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yee展示会で転生した話〜スギサキさんのカラーレッスンで知りたいことに気がついた

yeeの展示会に行った。驚いた。だけどすごく大事なことに気がつけた。目前に迫ったカラーレッスンの前にどうしても書き留めておこうと、noteを開いている。


セレクトショップオーナー

スギサキさんのアトリエに私が到着した時には、すでに他のガールズさん達の試着がたけなわを迎えていて(複数名で長時間枠を頂戴しており、私だけ遅れて合流させていただいた。スギサキさん・みなさんに感謝!)、ものすごい熱気にクラクラしそうなほどだった。目に飛び込んでくる柄、柄、柄。そして溢れる色の洪水。

何が起きてるんだ?と一瞬固まっていると、はいこれ着てください、と阿笠さんがニッコリ笑って黒のパフスリーブワンピースを手渡してくださった(この日、試着を手伝ってくださる阿笠さんの身のこなしが終始プロすぎてびっくりした。もはや見学のプロ(?)。その節は本当にありがとうございました!)。

はい、素敵ー。

これは嫌味のないていねいな暮らし…かと思いきや、鏡を見たら全然もっと、遥かに素敵(別に「ていねいな暮らし」に恨みがあるわけじゃないです、念のため)。さりげないウエストのくびれにふんわり揺れるロングのフレア、ガンダムにならない摩訶不思議なパワショルに、キュッとすぼまった袖口もキュート。パリッ、シャリっとした素材の質感がどこか都会的で、洗練されたリラックス、というか。

続けて同じ色・同じ生地のシャツ型ワンピースを着てみると、雰囲気が全く違う。ウエストマークのないゆったりシルエットにシャープで大きめな襟、絞りがなくガバッと開いた袖口。パッと見はこちらの方が好みだけど、私が着るとなんだかピンとこない。しかし、なかまちさんにはべらぼうに似合っていた。これ、パワショル型が似合う人と、シャツ型が似合う人に分かれるワンピースなんだね、と盛り上がる一同。

あっけに取られつつ、阿笠さんに手渡されるまま次に着たジャケット2型&パンツは、似合わなくはないもののなぜか何らかの圧がすごい。(「こういう人青山にいるー!」「セレクトショップのオーナー」「「爆笑」」)でも、同じ色柄のスカートをdmsさんが穿くと、めちゃくちゃ馴染んでいてどこまでもさりげない。あまりに似合いすぎていて「あれ、今日最初からこれ着てました?」と思った。

続けて試着したとろみ素材のブラウスは、確かお粥会でちかPさんがお召しになっていて「素敵…!」となったもの。なのに私が着ると、完全にヤバいセミナー講師になった。扱ってるの、変な壺とか微妙な土地とか、絶対なんか真っ当じゃないやつ。鏡の自分が気持ち悪すぎて、写真も撮らずにすぐ脱いだ。

こんな感じで、同じ服の見え方が人によってガラリと変わることに驚きながら、全部着る勢いで片っ端から試着していった。

ちなみに上記の表現は、間違ってもyeeのお洋服をけなしているわけではない。全く逆で、服としての完成度が高すぎるがゆえに、あらぬ方向に向かって全く別の世界観が完成してしまったんじゃないかと思っている(狙ってこんな格好や雰囲気にしている人は確実に世の中にいるな、という感じ)。

オレンジのパンツ、そして転生

どこの時点だったか、スギサキさんがオレンジのパンツをさっと差し出してくださった。柿のような枯れ葉のような、何とも形容し難い絶妙な色。決して苦手ではないけれど、普段の自分ならおそらく手に取っていない。「これ、穿いてください」というスギサキさんの確信に満ちた声に、一も二もなく素直に従った。

すると、無敵になった。

これさえ穿いていれば、後は何でもいい。着るもの全部が似合って見えてしまうため、何を選べばいいのか判断できなくなってしまい、逆に困って途中で脱いだ。「ボトムスは顔から離れているから何着てもいい、なんてよく言うけど、逆にボトムスが似合っていたら他は何着たっていいんですよ」というスギサキさんの解説に、思わず唸ってしまった。

この時点で私は、名高いスギサキさんのカラーレッスンをまだ受けていない。実は近日中に受講する予定なのだが、日程の都合上先に展示会にお邪魔していた。

ちなみに私のパーソナルカラーに関する知識は、びっくりするほど浅い。以前受けた診断は4分割ではなく、「黄み・青み」と「明度・彩度」で「似合う」を解説するところだったのだが、どうやら私にはちょっと難しすぎた。明度と彩度の区別すらろくにつかなかった私は、「イエローベース」で「明るい色が似合う」という言語情報を適当に繋ぎ合わせた結果、自分はイエベ春だと思い込んで生きてきた。

それなのに、スギサキさんが中盤以降すすめてくださるアイテムは、ものの見事にオレンジと茶とカーキ。鮮やかなブルーの花柄を着れば「お花、かわいいですね」になるのに(人間本体に目がいかない時点で柄に負けている=似合っていない、と説明されてこれまた納得)、同じ柄のオレンジを着るとなぜか花が見えなくなる。

「え、私、こっちの(色が似合う)人間だったの…?」

思わず呟くと、「レッスン前だからネタバレはやめようと思ってたんですけど…」と苦渋の表情の奥で笑いを噛み殺しつつ、「秋ですー!」と、堂々ネタバレするスギサキさん。「いや、もう入ってきた瞬間に肌質でわかりました」とのこと。

うそーーーーーーーーーーーー?!

