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自分の好きがわからない女が見つけた、「似合う」と「好き」の着地点

断捨離しコスメを変え髪を切った私は、いよいよ新しい服を買おうと銀座へ繰り出した。先に結果だけ書くと、何も買わずに帰ってきた。でも今、ものすごく深い満足感と安心感で満たされている。

実際に着てみたことで、今の自分に最高に「似合う」服がわかったから。

出かける前、新しい服を選ぶには「これからどんな自分になりたいか」が必要な気がして、「なりたい」「好き」「似合う」についてあれこれ考えを巡らせていた。でも強烈な「似合う」を目の当たりにした瞬間、すべての思考が一瞬で吹っ飛んだ。

私にとってのファッションは、今・ここにいる私以外の誰かに「なる」ためのものじゃない。本当に「似合う」服を着ると、私は私のままでいい、と心の底から安心できて、体の奥から力がみなぎってくる。私はそれを着ている自分のことが「大好き」だ。

これがnoteを書きながら散々考えて、実際街に出てあれこれ試着したことで辿り着いた、今の私なりの結論だ(注:あくまで私にはこう考えるのが一番しっくりきたというだけで、他の考え方を否定するつもりは全くない)。

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この話には、エピソードゼロがある。銀座に行くより前、髪を切った日に、地元でごく短時間のウィンドウショッピングをしたのだ。

その日、直感で入ったお店で「とにかくラインがきれいなパンツを探している」と伝えると、店員さんは迷わずネイビーのセミワイドストレートパンツを出してくださった。試着して、世の中にこんなにきれいなパンツがあったのかと驚愕した。生地の余裕が生み出す揺れ感が、脚を劇的にすっきり見せてくれる。なんだ、私に合うパンツ、ちゃんとあるじゃん。

一緒にすすめられたビッグシルエットのシャツを着てみて、二度びっくり。ショートヘアとの相乗効果で、首がすっきり細く、きれいに見える。ワイドなボトムス×ビッグなトップスってもしや、胸板が薄く腰張り脚太、首だけがチャームポイントな私には最強の組み合わせなのでは…?

次の予定が迫る中、試着室で考えた。

パンツは生地が薄くてアジャスターがないのが気になるけど、形は最高だし、ネイビーってトップスの色が引き立ってすごくいい。トップスはニット単体より、白シャツを重ねた方が色もシルエットもきれいだな。シャツならガンガン洗えるし、暖かくなったらシャツ1枚にカレを巻くのもいいかも。

よし、今日は買わない。次の買い物で、ネイビーのワイドパンツと白シャツを探そう。ここでそう決められたことが、後の私を大いに助けてくれた。

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銀座は、雪混じりの雨だった。

最初に入ったのはGINZA SIX。ブランドは限定せず、ひたすらネイビーのパンツを物色した。探すアイテムの具体的なイメージを持っていたことが吉と出て、今まで一度も入れなかったブランドや全く興味がなかったブランドに何の気負いもなくスッと入り、すんなり試着までできてしまった。

「何かいいものないかな」というあてのないショッピングだと、そもそも入店までのハードルが高い。仮に入店しても、店員さんの「今日は何かお探しですか?」に答えられず、居心地が悪くなってすぐ退店してしまう。

そんな買い物ばかりしていた私が、MARNIで堂々と「ネイビーのワイドパンツを探しています」と言えるのだから、面白い。おしゃべりしながら1着優に10万越えのアイテムをばんばん試着するのは、めちゃくちゃ楽しかった。

MARNIで一番気に入ったのは、ネイビーワイドパンツ×アイボリーシルクブラウス×イエローカシミヤカーデの組み合わせ。試着室から出た途端、遠くにいた別の店員さんが驚いて顔を上げ、「お似合いです」と呟いてくれた。

特に気に入ったのが、シルクブラウス。絶妙なラウンド型のスタンドネックがとにかく美しい。前身頃のギャザーが上半身に自然な立体感をもたらしてくれるのも、胸板の薄い私にはありがたい。蝋みたいなボタンも可愛い。

画像は公式オンラインからお借りしました

ブラウス1枚でももちろん素敵だが、裾をアウトにして短め丈のカーデを合わせると、雰囲気が一気に今っぽくなる。潔いほど極太のワイドパンツに合わせた全身バランスがすごく良かった。

