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研究者の戦闘力H-indexをあげる裏技、オーサーシップのグレーゾーンについて語る!

こんにちは、現役ポスドクをしております毒太郎と申します。このnoteはあくまで毒太郎の体験を元に、偏見に基づいた感想を語っていく場です。ですのでほとんど統計値などは出てきませんので悪しからず。
 
前回では緊急特番として、医者留学生に対して物申すnoteを記事としました。普段の記事よりかなり毒強めなので有料にしました。興味のある方は是非ご覧ください。 




著者(オーサー)にも色々ある?

前々回は、論文の審査プロセスに関して語りました。今回は論文の構成のAuthor(オーサー)の部分に絞って紹介しつつh-indexを上げる裏技をシェアしたいと思います。

H-indexとはそもそもなんぞや?という方は下の記事もご覧ください。カジュアルに研究者の戦闘力、生態がわかると思います。


では早速知り合いでもなんでもない山中伸弥先生に出張ってもらいましょう。彼のノーベル賞を受賞するに至った根拠論文の一つである<Induction of Pluripotent Stem Cells from Adult Human Fibroblasts by Defined Factors>をコピペしてググってください。
すると”National Institutes of Health”のホームページが候補に出てきます。お金はかからないので、ここをクリックしてください。

上の作業がめんどくさい方はこちらをどうぞ

携帯からアクセスした方は、灰色の枠の"Show details"をクリックすると、著者が見れます。

ここでタイトルの下に出てくる名前の項目に今回は着目していきます。この人たちがこの論文を発表した人たちです。ここで出ている個人名に触れるつもりはありません。ここに出てくる人たちは著者(Author:オーサー)と呼び、この論文の元になる研究の着想から、論文を投稿するまでに関わった方々です。
 
ここでは、仮にオーサーがA、C、D、E、F、G、Hと7名いると仮定しましょう。この7人はただ並んでいるわけではなくて、この並びには深い意味があります。それぞれの役割に関して説明していきたいと思います。
 



A.若手研究者にとって一番大事、ファーストオーサー

Aは著者の最初に名前が載っており、この人を筆頭著者もしくはファーストオーサー (First Author)と呼びます。ファーストオーサーは、論文の作成全体に関わっており、一般的には若手研究者であることが多いです。研究の着想こそは教授によることもあるものの、そこから実際に実験を行い、結果を得、論文を書いています。研究者にとって、「俺Natureのファースト持っているんだぜ」は人生で一度は言ってみたいものです。
意味がわかりませんか?訳すると「Nature誌に自分が筆頭著者として名前を連ねている論文が載っている」ことを指します。ちょっと業界用語っぽい略し方ですね。
 

H.論文の責任者、ラストオーサー

次に説明したいのはBではなくHです。
最後に名前がある人Hは、ラストオーサー(Last Author)、もしくはコレスポンディングオーサー (Corresponding Author 通称コレスポ)と呼びます。最後の名前が載っている場合、この論文の最高責任者で、通常Aのボスであることが多いです。実験こそはしないものの、研究の方向性を決めている大事な1人です。
 

B-G.論文作成にとって重要だけどその他大勢?コオーサー

B-Gは共著者、コオーサー(Co-author)と言って、その他の論文作成において貢献した人たちです。悪い言い方をすればその他大勢です。この人たちは、この論文を仕上げるのに、実験の一部を行っていたり、研究に必要な資材を渡したり、共同研究している人たちが載ります。基本的にはこの論文の完成に必要不可欠な人々が載っています。があまり自分の業績として胸を張って言えなくない気もします。
 

最近増えてるイコールファースト

ちなみに論文中で出てくる結果を、複数人で同じ程度出した場合、誰がファーストオーサーを獲得できるでしょうか?
正解は両方ともです。この場合A*, B*、C、D、E、F、G、Hとなって、<*: equally contributed>の但し書きがつきます。 すなわち二人とも同じ程度、論文に貢献したということになりイコールコントリビューテッドオーサー(イコールファーストともいう(和製英語))と言います。近年は論文に必要なデータが激増しているので、2-3人をイコールファーストとした論文が多くなってきています。正式にはA*とB*の二人は全く同じ貢献度となります。しかし実際にはA*の方が、貢献度が高い場合が多いと感じます。評価する人によってはB*には価値がないという考えの人もいます。A*自身は自分一人の論文だと心の中で思っていますが、B*はAとBの二人の合作だと主張するのが世の常です。

H-indexの問題点

さて、オーサーの説明したのは、研究者の戦闘力を測るH-indexの問題点を語りたかったからです。

H-indexはn回引用された論文をn本持っていると説明しました(以前の記事を参照)。論文数の「n本」には自分の名前がA-Hのどこに載っていてもカウントされるので、先ほどの例で言うB-Gも、自身の論文としてカウントされます。

