作り上げていくのはなかなか骨の折れる作業ですが、それらを簡単に、しかもハイレベルで仕上げてくれる優れものです。

ただし。
上記の超絶便利サービス&ソフトについては、DTMerの中でも意見が分かれるところで、少なくとも日本では、ループ音源やEZ三兄弟を使っていると、バカにされないまでも軽くみられる風潮はいまだにあるような気がします。

ちなみに自分はガンガン使っています。

なぜ音楽クラスタがAIについてそれほど騒いでいないか、についての見解

あくまで個人的印象ですが。
AIイラストをめぐる大激論に比べると、2023年6月現在でも、音楽クラスタの中ではAIをめぐる議論はさほど活発ではありません。

もちろん、ミュージシャンの中で反AIを宣言している人もいますし、歓迎している人もいます。
BGM提供サービスに、AIがガッツリ食い込んできたことの影響も少なくないと思います。

ただ、イラストに比べるとだいぶ穏やかな状況だと思います。

なぜか?

1.AI慣れしている

先述した通り、音楽業界にはすでにAI(およびそれに準じた作曲支援サービスやソフト)が食い込んでいました。

ループ音源やAIメロディ生成に眉をひそめる人でも、Ozoneはガンガン使っています。
DTMをやっている人で、AIと全く無縁という人はいないんじゃなかろうか、と思います。

なので、AIに対するアレルギーは、比較的緩やかだったのでは、と思います。

2.イラストと音楽の性質の違い

これは、絵が主役という意味では変わらないイラスト業界とマンガ業界、その二つの業界でAIに対する反応がだいぶ違うことと似ていると思いますが。

イラストや絵画は「点」であり、音楽やマンガ、小説などは「線(または面)」です。

音楽やマンガ、小説、映画など展開、ストーリー性のあるアートには時間や流れが存在するため、構成や練りこむアイデアに、人間の入り込む隙間がまだまだあると思います。

一方イラストや絵画は「点」です。
一枚ドーンで勝負です。
だからこその、インパクト、訴求力があります。
音楽は好みかどうか判断するまで、場合によっては数十秒~一分以上かかりますが、絵は下手すると一秒かかりません。
コンマの世界で心を持っていかれます。
(その分、飛ばされるのも瞬時というつらさもありますが、音楽の場合、そもそも聞いてもらえないことの方が多いです)

逆に言うと。
AIに一枚のイラストを超絶技巧で(しかも短時間で)仕上げるられると、人間が創ってきた歴史を否定されたような気分になるのも分かるような気がします。

ちょっと話がとっちらかってきましたが、音楽は時間という軸がある分、色んな要素で成り立っているので、「人間、まだいける」という気分でいられるのかな、と思います(自分も同様です)

今後がどうなるかわからないのは、音楽も一緒ですが。

3.AI生成楽曲が(今のところ)思ったほどではない

これについては、意見が分かれるところだと思います。
2023年6/11現在、MusicGenが「すんごいAIサービスが現れた」と話題になっており、「そんな悠長なこといってられんの?」というツッコミがどんどこ飛んできそうです。

MusicGenも含め、AI楽曲生成サービスを試せる範囲で試してみましたが、

「動画のBGMとしては十二分に使えるクオリティだが、プロアマ問わず、音楽への情熱を木っ端みじんにされるほどの神通力はない」

というのが感想です。

もちろん、十秒~数十秒程度で、2~3分の楽曲がイメージ通りにできることはすごいです。
が、基本、似たようなフレーズをつなぎ合わせて指定された時間を埋めている、という印象がぬぐえません。
(マッハでできてしまうのは脅威ですが)

さらにボーカルとなると、まだまだAIが数秒でサクッと生成とはいきません。

これやられたら作曲する気が起きない、という現状ではない、というのが僕の感想です。

言いたかったことは

別に「イラスト業界は大変だねえ」と高見の見物を決め込んでいるわけではありません。
AIの日進月歩ぶりはすさまじいので、曲調、速さ、歌詞等をテキストで流し込むだけで、人気ボカロP並みの楽曲が数秒で出来てしまう未来は遠くないような気がします。

ただ、AIイラストをめぐる議論において、かたや「盗人」とか「闇落ち」などとAIユーザーを叩き、かたや「お気持ちだけで動いている」「時代遅れ」と反AI派に応戦するという「争い」が8~9か月は続いているのを見るにつけ、DTM愛好家かつAIイラスト好きとしては、「音楽クラスタについてはこんな感じですよ」というものを、少しでもお示しできれば、と思った次第です。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。


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