画像は公式オンラインからお借りしました

とはいえ、さすがに手洗い不可の高級白ブラウスを日常使いする気には全くならない。丁重にお礼を言って、お店を後にした。

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「私、MARNIの服着れたもん!」(リップサービスにしても)という謎の高揚感で、俄然足取りが軽くなった。GINZA SIXではさらに数店舗見たがヒットはなし。和光ティーサロンでお昼を食べて休憩し、銀座三越に移動した。

これはと思ったブランドで「洗える素材でネイビーの、セミワイドかワイドのパンツはありますか?」と聞いて回ること、3軒目。入ったのはENFÖLD

「はい、最近は洗える素材、すごく多いです。こちらはいかがですか?」

答えてくださったのは、美しい漆黒のロングヘアを1つに束ねた店員さん。オールブラックコーデにオレンジのヘアゴムが効いている。差し出されたのは、パッと見、ここまでじゃなくてもと思うほどワイドなパンツ。一瞬だけ迷ったが、生地の手触りがものすごくいいので穿いてみることにした。

ついでに「白シャツはありますか?」と尋ねると、ビッグシルエットシャツを2枚紹介された。丈感はどちらもイメージ通りだが、デザインが大きく違う。迷うことなく、MARNIでハマったのと同じスタンドカラーを指さした。

着てみると、試着室で思わず「おぉ」と声が出た。

吊るしでかなりワイドに見えたパンツは、穿いてみるととても立体的なパターンで、脚のどこにも密着せずにすっきりとしたラインを描いている。しかもアジャスター付きでしゃがんでも楽。おまけにこの肌触り。ポリとレーヨンの混紡なのだが、なめらかでまろやかで、このままずっと穿いていたい。

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シャツもいい。MARNIよりギャザーは少ないが、その分ペプラムが大きな存在感を放っている。ウエストより高い位置から裾に向かって広がるデザインは、腰張り体形の強い味方だ。袖がぽわんと膨らんでいることで、重心が下がりすぎずうまく全体のバランスが取れている。

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これは、と思いながら試着室から出た瞬間、「いいですね!」と声をかけられた。「良かったらカーディガン羽織るのもおすすめですよ。ショート丈のちょうどいいのがあるんです」なるほど、ワイドパンツ・ロングシャツ・ショートカーデの組み合わせは、MARNIでいいなと思ったバランスだ。

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袖を通して鏡を見た瞬間、思った。

これだ。この組み合わせだ。

もう、何も考えられなかった。

ただただ、鏡の中の自分に驚いて、嬉しくて、幸せだった。こんな服、見たことない。こんな私、見たことない。ああ、これだ。こういう服が着たかったんだ、私。

自分に似合う服を自分で見つけられたことが、たまらなく嬉しかった。それだけで十分心が満たされてしまって、購入に進む気持ちにはならなかった。買わないことに店員さんも驚いていたが、心からお礼を伝えて退店した。

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帰宅して考えてみると、ENFÖLDのコーデはまさに、「ラインの美しさ」「上質な艶感」「鮮やかな色」という手持ちのお気に入りアイテムに共通する要素が全て揃っていた。それで納得した。これは、私の服だ。

自分の体形に向き合って、短所と長所を自覚したこと。ライフスタイルを考えて、パンツがいいと確信したこと。お気に入りアイテムの特徴を見つけたこと。服を選ぶ前に、メイクと髪型を見直したこと。探すアイテムの色と形を事前に絞り込んでおいたこと。これらのうちのどれが欠けても、こんなに似合う服には出会えなかったと思う。

次はまっすぐENFÖLDに行って、隅から隅までじっくりブランドの世界を堪能したい。実はちょっとだけ気になる点もあるので(ぽわん袖って実生活で邪魔にならない?アウターはどうする?)、そこをもう一度よく考えた上で、心から納得する服を買うつもりだ。

「似合う」はこれから先もずっと、常に更新し続けるものなんだろう。あるいは違うテイストの服が着たくなるかもしれないし、もっと実用的な服が必要になるかもしれない。でもそれはきっと、今の自分を最上級に素敵に見せてくれる服を着て生活していたら、またわかってくること。

春が来る。新しい自分で一歩、踏み出そう。


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