先ほど言った通り、論文作成におけるAの貢献度は非常に高く、またHは研究室を主催する教授なので、2人の貢献度はB-Gに比べ高いです。ただしh-index上は、A-Hは全員同義なのです。すなわちAが、血が滲む思いで被引用数の高い論文を出せば、h-index上ではB-Gまで全員がその恩恵を受けることができます。

もちろん研究上大事な資材(実験用マウスや、病気の患者サンプル)を提供した共著者の存在は論文を採用される上で、重要な存在です。また研究分野上B-F になりがちな方々もいます。例えば病理の専門家は、さまざまなプロジェクトの病理結果の部分をひたすら行うのでB-Fに載ることが多いですが、質の高い論文作成にとって大事な職業です。

なのでB-Fを貶めしたいわけではありません。現在の生命科学研究界隈は、それぞれの研究者の専門が細分化されすぎているので、研究者同士の活発な共同研究はあるべきですし、今後B-Gの価値も上がっていくと思います。ただし現状ではAに比べると、B-Gはその他大勢となると考えます。 その原因のひとつを下に述べたいと思います。


研究室のグレーなルールとオーサーシップ

ここで筆者が問題だと思うのは、研究室から出る全ての論文に研究室メンバー全員の名前を載せる研究室もあることです。このルールの研究室にいる人は、所属するだけで自身の論文数が増えていき、自動的にh-indexも上がっていきます。確かに普段からお互いの研究に関して議論をおこなっているので、論文作成に貢献しているとも言えます。同僚の論文に名前が載らないなら、いいアイデアを出さないで自分でやってしまおうと思う人もいるかもしれません。

筆者がいた研究室では、実験的に貢献した人(論文に載るデータを出した人)しか論文に名前が載りませんでしたので、初めて上の話を聞いたときは素直に「ずるい」と思いました。若手研究者は出せる論文数も限られます。ですので、若手研究者のh-indexはこのルールの有無で簡単に変動してしまうので、大きな問題点だと思います。しかもこのルールはB-Gをその他大勢にしてしまう原因のひとつにもなり得ます。

 またほとんど論文に関係ない人が論文のオーサー欄に名前を残すことがあります。このことをギフトオーサー (gift authorship)と言います。昔だと教授の◯人がギフテットオーサーとして論文に名前を連ねていたとの噂もありますが、教授のお気に入りの学生、ポスドクが少し論文作成に絡んだだけで名前が載ることがあります。筆者はこれに近い経験があり、教授と揉めたことがあります。

また前述の通りA*,B*(イコールファースト)とA,BではBにとっては天と地との差があるので、ここもトラブルの元になります。

オーサーシップは、基本的に教授が決めますので、揉めても変更されることはほとんどありません。教授とのその後の関係性も大事なので揉めるのは百害あって一理なしです。

ではなぜこんなに研究者はオーサーにこだわるのでしょうか?それは自分の出世と、研究費、奨学金獲得に大きな影響を与えるからに他なりません。大学に関わる研究者は、国の機関に自身の研究計画を申請して、それを審査員が評価し、採用されれば研究費や、奨学金を得、研究活動をすることができます。申請する研究計画が、科学的に価値が高いことはもちろん大事ですが、今までどんな論文を出してきたかという業績も審査に大きな影響を与えます。

いくら面白い研究計画でも、全く論文がなかったらなかなか採用されないでしょう。申請書はなんでも書けるので、論文を出した実績がないと、その人の計画実現性がないと考えられるからです。なので、特に論文数が少ない若手研究者にとって、自身の名前が載っている論文数を増やすのは必須で、特に筆頭著者は先に述べたように研究者にとって極めて重要です。

Nature誌に筆頭著者の論文を持っていれば、将来的に教授になることはほぼ確定で、研究費なども数年は取り放題かと思います。ですが現状Nature誌に共著者として名前が載っていても、「いい研究室に在籍していた」という評価を受けるだけの可能性が高いです。
各雑誌に<著者にしていい基準>が設けられておりますが、最終的には教授の胸先三寸なので、特に意味はないと思います。
 

後書き

本記事ではH-indexは研究者の戦闘力と言いましたが、本人の実力以外にも影響するパラメーターがあることを説明しました。今回もそんなに闇はなかったですね(すっとぼけ)。繰り返しになりますが、この研究室によるルールの違いは、クソなので是正してほしいと感じます。
さて次回は、論文の構成を説明しつつ、論文の被引用数を上げる裏技を披露したいと思います。これで君のh-indexも鰻登りだ!!

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