いわゆる、転生をした瞬間である。思わず反射的に、「うそでしょ、私の40年返して」と叫んでしまった私(しかも微妙にサバ読んでるし)。

しかしよくよく考えてみれば、以前の診断から今に至るまで、私はイエベ春に似合う色を正確に理解していたわけではない。どころか服選びの時には「なんとなく赤っぽい方がいいかな」とか「とりあえず黒以外で」というぼんやりした妙な先入観しか持っていなかった。自問自答ファッションに出会うまで、通販ばかりで試着もしてこなかったから、自分に似合う色を真剣に吟味したことなど一度もなかった。

それがいかに馬鹿らしいことか、ようやく気がついたのがこの時。

その後自問自答を始め、流れるようにY'sに出会って衝撃を受け、上下を買い揃えて制服にした結果、黒い服を着る機会が圧倒的に増えた。人からも褒められるし、自分でも似合うと思ってきた。この日もオールブラックコーデでお邪魔していた。

でも、穿いてきた黒のボトムスと先ほど一旦脱いだ魔法のオレンジパンツを鏡の前で何度も差し替えているうちに、オレンジのパンツの時は髪にツヤが出て顔色が良くなって見えるのがわかった。もとこさんからは「そのパンツ、ぽたまるさんが穿くとレザーに見える。ツヤが出てものすごく高そうな感じ」と言われて驚愕。

この1年、試着の旅をする中で、私は自分の感性で「似合う」と思った服を選んできたつもりだった。集まった服は私の心にも沿うものだから、どれも本当に気に入っている。だけど、今日着たような色の服を自ら手に取って試着してみたことは、一度もなかった。それってつまり、本当の本当に私に「似合う色」は、私の目には最初から入っていなかった、ってこと?

これは、なかなかの衝撃だった。

色との付き合い方を考える

その翌日、つらつらと試着体験を思い返すうち、ふと思い当たった。

もしかしてカラー診断って、美術館の音声ガイドみたいなものなんじゃないか。

私は随分長い間、美術館に行くと「展示は私の感性で見るから!」と音声ガイドには目もくれずにスタスタ入場するのが常だった。それがいつだったか、何かの拍子にガイドに手を出してみたら、これがまぁ、面白かった。時代背景に構図や技術の解説、画家本人や周辺人物、あるいはモデルにまつわる小噺なんかを耳にすると、絵がそれまでとは全く違う見え方に変わる。それで、思った。

知らないことは、そもそも目に入らないのだ。

もちろん、ガイドがなくたって展示を楽しむことはできる。だけど私の場合、ガイドに見方を限定されるのが嫌だと言いながら、そもそも自分の見方だって十分偏っていたのかもしれない。

「自分の感性」は確かに大事なのだけど、いくら感性と言ったって、最初から視野に入っていないことは味わいようがない。そして知識の裏付けがない状態で受けた「印象」は、そのままだとそれ以上深めるのが難しいし、めっぽう忘れやすい。

それに音声ガイドを借りたからって、別に全部聞かなくちゃいけないわけでもないし、説明された部分しか見ちゃいけないわけでもない。ガイドはあくまでガイドにしか過ぎないんだから、説明されたことが「唯一の正解」というわけでもない。

以前カラー診断を受けた時の私は、まさに「唯一の正解」を求めていた。

膨大な服の海の中で途方に暮れて、もう疲れちゃったからどこを泳げばいいのか誰か教えて!と思っていた。当時出会ったのは、幸か不幸か単純に「正解」を教えるタイプではなく、「解説」に重きを置くサロンだった。なのに私は「正解」を求めるあまり説明をよく聞かず、おかしな方向にふらふらと泳ぎ出した。そのことに気づいて引き返してきたものの、自力で泳げるのはまだまだ浅瀬だけだった、と言ったところか。

ならばここらで、一度泳ぎ方から見直してみるのも悪くないんじゃないだろうか。

自分に一番似合うのはどんな色か。それを纏った自分はどんな風に見えて、そんな自分のことを一体どう感じるのか。魅力的に見える自分が好きだからその色も好きだ、と単純に思えるのか、あるいはそれとは全く違う系統の色に心惹かれるのか。

これらがわかっていたら、逆に何色だって選べる気がする。仮に心から好きな色が全く似合っていないとしても、わかった上で堂々と着ることだってできるかもしれない。わかってやっているかそうじゃないか、は大きな違いだ。

「似合う」という感覚をもっとつかみたいし、「魅力」って一体何なのか、もっともっと言語化できるようになってみたい。視野を狭めるためじゃなくて、広げるためにこそ、色の知識を持ちたいと強く思う。

なんだか私、ずいぶん狭い世界で生きていたのかもしれないな。こう思うのは、自問自答を始めてから一体何度目のことだろう。

スギサキさんのところで注文したお洋服のお話は、また、改めて。



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